映画 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

ローマの休日、名作ですよね。むろん、オードリー・ヘプバーンの魅力全開
なわけなんですけれど、あのシンプルで奥深い脚本もすばらしく、なのに、
誰が書いたのかって、あまり注意してなかったり、こんなドラマがあったとは。

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まだ記憶の隅に残ってる、東西冷戦、けれどこれほど過酷な現状だったなんて、
しかもクリエイティブな業界のはずなのに、個人の思想や発言が、つぶさに
検閲されて、というか弾圧さながら、優れた脚本家のダルトン・トランボにも
追及の手はゆるめられず、体制に反発すれば、ソッコー刑務所の理不尽さ。

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思想が罪とされるなんて、まったく信じられないおそろしさなんですけれど、
どうやらそこには、たくさんの血がながれた戦争の残像、仮想敵国への憎悪が
反映された、激しい排他的感情があるようで、そんな無自覚なままの横暴さに、
ひとびとの心をなぐさめ、勇気づける物語を描く者さえも、痛めつけられて。

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服役後に出所しても映画界からは追放、脚本家としての腕はたしかなのに、
危険分子に仕事はゆるされず、けれど生活のため、ありあまるアイデアのため、
名前を伏せて廉価で、密かに膨大な量の名作や娯楽作をつぎつぎ、これは闘い?
賞讃や尊敬、穏やかであたたかな暮らしも諦めて、まるで何かへの挑戦のよう。

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いやきっと、こっそり脚本を書きつづけることのかなしさは、おしはかれず、
名誉や報酬は欲せずとも、自らの創作を語れない、思いを吐露できないことは、
世界とつながっているたしかさを、奪われたようなものでは?
正当な批判なら、きちんと対峙できるけれど、それさえ許されない侮蔑など。

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終盤、わずかに距離をおきながらも、ずっと寄り添いつづけた娘が、
目からウロコの洞察力をみせてくれるのだけれど、勇敢な者に光さす瞬間が、
自分を信じて、あるいは、信じるに値するか絶えず検証しつつ、屈しなければ、
大切なものは、きっと世の中に生き残れる、そんな希望がかいまみえて。

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それにしてもトランボさん、あれもこれも著名な映画の脚本書いたんですね。
「ローマの休日」ラスト、王女の凛とした表情が奇跡的に素晴らしいですが、
トランボさんの不屈の精神が、あたかも映ったように、不思議に感じられて、
市井の人々のささやかなきらめきのような自由を、守りたい、そんな瞳と口元。

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シネプラザサントムーンにて10月

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-10-04 00:04 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ブルックリン

生まれ育った地元での、穏やかだけれど、窮屈な暮らしから解き放たれようと、
憧れの新天地に、期待と不安ではちきれそうになりながら、海を渡った彼女の、
澄んだ瞳にうつる、さびしさやよろこび、輝きや曇りが、胸にせまってきます。

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年老いた母と姉妹での三人暮らしは、アイルランドの気候もあいまってか、
質素でまじめなつましさに、いくらか絶望の気配が漂い、なんとかして風穴を、
そんな、若い娘たちのすがる気持ちがうかがえて、たぶん、妹むすめが、異国へ
発つのは、単に仕事をもとめるだけではなく、なにか希望を見いだしたくて。

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けれど、日々なじんできた、身近な愛するひとたちと、遠く離れるのは、
なんとも体をひきちぎられそうな苦痛、出航のときの、見送る顔と旅立つ顔の、
思いの交感、いつまでもつながっていたい、たくさんの色とりどりのテープ、
きっと、もしや二度と会えないかも、無事の祈りをわかちあう、せつなさが。

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同郷の仲間がいるとはいえ、新しい暮らしは、なにもかも勝手がちがい、
微笑もなくしてしまう、耐えがたい望郷の念、けれど、若さはおそるべし!
にぎやかな催しや、異郷の人との出会いにときめいて、いつしか、誰かれの
やさしさに、包まれている幸福に、気持ちも体もほぐれてゆき、輝く時間。

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大人になるって、自分の居場所をみつけること、自分の価値を見いだすこと、
自分を必要としている世界、自分が必要としている世界を、見つけて選ぶ、
その課題に、真剣に真正面からむきあう、ということなのかも、
たとえ誰かが用意してくれた道から外れても、自らの手で力ずくで切り開く。

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あれほど心細かったのに、ようやくのびのび、自分の幸福を勝ち取って、
自信にみちあふれていたところへ、思わぬできごとで再び海を渡るのですが、
目に映るものは、覚えていた印象とはどこか奇妙にずれて、なにげない光景が、
このうえなく愛おしく、愛おしいはずのものが、戸惑うほどひどく鬱陶しく。

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人生の岐路って、たしかにとても大切で、ものすごく悩む、できれば、
すべてのひとに幸福になってほしいし、でもすべてを選ぶことはできなくて、
たとえば肉親への愛はたしかなのに、ともに暮らすことが、自分の未来を
輝かせてくれるのか、たとえば誰かを裏切っても、選ぶべき幸せがあるのか。

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親元で暮らしているときには、想像もつかなかった自分のありようと、
自分をとりまく世界の見え方、大切なものを諦めなければならない寂しさと、
それに耐えられることを信じる強さ、初めての航海の揺れにはわけもわからず
転げ回っていた頼りなさが、遠い昔となったとき、自分の足ですっくと立って。

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故郷との決別って痛いけれど、糧になる予感で、こらえられるものなのかも。
シアーシャ・ローナンの澄んだ瞳はあいかわらず、吸い込まれそう。

シネプラザサントムーンにて8月

ブルックリン 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-08-22 22:17 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 さざなみ

夫婦を長いあいだやってると、相手のことすべて、わかってるようなつもりに、
なってるのかもしれないですね、一体感をなんの疑いようもなく、信じられて。

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結婚45周年のパーティーを目前に、夫のもとに、とつぜん、スイスの氷河で、
50年前の事故での遺体が発見されたというニュースが、知らされるのですが、
不穏なまでの、彼の動揺ぶりが、妻をも、訳のわからない不安に陥らせて、
けれど、どうにか乗り越えたい、誰かに罪や悪意があるわけではないのだから。

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若さを保ったままの女性の遺体は、夫のかつての恋人、とはいえ、結婚する前の
関係だし、夫に非があるようなことではない、けれど、自分たちの結婚生活を
振り返るイベントよりも、あきらかに彼の気持ちはスイスの山へ向かっている、
その苛立ち、まるで何かを試されているような出来事に、孤独感を強いられて。

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思いがけない相手の過去や思いを知ると、途端にすべて疑いたくなるってこと、
あるような気がします、あらゆることに裏があるような感じがして、たとえば、
自分へのやさしさ、愛情だと無垢に信じていたものさえ、何かの代用ではと、
本当に求められ、価値があるのは自分ではなくて、見知らぬ誰かなのではと。

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いったん疑い始めたら、どんどんハマってゆくだけですものね、他人の言葉は、
なぐさめにしか響かなくて、ことに、疑っている相手の言動は、誤摩化しにしか
受け止められない、彼の気持ちを理解しようとすればするほど、深い闇へ、
自分の人生にさえ、自信がもてなくなって、助けてほしいのに、叫べない。

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でも、満足できるほど信じられる、すべてをわかりあえる関係って、
無い物ねだりなのかも、お互い知らない部分、わからない部分を抱えながら、
それでも寄り添ってやってゆく覚悟、というのが、必要であるのかもですね、
自分にはないものを、相手が求めているような気がしても、仕方ないもの。

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45年経ってこそ、いろいろの考えや思いがとりとめもなく浮かんでくる、
そんな感じってあるのかもしれません。自分たち夫婦は、これでよかったのか、
相手にとって自分は最良のパートナーであったのか、くよくよ考えたり、
長い年月のはずだったのに、あっというま過ぎて、呆然だったり。

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映画のラストはちょっと苦いような気もしましたけれど、苦くても、諦めない、
それが、日々、年月を重ねてゆくということのような。

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ところで、いかにもインテリ田舎暮らし風シャーロット・ランプリングの、
ナチュラルな装いが、なんともカッコよくてすてき。

シネプラザサントムーンにて7月

さざなみ 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-07-15 20:43 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 リリーのすべて

互いに尊敬しあい、魅力を認めあい、とても幸福そうな若夫婦なんですが、
ほんのはずみから、思いもよらなかった、複雑で終わりのみえない、苦境に。

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ハンサムな夫は、新進気鋭の風景画家、まわりからの評価も高く、順風満帆、
彼を誇りに思う妻も、美人で魅力的な肖像画家、絵の評判は今ひとつだけれど、
それぞれの個性を尊重しあって、切磋琢磨しつつ、たえず睦み合う関係が、
いかにも心地よく、不足するものなど何もない、理想のカップルそのものに。

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なのに、軽い気持ちで、妻の絵のモデルの代役を夫がひきうけたことから、
それまで露ほども考えていなかった、夫の変化がみるみる、そんなつもりでは、
と激しく後悔しても、すでに遅し、あんなに紳士然としていた夫だったのに、
誰もがうらやむ、まっとうに幸せな夫婦だったのに、暮らしは混乱に陥って。

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理解したい、安楽を分かち合いたい、と望んでも、かつて愛し求めた夫の姿を、
見ることができなくなってゆく、恐怖と寂しさ、それでも、夫に本来の姿を
取り戻させてあげたいと願う、切実な愛情、つねに揺らぎながら、責めたり、
落ちこんだり、励ましたり、案じたり、誰かに助けを求めたり、出口を探して。

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皮肉なことに、夫をモデルに描いた絵が、とつじょ売れて、妻は一躍、
売れっ子画家に、対して、描くことがなくなった夫はつまり、叶えられない
欲求こそが、表現の源流だったのかもしれず、いつも描いていた同じ風景、
故郷への憧憬の、色彩の深さ、静かな暗さが、悲しみをたたえているようで。

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リリーと名乗るときの、夫のはにかみ悲しそうな笑顔、彼の不在の不穏さに、
彼を描くことで、自分を支えようとする妻、夫婦というかたちを超えて、
互いを結びつける絆を、かろうじて信じようと、現実的な解決策に、
恐れをこらえて、挑もうとする姿が、痛々しくも、たくましく、勇敢で。

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役者の誰もが魅力的、舞台となるコペンハーゲンの街並も、いかにもの美しさ、
当時のヨーロッパのファッションも、目に楽しく、物語冒頭とラストの
つながりも、しなやか、風景そのものがきっと、彼だったのではと思われて。

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シネプラザサントムーンにて6月

リリーのすべて 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-06-24 00:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー

歳を重ねてわかったのだけれど、もうおばさんだって自分に言い聞かせても、
悲しいぐらい、中身は女の子だったりで、かわいいお洋服やアクセサリーに、
ついつい引き寄せられてしまう、きれいな色やデザインに、ときめいてしまう。

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それ、でも、健全なことなんですよね!きっと必要で大事なことなんですよね!
94歳のニューヨーカー、アイリスさんの、ゴーイングマイウェイっぷりは、
パワフルで、ケタはずれのカッコよさ、なのに自然体、その正体は?と思いきや
インテリアデザイナーとしてのキャリアは相当、なるほど、でもとても気さく。

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おそらく、かなりハイソな世界でお暮らしだと思われるのですが、けっして、
高級品ばかりを身につけるわけではなく、ジャラジャラ、チープなアクセを、
厳しく吟味しつつも、ひょいひょい手にとり、組み合わせては、ほらどうよ?
とばかりに颯爽登場、その姿、まさに「めずらしい鳥」、えもいわれぬ威厳が。

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彼女の膨大なファッションコレクションが陳列披露されたのは、ちょっとした
アクシデントが、きっかけだったらしいのだけれど、あっというまに口コミで
評判に、84歳にして時の人に、モデルやコメンテーターとして引っぱりだこ、
プロデュースしたものは即完売、キャラも立っての、ファッションアイコンに。

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いやもう、トークショーでコーディネートを助言するシーンがあるのですが、
彼女の迷いのない手で、着る人それぞれが、いきいきと輝くさまは、お見事、
人によって、シチュエーションによって、着るものを選ぶことの大切さと、
楽しさが、驚きとともに伝わって、装いって、輝く人生につながるものかも。

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なかよしの旦那さまの装いを選ぶのも、楽しそう、というか愛に満ちて、
キラキラ元気に! いっしょに闊歩! どこか祈りのような、功徳にさえ、
本当は、いくら精力的に動きまわっていても、若い頃とおなじではない、
でもだからこそ、鮮やかな色、キュートなものに囲まれる喜びをつねに。

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スーパーウーマンに違いなくても、華やかな人生の影であきらめたものも、
そうは見えずとも、苦悩や悲しみも、おそらくいくらかあったはず、でも、
自分にふさわしいもの、自分を豊かにしてくれるものを、情熱的に求めたら、
まわりを惹きつけ、希望や楽しさや喜びをふりまいて、極楽鳥のように。

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旦那さまの100歳のお誕生日パーティーの、にぎやかな神々しさ。
「パーティーに出かける支度は、パーティーそのものよりずっと楽しい」
至福の時間を、身近な人たちみんなと分けあえるよう、その心がけこそが、
おしゃれ、自分がハッピーであることが、みんなのハッピーに、きっと。

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シネプラザサントムーンにて5月

アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-05-28 12:16 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー