映画 ノルウェイの森

わたくし、ご他聞に漏れず、村上春樹サマの「文体注射」に、
へろへろにやられちゃって、かつて中毒になったことが。
なのでその、おっかなびっくり、観たわけなんですけれど。

b0209183_14384790.jpg
b0209183_1438983.jpg

冒頭の、キズキくんを交えての高校生時代を眺めているうち、
もうそれだけで、少しせつなくなってきました。
とても楽しそうでもあるのだけれど、どこか悲しげで痛々しくて。
なんて、ストーリーをすでに知っているからかもしれないのだけれど。

細かな設定など、小説とは当然ちがっているのだけれど、
それでもかなり、とくに台詞など、可能な限り忠実になぞられていました。
そういえば、主人公は「変わったしゃべり方」をしている
ということだったけれど、たしかに松山ケンイチくんのしゃべり方は、
ずいぶん変わった感じで。

b0209183_14444827.jpg

全共闘時代の大学の雰囲気が、当時をよく知らないので、
そのままなのかは、よくわかりませんでしたが、
ファッションや小物が、目に鮮やかで楽しめました。
学食の光景、アパートのキッチンの感じ、キチキチのミニスカートなど。
素朴で田舎っぽいかんじの直子と、都会の進んだ女の子のかんじの緑と。

でも、ほんとうは、と、やっぱり思ってしまうのだけれど、
緑さんは、いわゆる「生」の象徴として、主人公をがんがん振り回す
エネルギッシュで太陽みたいな女の子のはずだったのに、すこし物足りず。
下品な言葉を、可愛らしく言い放って、ひそやかな自分の苦悩や悲しみを、
あかるく笑い飛ばそうとする、けなげな女の子のはずだったのだけれど。

b0209183_14453863.jpg

直子さんも、たしかに繊細で、傷つきやすい、あやうい感じは見られたけれど、
もっと美しく、消え入りそうな、はかなげな姿を、見てみたかったような。
どこかに、ふとかいま見られてしまう、奇妙な力強さが、
ちょっと気になったりして。

b0209183_14464181.jpg

映画で、いちばん魅力的な女性は、ハツミさんだったようにも思えます。
彼女には、唯一リアリティが感じられたというか、普通のけなげさ、苦悩が、
とても、いじらしく、せつなかった。
それから、じつをいえば、レイコさんの大人の女っぷりを、
かなり期待してもいたのだけれど、終盤のやりとりは、なんだかありきたりで、
ちょっとがっかり。

でも、小説の世界を、とてもたいせつにしていることは、つたわってきました。
たとえば、それは、しばしば映しだされる、
森や草原や海などの、人間の世界を超越したような、
厳しさや崇高さが感じられる、自然の風景だったり。
ときおり、耳鳴りのように響いてくる、痛々しそうでもある音楽だったり。
ジョニー・グリーンウッドは、やはり、やってくれましたね、というかんじ。

b0209183_14472258.jpg

自分の思い描いていた印象とは、かなり違うと思いながらも、
あるいは、こういう作品だったのかもしれないなあ、などと、
鑑賞後に、原作を読みかえしたりするのも、
またひとつの読書の楽しみになるのかもしれません。

シネプラザサントムーンにて、1月

ノルウェイの森 公式サイト
[PR]

# by habits-beignets | 2011-01-15 17:22 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 バーレスク

すてきな女性を見ると、はっと目をひかれて、つい見つめてしまいます。
同性でも、色気を感じると、つい反応して、目がいってしまうんです。
華があるんでしょうかね、女性には、ヒトをひきつけるキラメキが。

b0209183_2010100.jpg

クラブ・バーレスクの舞台に、アリという女の子が、
目が釘づけになって、夢心地になるのも、わかる気がします。
彼女はそして、猪突猛進のいきおいで、自分の夢にちかづいてゆく。
セクシーでゴージャスな歌とダンスが、その過程を、色どります。

アリを演じているのは、クリスティーナ・アギレラ。
私はよく知らなかったのですが、大スターなのですね。
歌を聴けば、さもありなむ。

b0209183_2014578.jpg

冒頭では、素朴な感じの小柄な田舎娘で、シェール演じるクラブのオーナーが、
小馬鹿にして相手にしないのも、充分うなずけるのだけれど、
ひょんなことから、歌声を披露したとたん、世界が、変わってしまった。
あ、と口をまんまるく開けて、聞き入ってしまいました、わたくし。
あの、華奢なからだの、どこに、これほどのパワーが!

b0209183_202491.jpg

対するシェールおねえさまも、哀愁を帯びたお色気が、すてきです。
歌うシーンは、あまり多くはないのだけれど、猪突猛進ガールにはない、
オトナの慈しみを、しっとり感じさせる声のふるえ。

描かれているのは、情熱、苦悩、嫉妬、恋慕、猜疑、信頼、迷い。
たしかに、どこかで見た、ありふれたお話なのかもしれないけれど、
でも、ここちよく勇気づけられるのは、歌とダンスのきらびやかさが、
なにかを成し遂げることの可能性を、きっと感じさせてくれるから。

b0209183_2035219.jpg

あんな靴、履いてみたい、とアリが目を奪われた、たかーいヒール。
私にも、その気持ちは、よくわかるような。
ゴージャスなヒールって、満たされた生活を象徴しているような気が。
履いてゆく場所なんて、私には、ないんですけど……。

シネプラザサントムーンにて、12月

バーレスク 公式サイト
[PR]

# by habits-beignets | 2010-12-27 14:01 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 終着駅ートルストイ最後の旅ー

b0209183_21242111.jpg

文豪トルストイの奥さん、三大悪妻のひとりと言われているそうです。
あとのお二方は、ソクラテスの奥さんと、モーツァルトの奥さん。
(私ではありません、よかった、うふ。)

でも、なんていうか、そんなの余計なお世話ですよね。
夫婦にはその夫婦なりのありかたというか、愛情があって。
愛情、でもそれが、とても難しいんですけれど。
育て方とか、つたえ方とか。映画を見ていると、胸にせまってきました。

b0209183_21251515.jpg

ソクラテスは著名な作家で思想家で、
いろんなたくさんの人から、尊敬されて畏れられて。

でも、奥さんにとってはきっと、ただのキュートな男の子!
わたしの大切なかわいい坊やが、うさんくさい連中にかどわかされている!
彼をいちばん理解して、愛しているのは妻のわたし!
ヘレン・ミレン演じるソフィアの心のさけびが、聞こえてきます。

ソクラテスは最初のほうで、すべての宗教はただ「愛」を説いている、
というようなことを、たしか言っていました。

その、愛の、さまざまなありよう、自然にうまれてくる素朴な愛、
あるいは、思想から派生すべきと思われる壮大な愛、
弱さを慈しむ愛、強さを求める愛、
それらすべてを認めて、守ろうとするときに生じてしまう矛盾や苦悩に、
苛まれて、衰弱してゆく彼の姿が、せつないです。

b0209183_2126296.jpg

どの愛もが真実なのに、うまくかみあわないときのもどかしさ。
かみあっていない状態を、端から見れば、そこには憎悪しか
感じられないのかもしれないけれど、
でも、当人たちには愛の存在が確信できる、
そんなことが、あんがい現実には起こっているのかもしれません。

ロシア貴族の威厳たっぷりのヘレン・ミレンの装いも必見。
取り乱しながらも、セクシーで凛々しくて、すてき。

シネプラザサントムーンにて、12月

終着駅ートルストイ最後の旅ー 公式サイト

(シダ)
[PR]

# by habits-beignets | 2010-12-11 13:29 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画(DVD) マルタのやさしい刺繍

b0209183_18281425.jpg

時節柄、喪中はがきが郵便受けに
見受けられるようになってきました。
たいせつな人に逝かれてしまうのは、
仕方のないことだとはわかってはいるんですけど、
でも、やっぱり、さびしかったりします。

b0209183_1904832.jpg

映画のマルタさんも、シクシクメソメソ。
だんな様の名前入りのナプキンホルダーを、
いとおしそうに撫でる手が、せつないです。
まわりのお友達が、やさしく励ましても、
なかなか立ち直れません。
ところが! ひょんなことから、昔の夢を思い出して。
きれいな生地やレースを触れたとたん、
目がきらきら輝きだして、生き返ったよう。

b0209183_18532087.jpg

やっぱり、生きてゆくには夢とか憧れとかが、必要なんですね。
そして、女のひとにはきっと、いくつになっても、
きれいでかわいくって、ちょっぴりの色気が。
マルタさんは80歳でも、とてもセクシーで
チャーミングなランジェリーを、つくります。
理解のない、保守的な、息子やその世代の男どもと断固戦う覚悟でもって。
若い頃の夢だったランジェリーショップを開店して、守るために。

b0209183_18295579.jpg

彼女に触発されて、お友達も、車の運転や
インターネットに挑戦する姿がほほえましい。
閉鎖的な村の中でも、年齢や性別に関係なく、
前向きなひとたちは、ともかく、あかるい。
舞台はスイスなんですが、その景色も美しく、
見ているだけでにこにこしてきます。
ともかく元気に楽しい気分になりたいときに、おすすめの作品です。

マルタのやさしい刺繍 公式サイト

(シダ)
[PR]

# by habits-beignets | 2010-11-30 16:55 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 川の底からこんにちは

b0209183_20404083.jpg

しょうがない。
諦念ともいえそうなそんな台詞で、いろんな物事をスルーしてしまうことが、
やっぱりあるような気がします。

べつにふてくされているとか、そういうわけではなく、
自分の力ではどうしようもないことが
この世にはたくさんあるということが、人生ある程度やってると、
どうしてもわかってきたりもしますし……はあ。

でも、その「しょうがない」を、どっちの方向への指針とするのか、
それはいろいろなやりかたがあるのかも、と思わせてくれる!
 川の底からこんにちは!


佐和子ちゃんをめぐるひとびとの、掛け合いがともかく、
元気があっておかしくて、すてき。

なかでも恋人?との、丁々発止のやりあいは、コントの一幕のようでもあって、
クスクス、ワハハハ、の声が、それほどお客さんの入っていない劇場内に
響いてしまったり。


まっとうな理屈、常識的な判断からは、どうにもズレた方向へと
いこうとする物語にも、
なんだか妙に励まされる気もします。

「あたし、がんばるよ!」というのが、あまりに唐突で、
もしかしてヤケになってるのか、
という感じなんですけれど、その、やけくそ気味の本気っていうのが、
まわりに感動をあたえるほどの勇敢さで、けなげけなげ。


ともかくまちがいなく、佐和子ちゃんはかっこよく
くわえていきなり娘になってしまった女の子も、
なかなかのくせ者っぽく魅力的。

満島ひかり、という女優さんを、私はあまり知らなかったのだけれど、
彼女のちからが、本作ではかなり大きく作用しているような気もします。

こちらの監督さんと結婚したそうで、だからきっといい映画なんです。

 シネプラザサントムーンにて、11月

 川の底からこんにちは 公式サイト

 (担当:シダ)
[PR]

# by habits-beignets | 2010-11-03 20:55 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー