映画 海炭市叙景
2011年 02月 27日
モノクロの世界に取り残されたような、雪にけぶる海と炭坑の街。
そこに浮遊する、いたいけな魂たちの、せつない揺らぎ。
兄が造船所を解雇されてしまった兄妹の、つましい年の瀬と年明け。
進水式のときの、彼らの無邪気な笑顔のまぶしさが、印象的なだけに、
初日の出を見守るときの、いたましげな様子が、胸をうちます。
ささやかな喜びを、たいせつにしようと、猫とのふたりぐらしを、
頑強にまもり通そうとする老女の、飄々と見えるそのなかにも、
ものおもわしげな、皺にいろどられた表情。
ちいさなプラネタリウムを操作する男は、夕暮れと夜明けのあいだの、
人工的な星空の美しさを、自分の手でくり返して映しながら、
かつて愛するひとと眺めた、ほんものの星空を、あきらめきれないで。
トラックにプロパンガスを載せて、日々うごきまわるだけでは
飽き足らないのか、若社長は、新しいことを始めようとも、うまく
いかず、どころか、やすらげる家庭も持てないで、いらだってしまい。
仕事で故郷にやってきたのに、家をたずねることはできないで、
誘われるまま、なりゆきで、場末のスナックで、無為に夜を
すごしてしまう、うだつのあがらなさそうなビジネスマン。
それぞれが、ゆるやかに繋がる、5つの物語に登場するひとたちは、
その表情が、笑顔も、沈痛な面持ちも、怒りも、みな真剣で、
静かに圧倒されて、ひきこまれてしまいます。
こんなに、胸にまっすぐ訴えてくる映画は、とてもひさしぶりだったので、
パンフレットを買い求めたのですが、驚いたのは、プロの俳優ではない
一般の方々が、かなり重要な役を演じていて、かつ、けっしてプロには
ひけをとらないたしかな存在感を、見せてくれていること。
佐藤泰志さんという、不遇の小説家の作品が、原作ということなのですが、
その小説を愛し、映画を愛しているひとたちの情熱が、根気よく丁寧に、
つくりあげた映画なのだということが、パンフレットの随所に描かれていて、
だから、魂にうったえてくるものができたのだなあ、と、思わず納得です。
商業的な大作だけではなく、こういった作品も、ぜひたくさんのひとたちに、
見ていただけたらなあ、と、応援したくなりました。
シネプラザサントムーンにて、2月
海炭市叙景 公式サイト
そこに浮遊する、いたいけな魂たちの、せつない揺らぎ。
兄が造船所を解雇されてしまった兄妹の、つましい年の瀬と年明け。
進水式のときの、彼らの無邪気な笑顔のまぶしさが、印象的なだけに、
初日の出を見守るときの、いたましげな様子が、胸をうちます。
ささやかな喜びを、たいせつにしようと、猫とのふたりぐらしを、
頑強にまもり通そうとする老女の、飄々と見えるそのなかにも、
ものおもわしげな、皺にいろどられた表情。
ちいさなプラネタリウムを操作する男は、夕暮れと夜明けのあいだの、
人工的な星空の美しさを、自分の手でくり返して映しながら、
かつて愛するひとと眺めた、ほんものの星空を、あきらめきれないで。
トラックにプロパンガスを載せて、日々うごきまわるだけでは
飽き足らないのか、若社長は、新しいことを始めようとも、うまく
いかず、どころか、やすらげる家庭も持てないで、いらだってしまい。
仕事で故郷にやってきたのに、家をたずねることはできないで、
誘われるまま、なりゆきで、場末のスナックで、無為に夜を
すごしてしまう、うだつのあがらなさそうなビジネスマン。
それぞれが、ゆるやかに繋がる、5つの物語に登場するひとたちは、
その表情が、笑顔も、沈痛な面持ちも、怒りも、みな真剣で、
静かに圧倒されて、ひきこまれてしまいます。
こんなに、胸にまっすぐ訴えてくる映画は、とてもひさしぶりだったので、
パンフレットを買い求めたのですが、驚いたのは、プロの俳優ではない
一般の方々が、かなり重要な役を演じていて、かつ、けっしてプロには
ひけをとらないたしかな存在感を、見せてくれていること。
佐藤泰志さんという、不遇の小説家の作品が、原作ということなのですが、
その小説を愛し、映画を愛しているひとたちの情熱が、根気よく丁寧に、
つくりあげた映画なのだということが、パンフレットの随所に描かれていて、
だから、魂にうったえてくるものができたのだなあ、と、思わず納得です。
商業的な大作だけではなく、こういった作品も、ぜひたくさんのひとたちに、
見ていただけたらなあ、と、応援したくなりました。
シネプラザサントムーンにて、2月
海炭市叙景 公式サイト
by habits-beignets | 2011-02-27 20:25 | シネマのこと | Comments(0)