映画 キャロル

50年代ニューヨーク、クリスマスシーズンのデパート、ゼンマイ仕掛けの
玩具たちがところ狭しとならぶ売り場での、視線の交わし合いに目が釘づけ。

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サンタ帽を被った売り子の女性と、たっぷりな毛皮に身を包んだ客の女性、
店内の混雑に遮られながら、目を合わせた瞬間が永遠のときでもありそうで、
これって何だろう、このわけもなく、どうしようもない、あらがえない吸引力、
もしや? そう気づいたときにはすでに遅い、迷う暇もなく、つっぱしって。

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世間並みのしあわせは、すぐそこに、ちょっと手をのばせば、誰も傷つけずに
それなりに恵まれた人生を歩めそうなのに、なぜか拒絶せずにはいられない、
たぶん希望が見いだせないから、物足りなさに鬱鬱となる心が叫びそうだから、
自分が何を欲しているか、考えなくても、圧倒的な心の動きでわかってしまう。

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本当に、互いをわかちあいたいと渇望したとき、異性はむしろ幻滅の対象かも、
この時代の男性は、女性を所有欲の目で見ていそうだし、上から目線は確かに、
美しさ可愛さを讃えるばかり、自分の意のままにならなければ、激しくなじる、
けれど彼女たちは、ためらいがちに、でもまっすぐ、相手の心の奥に忍びこむ。

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あっと思うまもなく、二人の女性の情熱のまま、物語は加速してゆくのですが、
写真家になることを夢見る、少女のようなまなざしが、一分一秒を逃すまいと、
フィルムに刻むのが、いたいけな祈りのようでいじらしく、まぶしげに見返す、
年上の女性の、華やいでいながらも、どこか冷めた表情が、気高く悲しそうで。

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いつかは終わりがくるから、という変えられない真実を受け入れるかのように、
逃避行じみた二人の関係は、中断を余儀なくされそうになり、ふと立ち止まって
考えたり決断して、そして時間が、いつか自然に熱を冷ましてくれたようにも、
でもきっと人生のなかでの、代えがたい一瞬は、強く互いの核にきざまれて。

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映画冒頭からラストへの流れが、非のうちどころのない完璧さ。
目だけで、すべてを語る、女性たちの、表現力のゆたかさ。
混雑を介しての大胆な視線、誰にも悟られない密会の、濃密さ妖婉さ。

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さておきファッションがとってもすてき、オードリーぽいジャンパースカート、
ヘアバンド、タータンチェックの帽子マフラー、クラシカルな車、街並も。

シネプラザサントムーンにて4月

キャロル 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-04-13 16:31 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 アレクセイと泉

チェルノブイリから北東に180キロ、ベラルーシのちいさな村、
2000〜2001年、日本の監督が撮ったドキュメンタリー。

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アレクセイ青年の静かな語りで、映画は始まるのですけれど、内容は深刻、
放射能、汚染、恐ろしくもあって、それなのに、目の前にひろがる光景は、
すこぶるのどか、昔むかしからの、丁寧でおだやかな暮らしを、微笑みながら
くり返す、ただ、若者の姿は殆どないけれど、アレクセイ青年が頼りだけれど。

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古くから大切に使われてきた、泉の水、暮らしの中心、いのちの源のそれの、
汚染量はゼロ、まるでおとぎ話のようで、信じがたいのだけれど、村の誰もが、
病とはいかにも無縁そうに、たくましく惑わず、まっすぐひたすら自分たちの
流儀を、しなやかに守り続ける、雪のなか、新緑のなか、隣人と手をたずさえ。

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久しぶりにやってくる司祭に、見てもらえるよう、泉の木枠を修繕するのは、
老いた男たちの腕と足、その仕事ぶりには誇らしさが、神聖な沸き水を守り、
関わり、恵みをうけることがそのまま、生きてゆくことと信じているようにも、
泉の畔に立つ、三角屋根の十字に、彼らの純粋な信仰が、可憐なたたずまいで。

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原子力とか放射能とか、そもそも無縁の空気がいっぱい広がってるんです、
じゃがいもを掘り、カゴを編んで、糸をつむいで、暖炉でパンを焼き、
ときおり移動販売の車で、よそのものを買い、祭りではみなで歌い踊って、
老いていても、まるで少年と少女、女たちの花柄の衣装はお人形さんのよう。

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政府の移住勧告で600人だった住人も55人の年寄りと1人の青年に、
町に住む子供や孫には、週に2本のバスでしか、もはや実際には世界から
忘れられられようとしている村なのだけれど、ここで暮らし続ける人たちには、
これ以上は望めない楽園のようで、とどまることの圧倒的な説得力が。

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けなげでいじらしくて、多くを求めない、まっすぐなひとたちをどうか、
清らかな泉が、けがれからお守りくださいますように、
花模様で満ちた、あたたかそうな部屋そのままの、世界でありますように。

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福島の事故が起こる以前の、すこし古い映画なのですけれど、
長泉町のクレマチスの丘で、上映されました。

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6月にも、上映されます。写真家である監督の他の映像作品も。
写真展が、IZU PHOTO MUESUMで開催されているのですけれど、
そちらの入館料で、映画、トークイベントなども観覧できます。

クレマチスの丘ホールにて4月

クレマチスの丘

IZU PHOTO MUSEUM

本橋成一監督作品 上映&トークイベント

アレクセイと泉 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-04-05 01:25 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ハッピーエンドの選び方

舞台はイスラエルの老人ホーム、おしゃれで立派でたのしそう、
互いの余生を思いやり、助け合い、でも、終わりのときに気持ちは揺らいで。

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いつも何かを工作しているおじいさんは、いたずらっ子めいた明るさで、
どうやら、病気が進行しているらしき奥さんをも、自作の発明品で励まして、
でも、重い病気に苦しむ友だちとその奥さんには、せつない気持ち、寄り添う
思いが強まって、どうにか楽にしてあげたい、切実な願いなら叶えてあげたい。

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それは犯罪、いけないことと、咎められて、葛藤して、それでもきっと、
大切なひとからの訴えを、むげにはできず、仲間をつのり、思い切って決意、
でも誰が? 誰の手で実行? で計画はのっけから頓挫しかけ、そこで発明、
誰もが罪悪感に苦しむことがないように、恐ろしい犯罪と距離を置けるように。

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いや苦しいですよね、物語はあえてあまり深刻にならないよう、あちこち
ユーモアちりばめられて、不謹慎にも笑ってしまったりもするのだけれど、
もはや命を延ばしているのが、耐えられない、けれどそれを断つ手段もない
袋小路の状況でのジタバタ、愛しているからこそ、お別れを覚悟しようと。

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思うように体が動かせて、したいことができて、気持ちを伝えることができて、
大事なことを覚えていられて、ということができなくなることの、悲しさ、
いつか回復できる希望がなければ、生きてゆくことへの執着はなくなるかも、
どんなに明るいことを考えようとしても、つきまとう虚しさに蓋をされて。

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でもどうなんでしょう、ただそこで生きている、ということだけでも、
誰かの支えになることもあるような気はするのですけれど、それまでとは
違う状態になっても、意思の疎通がかなわなくても、息づいていてくれる
だけでも、ありがたいような気もするのだけれど、それはむしろわがまま?

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やりきれない苦痛ばかりの生から、解き放たれることこそが、よろこび?
でも、それは敗北ではないの? 逃避ではないの? だって寂しいから、
そばにいたいから、いてほしいから、一緒にわかちあう時間が欲しいから。

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誰かの役に立てるよう、よろこんでもらえるよう、発明品をこしらえてきた
おじいさんの、いろんなひととの交流、お別れをとおしての、迷いが、
軽やかなテイストで伝わってきて、もしも自分の身に起きたら、どれほどの
思いが錯綜することか、生って愛って難しい、考える対象には向いてない。

シネプラザサントムーンにて2月

ハッピーエンドの選び方 公式サイト
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# by habits-beignets | 2016-02-27 21:04 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 千年の一滴 だし しょうゆ

和食がユネスコ無形文化遺産になった、と報道されてから久しいですが、
なるほど世界が認めるわけね、の奥深さをじっくり堪能できて。

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第1章「だし」編、第2章「しょうゆ」編で、構成されるドキュメンタリー、
日本・フランス合作、2014年フランス•ドイツで大反響とのことなのですが、
和食を基礎づけるともいえそうな要素、「うまみ」を軸にひろがる物語、背景が
ドラマチックで、それぞれの食材とそこにかかわる人々の生命力がみなぎって。

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だしといえば、昆布と鰹節、京都の料亭で丁寧にひかれる、たっぷりのだしは、
やわらかな湯気をただよわせ、こし布からポタリ、ポタリ、ゆっくりしたたる
しずくたちは、優雅にきらめき、静かなハーモニーを奏でながら、料理人の
感性にみちびかれるかたちで、ひとびとの味覚をうならせるまでにむすびあう。

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そのむすびあいまでの、遠い道のり、はるか北の海、あるいは南の海で、
厳しい自然と闘い、寄り添いつつ、たくましく暮らすひとびとの熟練の手で、
ゆらゆら海底しげる昆布や、ぴちぴち肥えた鰹、歳を重ねた木に根づく椎茸が、
ぎっしりうまみをたくわえるよう、育てられる過程の緻密さが、揺るぎなく。

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いったいどうしていつから、こんな知恵が、と驚嘆してしまうのだけれど、
だって、捕まえたり、収穫したり、で終わりにしないのですもの、それから
さらに、自然のちからを借りて、時間をかけてじっくり、おいしさがぎゅっと
あつまるよう、目には見えない化学反応を、きちんと推量るなんてことまで。

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しょうゆもまた、まさに愛おしんで育てているわけだけれど、その発酵、
熟成は、ミクロの世界でのできごと、花が咲いたり、呼吸をしたりと、
目でたしかめられる変化はもちろんあっても、それをもたらす麹菌は、
微細で神秘的、家宝のように外界と閉ざされて守られる、秘薬の重々しさ。

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秘薬なわけなんですね、どこにでもあるってしろものではないのですって、
どうしてそれが、日本にあるのか、という謎の解明が紹介されるのですが、
ミステリアスで感動的、先人の情熱と聡明さに、思いを馳せると、
いまの暮らしに欠かせない、しょうゆ、みそが、奇跡的な存在に思われて。

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ふだん、当たり前に口にしている、和食の不可思議さ、たくさんの時間と
たくさんの自然現象、たくさんの労力、たくさんのめぐり逢わせの、
ありがたさが、遠い過去からの歴史、さまざまな場所でのひとびとの営み、
科学の視点で明かされる原理をつうじて、胸にせまって、おいしさに感謝。

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シネプラザサントムーンで12月18日まで(問い合わせ多く当初の予定より1日延長とのこと)

シネプラザサントムーンにて12月

千年の一滴 だし しょうゆ 公式サイト
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# by habits-beignets | 2015-12-17 04:18 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 あん

満開の桜は、なぜか人生のはかなさと滋味を、とどけてくれる気がします。
悲しいような、嬉しいような、焦るような、励まされるような、落ち着かなさ。
樹木希林、お孫さんとの共演と話題になりましたね。
あんこ、たべたくなります。

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世界を埋めつくすほどのいきおいで、咲き誇る桜の花々から、現れた老婆が、
いきなり、こちらの扉を音をたてずにノックして、頼りなげなのに、めげない、
おとなしく引き下がりそうで、離れない、妙に心をつかまれるのは、長いこと、
あんこをひたすら作りつづけてきたからかも、あずきの声を聞きながら。

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なりゆきで仕方なく、どら焼きをこしらえる日々をおくる、くたびれた男が、
すべてをあきらめていたはずなのに、気持ちをこめてなにかに打ち込むことの、
面倒だけれど、疲れるけれど、苛立たしいけれど、よろこばしく救われる心地、
多くの見知らぬひとたちをうごかす力、誰かを感動させる奇跡を知って。

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静かでも、ささやかでも、華やかではなくても、日々のいとなみのときめき、
たくさんのいのちと、つながっている実感に、身も心もほぐれてゆくさまが、
小さなどら焼き屋の、厨房と店先に、やわらかな光をともして、孤独を抱えた
少女も笑顔に、なのに、奇跡のようにおいしいあんこには、隠された物語が。

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誰もがひとにはいえない事情を、胸に秘めて暮らしているところがあって、
他人に突かれれば傷つく、それでも、つかのまやさしさに身を寄せて、
この世もわるくないと信じられる瞬間を、もとめることをやめられなくて、
たとえば、素朴で甘くおいしいたべものを、噛みしめて、泣きたくて。

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誰の人生もが物語であるように、あずきの一粒にも、きっとそれぞれの物語、
ようやく巡り合えたありがたみに思いを馳せて、そのよろこびを、精いっぱい
わかちあおうと、丁寧に時間をかけて、つくるあんこは、冷たくなりかけた心を
あたたかくやわらげて、世間の目の残酷さにも、立ち向かえるちからのもとに。

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桜の季節に出会って、まためぐる桜の季節には、あたらしい旅立ち、
望んで選んだ人生ではなくても、できることが限られていても、どこかの誰かと
つながれることを信じて、小さな出会いをたいせつにすれば、桜や月の美しさ、
季節のうつろいのよろこびに、気持ちがみたされる至福の瞬間が、きっと。

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ただ、それぞれの背景を物語で描くには、いくらかステレオタイプの感が、
たしかにひどく悲しい話だと、ドキュメンタリー番組では、思いましたが。

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シネプラザサントムーンにて11月

あん 公式サイト
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# by habits-beignets | 2015-11-21 18:59 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー