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『マッピー』用ボーダー

映画 グランド・ブタペスト・ホテル

どこか、おとぎ話めいたシーンの、物語のはじまりから、リズミカルな語りに
誘われるまま、わくわくしながら、飛び出す絵本をめくってるような、高揚感。

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グランド・ブタペスト・ホテル、その響きも奇妙なほど、楽しげなんですけど、
建物の外観やら内装やら、働いてるひとたちの出で立ちとか、話の転じようも、
安心して見守っていられる、テンポのよさ、かわいい模型を眺めてるような
街並の俯瞰、山をのぼってゆくケーブルカー、個性的な俳優たちもいきいきと。

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お金持ちの老女の死にまつわる、ドタバタ劇が話の中心で、陰謀とか友情とか
活劇とか、お約束どおりの見せ場がつづくわけなのですけれど、おもわず膝を
乗り出して、一瞬たりとも見逃すまいとスクリーンに集中してしまうのは、
センスのよさなんでしょうね、何気ない会話のどれもに、クスクスしてしまう。

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伝説のコンシェルジュ、の憎めなさが秀逸で、ちょっと見キザな老女たぶらかし
みたいなのだけれど、その言動見守るうち、ピュアな愛らしさに、魅せられて、
新米のロビーボーイとの、真っ直ぐなかけあいが、微笑ましくたのしく、
師匠として、教え諭しながらも、対等にあつかい、そして庇う、やさしさが。

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とくに列車での検閲で、難民の境遇のロビーボーイを守ろうと、軍人に
立ち向かう姿が、けっこう感動的で、けっして強そうでないのに、ひるまない
姿勢が、いかにも誠実で、なるほどだからコンシェルジュとして一流なのだと、
老女のご機嫌とりが上手なだけが、取り柄なのではないのだと、納得できて。

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それにしても、豪華出演陣の、水を得た魚のような、躍動感みちた動きっぷり、
リゾートホテル、雪山、越境列車、刑務所、あちこちの舞台を飛び回る
色彩あふれる超贅沢なコント、時代がかった物語のおもむきも、たっぷり、
スリル、サスペンス、冒険活劇、これぞ映画館で映画を観る醍醐味の満足感。

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レイフ・ファインズとかジュード・ロウとか、じつは個人的にはあまり得意な
俳優ではないんですけど、これはなんかとってもキュートでよかったです。
マチュー・アマルリックやウィレム・デフォー、エドワード・ノートンやら、
その他大勢、みんな素敵、トニー・レヴォロリの幼気なさも、たまらなくて。

ジョイランドシネマみしまにて、6月

グランド・ブタペスト・ホテル 公式サイト
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by habits-beignets | 2014-06-16 03:24 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 それでも夜は明ける

実話がもとになっているということなのですけど、怖いですね、いきなり拉致。
自分の身は安泰だと、世の中を信頼していたのに、裏切られた絶望感。

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奴隷制が南部では認められていた時代に、北部では裕福な黒人が存在していた
という事実が、ちょっと異様な気がしたのですが、暮らす土地によって文化とか
慣習とか、本当にちがうんですね、自分を守ってくれている社会から、一歩でも
外へ出てしまったら、誰も助けてくれない、怖い場所だということが如実に。

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最初はそれが信じられない、すぐに自分の言い分が認められるだろう、と希望を
もっていたのが、じきに、所有され、虐げられる事実を受け入れざるをえず、
その場その場で、ありったけの知恵をしぼって、生き延びることのみ執心して、
じっと待ち続けながら、稀有なチャンスをつかみとろうとする、その痛ましさ。

自己の資質も経歴も隠して暮らす、孤独感と閉塞感、意思を表明することも
許されず、暴力も甘んじて受けなければならない境遇は怖いけれど、じつは
悪意だけではなく、正義感や憐憫の気遣いも存在するのに、強きもの、または、
富の力には逆らえず、それぞれの本心が反故にされる、救いのない怖さ。

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誰か、ひとりでも、白人でも黒人でも、それがおかしいと叫ぶ人間がいれば、
事態はあっというまに打開されそうなのに、暴力に屈する世界、金銭でなんでも
手に入るという幻想が妄信されつつある社会、その気味悪さをかんじるとき、
これはこの時代、この地方だけの問題ではないのでは、という気もしてきて。

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奴隷たちが強いられる労働も、綿をつむ作業などそれそのものは、生きてゆく
生業として健全なのに、問題はそのしんどさを誰かに理不尽におしつけること、
それは誰しも犯しがちな、あやまちなのでは。他者を利用したい、他者より
優位に立ちたい、その堕落した欲求が、歯止めを失ったとき、不条理な世界が。

他者を虐げることで、自分の存在価値をたしかめ、虐げられた者たちの復讐を
おそれることから、ますますその暴力の手をゆるめることができない、それは
過去の奴隷制だけではなく、いまでもあちこちで行われているホロコースト、
そこで、いつか自由になれると希望をもちつづけて、生き残ることの困難さ。

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自分を守るのには、自分ひとりの力では難しい、ひとりでも誰か他人の
良心に味方してもらえなければ難しい、その良心の存在を恐れずに信じる
ことこそが、どんなに追いつめられても、最期には突破口になる物語が。

シネプラザサントムーンにて5月

それでも夜は明ける 公式サイト
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by habits-beignets | 2014-06-03 22:25 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー