カテゴリ:シネマのこと( 89 )

『マッピー』用ボーダー

映画 ローマ法王になる日まで

神々しいですよね、あらせられるお姿、ローマ法王、すべて超越した天上のひと、

の印象ですけれど、混乱きわまる南米で、苦悩に追われる青年であったなんて。

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原題「フランシスコと呼んで」の、現ローマ教皇フランシスコが、神学を志す

ところから、映画は語ってくれるのですが、なんとなく不穏な気配は感じるものの、

これほどの暴力や殺戮が行われようとは、だって陽気で楽しそうに和気あいあいの

雰囲気は、まさにラテンアメリカ、音楽とサッカーで、熱くなったりはしても。

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けれど、あれよあれよの間に、悪夢のような過酷な状況に、アルゼンチン、

軍事政権すさまじかったのですね、神が後ろ盾の教会でさえ、その圧力の前に、

なす術のない受難を余儀なくされて、生けるもの、誰をも平等に救いたくても、

それが危険と隣り合わせ、信仰をつらぬこうとすれば、奪われる思考や生命。

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神父であっても、サッカー好きの純朴な一青年、親しい友人、同僚を気遣い、

彼らが苦しみ喘ぎ、あるいはなぜか、いなくなる、その恐怖と絶望に身を裂かれ、

なのに、何もできない無力感は、想像を絶する悲しみだったのでは。

守りたい人を、守れない、なにが正しいのか、わからないまま、信仰だけを。

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どうにか生き延びて留学した先で、ひとりの信者として祈る姿は、無垢で、

よわよわしかったけれど、すがる気持ちで手に取った、絵の中の聖母の仕草に、

かすかな希望を見いだすことができたとき、信仰心がもたらす強い力を、

きっと確信できたような、この世のわけのわからない惨禍も、ほどけるときが。

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帰国してからの、つましく貧しいひとびとと手をたずさえての、暮らしぶりは、

迷いなく、毅然とみえて、難しい説教より、聖母マリアに寄り添うことで、

困難に立ち向かうよう導く姿は、やさしくて、堂々たる風格。

軍政はおわっても、富める者と貧しい者の対立で。街は更なる混乱だけれど。

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今度は利権政治との闘いでの、交渉の場で、あなたにだって上司がいるでしょ、

と責められての答えは、揺るぎない自信で裏打ちされ、やむない激しい抗争で、

彼がとった行動は、信仰心への強い信頼が感じられ、誰もが何かを信じて、

慕って、愛されたくて、その前では、兜を脱いで、祈りに身をささげる真実が。

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法王とか、バチカンとか、厳粛で荘厳な世界というイメージだったのだけれど、

現実には、貧しかったり汚れてたりの社会とも、密接であったりするのですね、

救いとはなにか、平安とはなにか、と絶えず探ってきた物語が、集結する、

それが、現世での、神とつながる場所であったりするのかも、と思ったり。

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音楽、よいですね、ピアソラを彷彿とさせる、アルゼンチンの空気感が。


シネプラザサントムーンにて9月


ローマ法王になる日まで 公式サイト


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by habits-beignets | 2017-09-20 00:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 人生フルーツ

想像を絶していました、期待していたものの、今時の、自然とともに暮らす、

シニアの豊かなスローライフ、かと思っていたら、そんなぬるいものではなくて。

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90歳と87歳の夫婦、庭はたくさんの果樹や野菜畑でいっぱいで、静かに、

ゆっくりとだけれど、一日中、大忙し、二人きりの暮らしでも、ときどき、

大声で呼ばないと、行方不明、互いの呼び名さえ、歳月こえて愛らしくて、

食卓の、夫の食事と、妻の食事を見比べれば、自然な思いやりの形がみえて。


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けれど、このほのぼのと充実して流れる時間の影に、裏打ちされた彼らの覚悟、

夫は、戦後の焼け野原で、人々が幸福になれる住まい、夢の公団住宅の造成に、

情熱を傾けた建築家だったけれど、その思惑は、高度経済成長の波にのまれて、

どうやら挫折、でも強い反発は見せないで、諦めない気持ちでか、土地を買い。

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えっ、て、すこし意外なお宅の場所でした、すっかりもっと、山奥のお話かと、

その土地を選んだ誠実さ、自分たちの土地だからこそ、自分たちの思いのまま、

自分たちの流儀を貫いて、人知れず静かに闘う、ってこういうことなのかも、

誰か何かを攻撃することに興味なし、信念があるなら、ひそかに自分たちだけで。


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雑木林に囲まれ、野菜をそだて、それらを慈しむよう、あちこち小さな木札、

名前やコメント、まるで、みんな寄り添って、生きてるよう、家と庭すべてが、

夫婦とともに、陽をうけて、風にそよいで、季節のうつろいを、それぞれ、

肌で感じて、自らの役回りをまっとうして、偉大な建築家たちの名言そのまま。


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奥さん英子さんの、家庭というものに対する姿勢と手仕事、旦那さん修一さんの

時間を惜しまずに、ひとの幸福を掘り起こす作業、イラストとか、工作とか、

ともかく可愛くて、あちこち飾られてる、趣味のヨットの小物やら、お出かけの

愛車の色デザインも、キュート、二人の来し方のエピソードも、美しく頑なで。


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家族のイベントでは、旗があがる、これは、津端家みんなで、がんばる合図、

ちらちらと、ときおり見られる、修一さんのたどってきた道、厚木で見た

マッカーサー、ともに働いた台湾からの若者、穏やかでにこやかな目に涙も、

そして、ある日、色あざやか満艦飾の旗が青空に、きっと大切なイベントが。


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本当に心からやりたい仕事、というのを、ずっと諦めてなかったんですね、

修一さん、英子さんとふたり、宝石箱のようなお家で、細かな仕事から

力仕事まで、時間をつないでいる間も、じつは何かをいつも準備していた、

はがきを書きながら、ミニチュアを作りながら、障子紙をはがしながら。


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なにげない日常の背後に、情熱と信念がたえず存在している、そんな、

力強い夫婦の姿に、暮らしのふところの深さというものが感じられて、

すばらしいドキュメンタリー、もとはテレビで放映されたようですが、

パンフレット買い求めました、スタッフの熱意や裏話、興味深く。


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映画そのものも、いちいちの説明コメントとか、修一さん方式?可愛い。

おびただしい数の、口が開いた段ボール箱は、英子さんのあふれる愛。


シネプラザサントムーンにて6月


人生フルーツ 公式サイト


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by habits-beignets | 2017-06-29 00:27 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 わたしは、ダニエル・ブレイク

病気で失業を余儀なくされた、おじいさんが、貧しいシングルマザーと心通わせ、

なんて、ほのぼの心温まる物語かと思いきや、なかなか厳しく、鋭く、痛いです。

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イギリスのニューカッスル、実直な大工だったダニエルが、どうやら病に倒れ、

国の援助を受けるための手続きに四苦八苦、これが、見ているこちらもイライラ、

まじめに自分の窮状を伝えようとしているのに、返ってくる答えはズレまくり、

怒りをおさえて、従おうにも、わけのわからない無意味な煩雑さに、翻弄の連続。


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困窮したひとりひとりの訴えが届かないで、絶望の空気が充満した窓口で、

ふたりの子をつれた、若い母親の嘆く声が響き、たまらず援護したダニエルは、

自分の境遇だってままならないのに、彼女に同情、真心こめて出来る限りの親切、

お金はなくても、寄り添って、励まして、役立つ情報や持ってる技術で、助けて。

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けれど、いくら隣人の、やさしい気持ちやいたわる言葉があったところで、

生きてくのに、食べものや、いろんなものはどうしても必要、やはりお金が必要、

自分を理解してくれる人も、救いにはなっても、それだけでは、悲しいことに、

暮らしは成り立たない、だから、そのための国の制度のはずなのだけれど、なぜ。


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きちんと真面目に、国のための義務を果たしてきたのに、裏切られたような

やりきれなさは、どこにぶつければいいんでしょうね、援助を請うというのは、

それほどまで貶められるべきことなのでしょうか、媚びへつらえ、みたいに、

高圧的に課される手続きは、まるで、諦めろとでも、言いたげに思えて。


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自分が最後まで守りたいと願っているもの、どんな境遇になっても、大切に、

持ち続けていたものを奪われなければ、生活できない状況になってしまったら、

生きてゆく意味って、価値って、希望って、信じられるものなんでしょうか、

誰もがともに、幸福を求めることを、認めあう社会って、あり得ないの?


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いえ、みな親切なんです、隣人も知り合ったばかりの人も、見知らぬ人だって、

困ってたり倒れそうな人には、助けてくれる人がたくさん、なのに、

組織にくみこまれると、名札をつけると、とつじょ不人情に、話さえ通じず、

得体の知れない何かにたどり着けない、カフカの不条理劇さながらの、物語に。


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国民の誰もが健やかに生活できるよう、よかれ、と定められたはずのしくみが、

本来の目的から目をそらしてしまうことの、恐ろしさに、打ちのめされそうな、

善良なひとたちに、ダニエルのまっすぐな言葉が、勇気を与えてくれますように。


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シネプラザサントムーンにて6月


わたしは、ダニエル・ブレイク 公式サイト


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by habits-beignets | 2017-06-06 22:56 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ラ・ラ・ランド

きらきら色あざやか、スクリーンいっぱい、歌ってはずんで踊ってみたり、

それぞれ夢にむかって、一直線のふたりが、出会って恋におちての物語。


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少しありきたりで、身のほど知らずの夢ではあるのですけれど、若いですものね、

オーディションに落ちまくりの、女優志望の女の子と、自分の好きな曲だけを、

演奏できる理想の店を持ちたい、ジャズピアニストの青年が、少しつっかかりながら、

つべこべ言いあいながらも、人生のままならなさ、せつない気持ちのシンパシー。


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頑張ってるつもりなんだけれど、いつもうまくいかない、やはり無理かもしれない、

どうやら周りからも、きっと冷ややかな目で見られている、もう諦めるべき?

そんなとき、理解してくれる、肯定してくれる、励ましてくれる、誰かって、

かけがえのない、とても大切な存在、あした生きてく、力をくれるだけでも。


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星いっぱいの夜空を、手をとりあって、渡ってゆく幸福が、ほんの一瞬でも、

肩をよせあい、愛おしさを奏でる調べが、永遠でなくても、今そばにいる、

ぬくもりを感じられる、支えがうれしいのに、それだけでは立ち行かない現実、

その場しのぎでも、日々の糧のために、なにかを犠牲にすることがやはり。


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いわゆるミュージカルの能天気さにも、見放されて、夢と現実の境界で、

自分を信じて勇敢にチャレンジしたり、すぐに希望を見失って絶望したり、

このひとと一緒なら、そんな気持ちで、夢が輝きを、増してもきたのに、

ふたりでいても、一向に遠のきそうな、はるかな夢が、もはや苦しくて。


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演じるエマ・ストーンと、ライアン・ゴズリングが、みずみずしく痛々しく

出会った春の、うきうき予感に高鳴る踊りっぷりは、はじけて、

夏は、息もぴったりの疾走ステップ、そして、秋はとまどいの揺らぎが、

冬のクリスマス、美しいピアノの音色に、時間がとまり、あるいは戻り。


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すべて思いどおりにならなくても、必死でなにかを追いかけていた日々の、

触れ合い、交わした言葉、いたわりあいは、ずっと密やかに胸の奥でくすぶって。


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冒頭のハイウェイ渋滞の華やかさから、すこし心痛い大人の世界に。

いろんな名画のいいとこどり、ミックスみたいな、楽しさみごとさ、

なんとなく、ローマの休日ぽい、凛々しくやさしい印象ものこって。


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音楽、よいですね、なんか元気になれそうな励まされるような、リズムメロディー。

ラストは圧巻、ああ人生ってなんかそんな感じの一瞬の永遠のつらなりのような。


シネプラザサントムーンにて3月


ラ・ラ・ランド 公式サイト


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by habits-beignets | 2017-03-14 00:13 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 天使にショパンの歌声を

雪景色にたたずむ寄宿学校は、つましくうるわしく、制服姿の少女たちの、

規律正しい暮らしぶりは、清々しくも、ささやかな屈託の気配が、微笑ましく。


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ここちよい響きの、フランス語で描かれる物語の舞台は、カナダのケベック州、

簡素な間仕切りだけの、それぞれの部屋で就寝する女学生たちと、

彼女たちを導くシスターたちは、授業も食事も余暇の時間も、ともに集い、

音楽によりそいながら、穏やかな日々、ところへ、ちいさな波とおおきな波が。

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校長のオーギュスティーヌの姪が、いかにも問題児の風貌でさっそう登場、

なにやら事情があるふうに母親から押し付けられて、入校してくるのですが、

プチ不良の雰囲気まといながらも、つい聞き惚れてしまうピアノの腕前、

音楽って、奏でるのも聞き入るのも、きっとみな、心の惑いを慰めたいから。

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一日中、学校の規律にしばられて、自由のない生活を、なぜ年頃の少女たちが、

と疑問に感じなくはないけれど、彼女たちのコーラスのうつくしさ、それぞれ、

一心に、おおきくまるく開いた口、かしげる首を、見ていると、かすかな憂い、

人知れぬ災いから、救われたい願いが、そこに垣間見えるようにも。

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けれど、たとえ切実な願いがあったとしても、理解されない現実もせまって、

組織による運営には、採算の問題が、音楽って芸術ってつねにそこでは弱者、

どんな実績や理想も、利潤追求のまえでは無力、うつくしい調べで訴えても、

識者たちの応援をとりつけても、価値観のちがいを乗りこえるのは。

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表面的に物語をなぞると、敬虔な音楽学校の教師と学生たちが、

時代の変化に立ちはだかれて、か弱いながらも、精いっぱい力を合わせて、

闘う美談のようだけれど、そうせずにはいられない、ひとりひとりの人生、

その背景、静かな暮らしに安寧を求めてきた心情が、控えめに漂って。

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気配を感じさせながらも、具体的には語られない、彼女たちの来し方。

うつくしい楽曲を、丁寧に、祈るように大切に、歌い、奏でる暮らしに、

どうか、幸運が授かりますように、微笑みが、いつでも絶えませんように。

いくつもの名曲を堪能しているうちに、こちらもいつしか信心のような。

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ところで、白銀のなかの少女たちの私服姿が、とってもキュート。

きれいな色の帽子やコートが、かわいくて、じっと見つめてしまう。

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シネプラザサントムーンにて2月


天使にショパンの歌声を 公式サイト


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by habits-beignets | 2017-02-26 22:55 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 92歳のパリジェンヌ

すでに、いくらかありふれた感さえある、テーマとなってしまいましたが、
実話がもとになっているんですね、フランス元首相の母親がじっさいに。

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92歳となってもハツラツ、家族みんなで誕生日を祝う会を開いてくれて、
これぞ、絵に描いたような幸福と映るのに、その席での衝撃の宣言が波紋を、
そりゃ当然でしょうね、これからもどうか元気に、と祝福する集まりに、
あえて水をさすかのような、どころか、悪意さえ汲みとれそうな、決定通告。

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本気とは思えない、うつ病なのでは、疑いたくなるのも、無理もなさそう、
端からみれば、多少の衰えはあるにしても、充分まだ元気、身ぎれいだし、
家政婦に助けてもらってはいるけれど、きちんと暮らしは成り立っていて、
生きるのが苦痛になっているとは、信じられない、むしろそれは我が儘では。

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それでも、揺らぐ気配のない老母の決意に、反発するより寄り添うことで、
彼女の真意、願いを理解しようと、戸惑い、ためらい、うなされる娘が、
幼い頃と変わらず、母を求めすがりたい気持ちを捨てられない自分と、
もはや、頼られるほどの力を保てなくなっている母との関係に、立ち向かい。

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老いの不安って、当人にしかわからない、繊細なところが、あるのかも、
認めたくはないけれど認めざるをえない、その悲しい進行は、恐ろしく、
誰かに打ち明けるのも、はばかられて、けれど、逃れられないと諦めたら、
いっそ潔く受け入れて、あえてクールに対処することでこそ、打ち勝てて。

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生きるって、自分の意志を実行できること、そんなふうに過ごしてきた母を、
ずっと身近に感じてきたことを思い起こせば、別れのつらさを耐えてでも、
彼女の希望を受け入れたい、彼女の姿勢を理解したい、絶えず逡巡しつつも、
悔いのない人生をたすけたい、いつか訪れるそのときなら、むしろ自由に。

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けれど、揺れるし苦しいですよね、娘も息子も孫も、それぞれの立場で、
愛情が深いのはおなじでも、向き合い方はちがって、どれが正しくて、
どれが間違っているとは、確かではないまま、誰もが、自分の気持ちが、
置いていかれるような、不安と苛立たしさに、我を失いそうになって。

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本来は、自然にまかせて人生をまっとうするべきなのでは、と思うけれど、
発展した医学をまえに、なにが自然なのかも曖昧になってしまったような、
ここまで差し迫った決断が必要になるなんて、せつない、せつない。
ところで、娘と息子では、母への感じ方ってこんなふうに違うのかもですね。

シネプラザサントムーンにて12月

92歳のパリジェンヌ 公式サイト
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by habits-beignets | 2016-12-18 22:31 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 惑う After the Rain

身近な場所が映画の舞台、という興味が先に立っての鑑賞でしたが、
お話が、いくらか綺麗すぎる気はしたものの、観た後しみじみの心地よさが。

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文学小説のような章立てで、つましく暮らす家族の歴史が、語られるのですが、
最初は、いくらかありふれた、多少のほころびはあるものの、互いに寄り添い、
日々の暮らしを大切にいとなむ、一家の日常が映し出される印象だったのが、
時空を飛びながら、父親、母親、長女、次女、それぞれの覚悟の物語が。

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親が子の一瞬一瞬をも慈しみ、その成長を、絶えず捉えようとまなざしを向け、
やがて大人になったわが子を手放すまでの、当たり前な印象の家族のあり方が、
ささやかな努力の積み重ねで、奇跡のように紡がれている事実が、かげりなく、
まっすぐに訴えられて、あらためて、家族って不思議な世界、拠り所の曖昧さ。

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思いのかけちがいがあっても、考えの不一致に苛立っても、突き放せないで、
あきらめきれずに、わかりあいたくて受け入れるけなげさが、家族なのかも、
傷ついたり絶望しそうになっても、安心して帰れる場所が、誰しも必要で、
それはだから、生涯かけても手に入れたいと、どこか本能で感じているのかも。

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昭和の初期から55年まで、旧い料亭や私塾、庭の佇まいが、そこで暮らす
ひとびとの、自らの行く末を案じながらも、ささやかな希望を胸に抱いて、
せいいっぱい力をつくす気丈さを、静かに励ましているように温かく映って、
祭りの鐘、豆腐屋の笛、雨の音、誰かの励ましが、人知れず届いてくるよう。

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婚礼の光景など、いまはお目にかかれない和やかさ艶やかさ、遠い昔を語る、
懐古趣味っぽくもあるけれど、いまものこる、旧いお屋敷の気配からうまれた、
物語が、長年にわたる壮大な歴史を映画に語らせた力強さが、大団円とともに、
そこにあるだけの、風景が、過去の物語をはらんでいることを伝えてくれて。

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いまでもしじゅう通りかかる町並みが、30年以上前の風景として映るって、
なんか妙ですけれど、たしかにあんまり変わってなかったり、というか、
むしろ昔っぽく整備してたりするのかも、ロケ地の価値とか、考えてる?

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正直、セリフとかちょっとわかりやすすぎる物足りなさを感じたのですけれど、
おとぎ話ふうの平易さは、書割りっぽい舞台に相応しかったかもしれなくて。

シネプラザサントムーンにて11月

惑う After the Rain 公式サイト
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by habits-beignets | 2016-12-03 11:01 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

ローマの休日、名作ですよね。むろん、オードリー・ヘプバーンの魅力全開
なわけなんですけれど、あのシンプルで奥深い脚本もすばらしく、なのに、
誰が書いたのかって、あまり注意してなかったり、こんなドラマがあったとは。

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まだ記憶の隅に残ってる、東西冷戦、けれどこれほど過酷な現状だったなんて、
しかもクリエイティブな業界のはずなのに、個人の思想や発言が、つぶさに
検閲されて、というか弾圧さながら、優れた脚本家のダルトン・トランボにも
追及の手はゆるめられず、体制に反発すれば、ソッコー刑務所の理不尽さ。

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思想が罪とされるなんて、まったく信じられないおそろしさなんですけれど、
どうやらそこには、たくさんの血がながれた戦争の残像、仮想敵国への憎悪が
反映された、激しい排他的感情があるようで、そんな無自覚なままの横暴さに、
ひとびとの心をなぐさめ、勇気づける物語を描く者さえも、痛めつけられて。

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服役後に出所しても映画界からは追放、脚本家としての腕はたしかなのに、
危険分子に仕事はゆるされず、けれど生活のため、ありあまるアイデアのため、
名前を伏せて廉価で、密かに膨大な量の名作や娯楽作をつぎつぎ、これは闘い?
賞讃や尊敬、穏やかであたたかな暮らしも諦めて、まるで何かへの挑戦のよう。

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いやきっと、こっそり脚本を書きつづけることのかなしさは、おしはかれず、
名誉や報酬は欲せずとも、自らの創作を語れない、思いを吐露できないことは、
世界とつながっているたしかさを、奪われたようなものでは?
正当な批判なら、きちんと対峙できるけれど、それさえ許されない侮蔑など。

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終盤、わずかに距離をおきながらも、ずっと寄り添いつづけた娘が、
目からウロコの洞察力をみせてくれるのだけれど、勇敢な者に光さす瞬間が、
自分を信じて、あるいは、信じるに値するか絶えず検証しつつ、屈しなければ、
大切なものは、きっと世の中に生き残れる、そんな希望がかいまみえて。

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それにしてもトランボさん、あれもこれも著名な映画の脚本書いたんですね。
「ローマの休日」ラスト、王女の凛とした表情が奇跡的に素晴らしいですが、
トランボさんの不屈の精神が、あたかも映ったように、不思議に感じられて、
市井の人々のささやかなきらめきのような自由を、守りたい、そんな瞳と口元。

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シネプラザサントムーンにて10月

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 公式サイト
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by habits-beignets | 2016-10-04 00:04 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ブルックリン

生まれ育った地元での、穏やかだけれど、窮屈な暮らしから解き放たれようと、
憧れの新天地に、期待と不安ではちきれそうになりながら、海を渡った彼女の、
澄んだ瞳にうつる、さびしさやよろこび、輝きや曇りが、胸にせまってきます。

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年老いた母と姉妹での三人暮らしは、アイルランドの気候もあいまってか、
質素でまじめなつましさに、いくらか絶望の気配が漂い、なんとかして風穴を、
そんな、若い娘たちのすがる気持ちがうかがえて、たぶん、妹むすめが、異国へ
発つのは、単に仕事をもとめるだけではなく、なにか希望を見いだしたくて。

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けれど、日々なじんできた、身近な愛するひとたちと、遠く離れるのは、
なんとも体をひきちぎられそうな苦痛、出航のときの、見送る顔と旅立つ顔の、
思いの交感、いつまでもつながっていたい、たくさんの色とりどりのテープ、
きっと、もしや二度と会えないかも、無事の祈りをわかちあう、せつなさが。

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同郷の仲間がいるとはいえ、新しい暮らしは、なにもかも勝手がちがい、
微笑もなくしてしまう、耐えがたい望郷の念、けれど、若さはおそるべし!
にぎやかな催しや、異郷の人との出会いにときめいて、いつしか、誰かれの
やさしさに、包まれている幸福に、気持ちも体もほぐれてゆき、輝く時間。

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大人になるって、自分の居場所をみつけること、自分の価値を見いだすこと、
自分を必要としている世界、自分が必要としている世界を、見つけて選ぶ、
その課題に、真剣に真正面からむきあう、ということなのかも、
たとえ誰かが用意してくれた道から外れても、自らの手で力ずくで切り開く。

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あれほど心細かったのに、ようやくのびのび、自分の幸福を勝ち取って、
自信にみちあふれていたところへ、思わぬできごとで再び海を渡るのですが、
目に映るものは、覚えていた印象とはどこか奇妙にずれて、なにげない光景が、
このうえなく愛おしく、愛おしいはずのものが、戸惑うほどひどく鬱陶しく。

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人生の岐路って、たしかにとても大切で、ものすごく悩む、できれば、
すべてのひとに幸福になってほしいし、でもすべてを選ぶことはできなくて、
たとえば肉親への愛はたしかなのに、ともに暮らすことが、自分の未来を
輝かせてくれるのか、たとえば誰かを裏切っても、選ぶべき幸せがあるのか。

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親元で暮らしているときには、想像もつかなかった自分のありようと、
自分をとりまく世界の見え方、大切なものを諦めなければならない寂しさと、
それに耐えられることを信じる強さ、初めての航海の揺れにはわけもわからず
転げ回っていた頼りなさが、遠い昔となったとき、自分の足ですっくと立って。

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故郷との決別って痛いけれど、糧になる予感で、こらえられるものなのかも。
シアーシャ・ローナンの澄んだ瞳はあいかわらず、吸い込まれそう。

シネプラザサントムーンにて8月

ブルックリン 公式サイト
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by habits-beignets | 2016-08-22 22:17 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 さざなみ

夫婦を長いあいだやってると、相手のことすべて、わかってるようなつもりに、
なってるのかもしれないですね、一体感をなんの疑いようもなく、信じられて。

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結婚45周年のパーティーを目前に、夫のもとに、とつぜん、スイスの氷河で、
50年前の事故での遺体が発見されたというニュースが、知らされるのですが、
不穏なまでの、彼の動揺ぶりが、妻をも、訳のわからない不安に陥らせて、
けれど、どうにか乗り越えたい、誰かに罪や悪意があるわけではないのだから。

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若さを保ったままの女性の遺体は、夫のかつての恋人、とはいえ、結婚する前の
関係だし、夫に非があるようなことではない、けれど、自分たちの結婚生活を
振り返るイベントよりも、あきらかに彼の気持ちはスイスの山へ向かっている、
その苛立ち、まるで何かを試されているような出来事に、孤独感を強いられて。

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思いがけない相手の過去や思いを知ると、途端にすべて疑いたくなるってこと、
あるような気がします、あらゆることに裏があるような感じがして、たとえば、
自分へのやさしさ、愛情だと無垢に信じていたものさえ、何かの代用ではと、
本当に求められ、価値があるのは自分ではなくて、見知らぬ誰かなのではと。

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いったん疑い始めたら、どんどんハマってゆくだけですものね、他人の言葉は、
なぐさめにしか響かなくて、ことに、疑っている相手の言動は、誤摩化しにしか
受け止められない、彼の気持ちを理解しようとすればするほど、深い闇へ、
自分の人生にさえ、自信がもてなくなって、助けてほしいのに、叫べない。

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でも、満足できるほど信じられる、すべてをわかりあえる関係って、
無い物ねだりなのかも、お互い知らない部分、わからない部分を抱えながら、
それでも寄り添ってやってゆく覚悟、というのが、必要であるのかもですね、
自分にはないものを、相手が求めているような気がしても、仕方ないもの。

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45年経ってこそ、いろいろの考えや思いがとりとめもなく浮かんでくる、
そんな感じってあるのかもしれません。自分たち夫婦は、これでよかったのか、
相手にとって自分は最良のパートナーであったのか、くよくよ考えたり、
長い年月のはずだったのに、あっというま過ぎて、呆然だったり。

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映画のラストはちょっと苦いような気もしましたけれど、苦くても、諦めない、
それが、日々、年月を重ねてゆくということのような。

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ところで、いかにもインテリ田舎暮らし風シャーロット・ランプリングの、
ナチュラルな装いが、なんともカッコよくてすてき。

シネプラザサントムーンにて7月

さざなみ 公式サイト
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by habits-beignets | 2016-07-15 20:43 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー