映画 ローマ法王になる日まで

神々しいですよね、あらせられるお姿、ローマ法王、すべて超越した天上のひと、

の印象ですけれど、混乱きわまる南米で、苦悩に追われる青年であったなんて。

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原題「フランシスコと呼んで」の、現ローマ教皇フランシスコが、神学を志す

ところから、映画は語ってくれるのですが、なんとなく不穏な気配は感じるものの、

これほどの暴力や殺戮が行われようとは、だって陽気で楽しそうに和気あいあいの

雰囲気は、まさにラテンアメリカ、音楽とサッカーで、熱くなったりはしても。

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けれど、あれよあれよの間に、悪夢のような過酷な状況に、アルゼンチン、

軍事政権すさまじかったのですね、神が後ろ盾の教会でさえ、その圧力の前に、

なす術のない受難を余儀なくされて、生けるもの、誰をも平等に救いたくても、

それが危険と隣り合わせ、信仰をつらぬこうとすれば、奪われる思考や生命。

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神父であっても、サッカー好きの純朴な一青年、親しい友人、同僚を気遣い、

彼らが苦しみ喘ぎ、あるいはなぜか、いなくなる、その恐怖と絶望に身を裂かれ、

なのに、何もできない無力感は、想像を絶する悲しみだったのでは。

守りたい人を、守れない、なにが正しいのか、わからないまま、信仰だけを。

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どうにか生き延びて留学した先で、ひとりの信者として祈る姿は、無垢で、

よわよわしかったけれど、すがる気持ちで手に取った、絵の中の聖母の仕草に、

かすかな希望を見いだすことができたとき、信仰心がもたらす強い力を、

きっと確信できたような、この世のわけのわからない惨禍も、ほどけるときが。

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帰国してからの、つましく貧しいひとびとと手をたずさえての、暮らしぶりは、

迷いなく、毅然とみえて、難しい説教より、聖母マリアに寄り添うことで、

困難に立ち向かうよう導く姿は、やさしくて、堂々たる風格。

軍政はおわっても、富める者と貧しい者の対立で。街は更なる混乱だけれど。

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今度は利権政治との闘いでの、交渉の場で、あなたにだって上司がいるでしょ、

と責められての答えは、揺るぎない自信で裏打ちされ、やむない激しい抗争で、

彼がとった行動は、信仰心への強い信頼が感じられ、誰もが何かを信じて、

慕って、愛されたくて、その前では、兜を脱いで、祈りに身をささげる真実が。

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法王とか、バチカンとか、厳粛で荘厳な世界というイメージだったのだけれど、

現実には、貧しかったり汚れてたりの社会とも、密接であったりするのですね、

救いとはなにか、平安とはなにか、と絶えず探ってきた物語が、集結する、

それが、現世での、神とつながる場所であったりするのかも、と思ったり。

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音楽、よいですね、ピアソラを彷彿とさせる、アルゼンチンの空気感が。


シネプラザサントムーンにて9月


ローマ法王になる日まで 公式サイト


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# by habits-beignets | 2017-09-20 00:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 人生フルーツ

想像を絶していました、期待していたものの、今時の、自然とともに暮らす、

シニアの豊かなスローライフ、かと思っていたら、そんなぬるいものではなくて。

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90歳と87歳の夫婦、庭はたくさんの果樹や野菜畑でいっぱいで、静かに、

ゆっくりとだけれど、一日中、大忙し、二人きりの暮らしでも、ときどき、

大声で呼ばないと、行方不明、互いの呼び名さえ、歳月こえて愛らしくて、

食卓の、夫の食事と、妻の食事を見比べれば、自然な思いやりの形がみえて。


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けれど、このほのぼのと充実して流れる時間の影に、裏打ちされた彼らの覚悟、

夫は、戦後の焼け野原で、人々が幸福になれる住まい、夢の公団住宅の造成に、

情熱を傾けた建築家だったけれど、その思惑は、高度経済成長の波にのまれて、

どうやら挫折、でも強い反発は見せないで、諦めない気持ちでか、土地を買い。

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えっ、て、すこし意外なお宅の場所でした、すっかりもっと、山奥のお話かと、

その土地を選んだ誠実さ、自分たちの土地だからこそ、自分たちの思いのまま、

自分たちの流儀を貫いて、人知れず静かに闘う、ってこういうことなのかも、

誰か何かを攻撃することに興味なし、信念があるなら、ひそかに自分たちだけで。


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雑木林に囲まれ、野菜をそだて、それらを慈しむよう、あちこち小さな木札、

名前やコメント、まるで、みんな寄り添って、生きてるよう、家と庭すべてが、

夫婦とともに、陽をうけて、風にそよいで、季節のうつろいを、それぞれ、

肌で感じて、自らの役回りをまっとうして、偉大な建築家たちの名言そのまま。


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奥さん英子さんの、家庭というものに対する姿勢と手仕事、旦那さん修一さんの

