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映画 ノルウェイの森

わたくし、ご他聞に漏れず、村上春樹サマの「文体注射」に、
へろへろにやられちゃって、かつて中毒になったことが。
なのでその、おっかなびっくり、観たわけなんですけれど。

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冒頭の、キズキくんを交えての高校生時代を眺めているうち、
もうそれだけで、少しせつなくなってきました。
とても楽しそうでもあるのだけれど、どこか悲しげで痛々しくて。
なんて、ストーリーをすでに知っているからかもしれないのだけれど。

細かな設定など、小説とは当然ちがっているのだけれど、
それでもかなり、とくに台詞など、可能な限り忠実になぞられていました。
そういえば、主人公は「変わったしゃべり方」をしている
ということだったけれど、たしかに松山ケンイチくんのしゃべり方は、
ずいぶん変わった感じで。

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全共闘時代の大学の雰囲気が、当時をよく知らないので、
そのままなのかは、よくわかりませんでしたが、
ファッションや小物が、目に鮮やかで楽しめました。
学食の光景、アパートのキッチンの感じ、キチキチのミニスカートなど。
素朴で田舎っぽいかんじの直子と、都会の進んだ女の子のかんじの緑と。

でも、ほんとうは、と、やっぱり思ってしまうのだけれど、
緑さんは、いわゆる「生」の象徴として、主人公をがんがん振り回す
エネルギッシュで太陽みたいな女の子のはずだったのに、すこし物足りず。
下品な言葉を、可愛らしく言い放って、ひそやかな自分の苦悩や悲しみを、
あかるく笑い飛ばそうとする、けなげな女の子のはずだったのだけれど。

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直子さんも、たしかに繊細で、傷つきやすい、あやうい感じは見られたけれど、
もっと美しく、消え入りそうな、はかなげな姿を、見てみたかったような。
どこかに、ふとかいま見られてしまう、奇妙な力強さが、
ちょっと気になったりして。

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映画で、いちばん魅力的な女性は、ハツミさんだったようにも思えます。
彼女には、唯一リアリティが感じられたというか、普通のけなげさ、苦悩が、
とても、いじらしく、せつなかった。
それから、じつをいえば、レイコさんの大人の女っぷりを、
かなり期待してもいたのだけれど、終盤のやりとりは、なんだかありきたりで、
ちょっとがっかり。

でも、小説の世界を、とてもたいせつにしていることは、つたわってきました。
たとえば、それは、しばしば映しだされる、
森や草原や海などの、人間の世界を超越したような、
厳しさや崇高さが感じられる、自然の風景だったり。
ときおり、耳鳴りのように響いてくる、痛々しそうでもある音楽だったり。
ジョニー・グリーンウッドは、やはり、やってくれましたね、というかんじ。

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自分の思い描いていた印象とは、かなり違うと思いながらも、
あるいは、こういう作品だったのかもしれないなあ、などと、
鑑賞後に、原作を読みかえしたりするのも、
またひとつの読書の楽しみになるのかもしれません。

シネプラザサントムーンにて、1月

ノルウェイの森 公式サイト

by habits-beignets | 2011-01-15 17:22 | シネマのこと | Comments(0)

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