時間を惜しまずに、ひとの幸福を掘り起こす作業、イラストとか、工作とか、

ともかく可愛くて、あちこち飾られてる、趣味のヨットの小物やら、お出かけの

愛車の色デザインも、キュート、二人の来し方のエピソードも、美しく頑なで。


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家族のイベントでは、旗があがる、これは、津端家みんなで、がんばる合図、

ちらちらと、ときおり見られる、修一さんのたどってきた道、厚木で見た

マッカーサー、ともに働いた台湾からの若者、穏やかでにこやかな目に涙も、

そして、ある日、色あざやか満艦飾の旗が青空に、きっと大切なイベントが。


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本当に心からやりたい仕事、というのを、ずっと諦めてなかったんですね、

修一さん、英子さんとふたり、宝石箱のようなお家で、細かな仕事から

力仕事まで、時間をつないでいる間も、じつは何かをいつも準備していた、

はがきを書きながら、ミニチュアを作りながら、障子紙をはがしながら。


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なにげない日常の背後に、情熱と信念がたえず存在している、そんな、

力強い夫婦の姿に、暮らしのふところの深さというものが感じられて、

すばらしいドキュメンタリー、もとはテレビで放映されたようですが、

パンフレット買い求めました、スタッフの熱意や裏話、興味深く。


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映画そのものも、いちいちの説明コメントとか、修一さん方式?可愛い。

おびただしい数の、口が開いた段ボール箱は、英子さんのあふれる愛。


シネプラザサントムーンにて6月


人生フルーツ 公式サイト


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# by habits-beignets | 2017-06-29 00:27 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 わたしは、ダニエル・ブレイク

病気で失業を余儀なくされた、おじいさんが、貧しいシングルマザーと心通わせ、

なんて、ほのぼの心温まる物語かと思いきや、なかなか厳しく、鋭く、痛いです。

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イギリスのニューカッスル、実直な大工だったダニエルが、どうやら病に倒れ、

国の援助を受けるための手続きに四苦八苦、これが、見ているこちらもイライラ、

まじめに自分の窮状を伝えようとしているのに、返ってくる答えはズレまくり、

怒りをおさえて、従おうにも、わけのわからない無意味な煩雑さに、翻弄の連続。


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困窮したひとりひとりの訴えが届かないで、絶望の空気が充満した窓口で、

ふたりの子をつれた、若い母親の嘆く声が響き、たまらず援護したダニエルは、

自分の境遇だってままならないのに、彼女に同情、真心こめて出来る限りの親切、

お金はなくても、寄り添って、励まして、役立つ情報や持ってる技術で、助けて。

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けれど、いくら隣人の、やさしい気持ちやいたわる言葉があったところで、

生きてくのに、食べものや、いろんなものはどうしても必要、やはりお金が必要、

自分を理解してくれる人も、救いにはなっても、それだけでは、悲しいことに、

暮らしは成り立たない、だから、そのための国の制度のはずなのだけれど、なぜ。


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きちんと真面目に、国のための義務を果たしてきたのに、裏切られたような

やりきれなさは、どこにぶつければいいんでしょうね、援助を請うというのは、

それほどまで貶められるべきことなのでしょうか、媚びへつらえ、みたいに、

高圧的に課される手続きは、まるで、諦めろとでも、言いたげに思えて。


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自分が最後まで守りたいと願っているもの、どんな境遇になっても、大切に、

持ち続けていたものを奪われなければ、生活できない状況になってしまったら、

生きてゆく意味って、価値って、希望って、信じられるものなんでしょうか、

誰もがともに、幸福を求めることを、認めあう社会って、あり得ないの?


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いえ、みな親切なんです、隣人も知り合ったばかりの人も、見知らぬ人だって、

困ってたり倒れそうな人には、助けてくれる人がたくさん、なのに、

組織にくみこまれると、名札をつけると、とつじょ不人情に、話さえ通じず、

得体の知れない何かにたどり着けない、カフカの不条理劇さながらの、物語に。


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国民の誰もが健やかに生活できるよう、よかれ、と定められたはずのしくみが、

本来の目的から目をそらしてしまうことの、恐ろしさに、打ちのめされそうな、

善良なひとたちに、ダニエルのまっすぐな言葉が、勇気を与えてくれますように。


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シネプラザサントムーンにて6月


わたしは、ダニエル・ブレイク 公式サイト


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# by habits-beignets | 2017-06-06 22:56 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ラ・ラ・ランド

きらきら色あざやか、スクリーンいっぱい、歌ってはずんで踊ってみたり、

それぞれ夢にむかって、一直線のふたりが、出会って恋におちての物語。


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少しありきたりで、身のほど知らずの夢ではあるのですけれど、若いですものね、

オーディションに落ちまくりの、女優志望の女の子と、自分の好きな曲だけを、

演奏できる理想の店を持ちたい、ジャズピアニストの青年が、少しつっかかりながら、

つべこべ言いあいながらも、人生のままならなさ、せつない気持ちのシンパシー。


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頑張ってるつもりなんだけれど、いつもうまくいかない、やはり無理かもしれない、

どうやら周りからも、きっと冷ややかな目で見られている、もう諦めるべき?

そんなとき、理解してくれる、肯定してくれる、励ましてくれる、誰かって、

かけがえのない、とても大切な存在、あした生きてく、力をくれるだけでも。


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星いっぱいの夜空を、手をとりあって、渡ってゆく幸福が、ほんの一瞬でも、

肩をよせあい、愛おしさを奏でる調べが、永遠でなくても、今そばにいる、

ぬくもりを感じられる、支えがうれしいのに、それだけでは立ち行かない現実、

その場しのぎでも、日々の糧のために、なにかを犠牲にすることがやはり。


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いわゆるミュージカルの能天気さにも、見放されて、夢と現実の境界で、

自分を信じて勇敢にチャレンジしたり、すぐに希望を見失って絶望したり、

このひとと一緒なら、そんな気持ちで、夢が輝きを、増してもきたのに、

ふたりでいても、一向に遠のきそうな、はるかな夢が、もはや苦しくて。


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演じるエマ・ストーンと、ライアン・ゴズリングが、みずみずしく痛々しく

出会った春の、うきうき予感に高鳴る踊りっぷりは、はじけて、

夏は、息もぴったりの疾走ステップ、そして、秋はとまどいの揺らぎが、

冬のクリスマス、美しいピアノの音色に、時間がとまり、あるいは戻り。


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すべて思いどおりにならなくても、必死でなにかを追いかけていた日々の、

触れ合い、交わした言葉、いたわりあいは、ずっと密やかに胸の奥でくすぶって。


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冒頭のハイウェイ渋滞の華やかさから、すこし心痛い大人の世界に。

いろんな名画のいいとこどり、ミックスみたいな、楽しさみごとさ、

なんとなく、ローマの休日ぽい、凛々しくやさしい印象ものこって。


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音楽、よいですね、なんか元気になれそうな励まされるような、リズムメロディー。

ラストは圧巻、ああ人生ってなんかそんな感じの一瞬の永遠のつらなりのような。


シネプラザサントムーンにて3月


ラ・ラ・ランド 公式サイト


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# by habits-beignets | 2017-03-14 00:13 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 天使にショパンの歌声を

雪景色にたたずむ寄宿学校は、つましくうるわしく、制服姿の少女たちの、

規律正しい暮らしぶりは、清々しくも、ささやかな屈託の気配が、微笑ましく。


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ここちよい響きの、フランス語で描かれる物語の舞台は、カナダのケベック州、

簡素な間仕切りだけの、それぞれの部屋で就寝する女学生たちと、

彼女たちを導くシスターたちは、授業も食事も余暇の時間も、ともに集い、

音楽によりそいながら、穏やかな日々、ところへ、ちいさな波とおおきな波が。

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校長のオーギュスティーヌの姪が、いかにも問題児の風貌でさっそう登場、

なにやら事情があるふうに母親から押し付けられて、入校してくるのですが、

プチ不良の雰囲気まといながらも、つい聞き惚れてしまうピアノの腕前、

音楽って、奏でるのも聞き入るのも、きっとみな、心の惑いを慰めたいから。

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一日中、学校の規律にしばられて、自由のない生活を、なぜ年頃の少女たちが、

と疑問に感じなくはないけれど、彼女たちのコーラスのうつくしさ、それぞれ、

一心に、おおきくまるく開いた口、かしげる首を、見ていると、かすかな憂い、

人知れぬ災いから、救われたい願いが、そこに垣間見えるようにも。

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けれど、たとえ切実な願いがあったとしても、理解されない現実もせまって、

組織による運営には、採算の問題が、音楽って芸術ってつねにそこでは弱者、

どんな実績や理想も、利潤追求のまえでは無力、うつくしい調べで訴えても、

識者たちの応援をとりつけても、価値観のちがいを乗りこえるのは。

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表面的に物語をなぞると、敬虔な音楽学校の教師と学生たちが、

時代の変化に立ちはだかれて、か弱いながらも、精いっぱい力を合わせて、

闘う美談のようだけれど、そうせずにはいられない、ひとりひとりの人生、

その背景、静かな暮らしに安寧を求めてきた心情が、控えめに漂って。

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気配を感じさせながらも、具体的には語られない、彼女たちの来し方。

うつくしい楽曲を、丁寧に、祈るように大切に、歌い、奏でる暮らしに、

どうか、幸運が授かりますように、微笑みが、いつでも絶えませんように。

いくつもの名曲を堪能しているうちに、こちらもいつしか信心のような。

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ところで、白銀のなかの少女たちの私服姿が、とってもキュート。

きれいな色の帽子やコートが、かわいくて、じっと見つめてしまう。

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シネプラザサントムーンにて2月


天使にショパンの歌声を 公式サイト


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# by habits-beignets | 2017-02-26 22:55 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー