映画 シェフ 三ツ星フードトラック始めました

おいしそうなものがもう、たっくさんつぎつぎ登場、おもわず前のめり、
おいしいって、実際に口にいれなくても、伝わるものなんですね、きっと。
ニューオリンズの「ベニエ」、憧れのお菓子は、ただそれだけを味わうために。

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誰もが認める、腕利きのシェフ、そこへグルメで有名なブロガー食事の予告、
というところから物語は始まるのですが、ではとびっきりの新メニューで応戦、
の心意気を、保守的なオーナーに反対され、ああ雇われ人のかなしさですね、
たしかに難しい選択だし、一流職人でもマーケティングには自信なかったり。

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ちょっと私生活も問題ありそうで、誰からも愛される人気者なのにの鬱屈、
頼みの綱の仕事すら、どうやらご破算のなりゆきで、いよいよどん詰まりの
様相なのだけれど、だからこそ、開き直って挑戦できることもあるというもの、
未知の料理、未知の仕事、未知の世界、に心がひらかれてゆくきっかけに。

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キューバサンドイッチの移動販売、レストランのコースメニューとは別世界
のようだけれど、おいしさを求めて群がってくるひとたちを目の前に、
気の合う仲間、家族と、叱咤激励わらいながらの料理には、愛情が自然に
こめられて、もしや忘れかけていた原点、料理にたいせつなものが輝いて。

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そうたぶん、たとえ一流レストランであっても、多くの人がかかわれば、
それなりのしがらみ、コストやら戦略やら、守るべきものも生じてくるし、
ともかくおいしいものを誰かに食べてもらいたい、感動してもらいたい、
料理人のそんな純粋な情熱すら、行き場を失うことも、たしかにありそう。

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それならそんな面倒な職場から飛び出せば? 物語が指し示してくれる希望は、
ちょっと楽観的なおとぎ話ふうかもしれないけれど、でも、たびたび登場する
現代だからこそのツール、ツイッター、誰か専門家なんかに頼まなくたって、
自分たちで、いかに多くのひとたちに呼びかけることができるか、その可能性。

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そういえば、そもそもの話の発端も、ブログであったし「拡散」であったし、
傷ついて、追いつめられての恐ろしさも、もちろんそこにはあるけれど、
頭きりかえこっちから、利用するスタンスに立ってしまえば、あんがい無敵、
率直な、本物の、気持ちや誠意がそのままつたわってくれることも。

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一流シェフがほんとうにたいせつなもの、料理、家族、仲間、そして
自分に期待してくれる、たくさんのお客さんたちとの関係の再生、という
お話ですけれど、コンピュータ、インターネットなど、どんどん進化する
IT環境が、それをたすけてくれる、どこか提言、助言のようなおもむきも。

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いやともかく、行く先々でのおいしいものとの遭遇がたのしく、
おいしいものをとおして、いろんな人との交流やしみじみの回顧とか希望とか。
人生ってつまり、おいしいものを探し求める旅ってところなのかもですね。
今日はベニエをたべるだけ、の日もあって。

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エンドロール最後までご覧になるのをおすすめします。
料理のキモ、わかるかも。

シネプラザサントムーンにて3月

シェフ 三ツ星フードトラック始めました 公式サイト
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# by habits-beignets | 2015-03-19 16:56 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 毛皮のヴィーナス

舞台をライブで、ってほとんど観たことないのですけれど、その臨場感、
躍動感、緊張感を、堪能できる映画って、だからとても、ありがたいです。

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ポランスキー監督、そういえば以前も『おとなのけんか』で、舞台劇、
みごとに映画にしてくれてましたけど、今回もその魅力全開!引き込まれて。
冒頭の、いかにもこれから、あやしい物語に入り込んでゆくかんじ、
扉をひらけば、がらんとした劇場で、ひとりわめく、神経質そうな男が。

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舞台劇の演出家、その主演女優のオーディションに遅れてきた女優の二人が、
オーディションをやる、やらない、の、のっけからの丁々発止、哀願したり、
激高したり、なだめたり、愚弄したりの、めまぐるしいやりとり、一瞬にしての
互いの立場の変わりよう、さっきはすがってお願いしてたのに、今度は足蹴に。

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マチュー・アマルリックと、エマニュエル・セニエ、このおじさんおばさん
コンビ二人だけで、物語は展開してゆくのですが、一瞬たりとも目が離せない、
演出家と女優だったかとおもうと、ホテルで出会ってあやしい関係になる男女、
愛の崇高さを語る芸術家と社会的なものさしではかる婦人、あっちへこっちへ。

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ピンと張りつめてちょっとのゆるみもみせない、緊張の糸、物語の場所は、
仮に設置されたような、薄暗い舞台なのだけれど、二人のやりとりに従って、
大昔のアブノーマルな世界だったり、殺風景なオーディション会場だったり、
芸達者な二人の俳優が、まさに闘うように繰り広げる、多面性といったら!

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相手の言動によって、自分の未知の部分が引き出され、呆然とするまもなく、
さらに向こうの攻撃にさらされて、応戦するのが精一杯、そんな、面の皮を
一枚一枚、あっというまにはがされて、おろおろしたり抵抗したりの
みっともなさを、マチュー・アマルリックが表情ゆたかに、キュートにさえ。

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毛皮ではない、ぼろぼろニットのショールも、振る舞いしだいで、いかにも
危険なしろものに、売れない女優はいったい何者? 正体があかされそうで、
でたらめそうで、なのに、ときおり戦慄せずにはいられない、洞察力、理解力、
最初は愚かにしかおもえなかったものたちの、突然の存在感は、偶然それとも?

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息もつかせぬ1時間半、たった二人の舞台劇の奥行きが底なし沼のようで、
ラストはもう、彼のセリフじゃないけれど、ここがどこの世界だか。

ジョイランドシネマ沼津にて2月
※2月27日で閉館! いままでありがとう!※

毛皮のヴィーナス 公式サイト
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# by habits-beignets | 2015-02-26 18:26 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ショート・ターム

助けを求められたときに、助けてあげるのは案外かんたんかもしれません。
でも本当に必要なのは、助けをもとめるすべさえ失ったものへの、愛情かも。

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親がわが子をいつくしみ育てる、当然のこととして期待してよさそうなそれを、
裏切られ、ないがしろにされ、打ち捨てられた子供たちが、訴える声さえ発する
まもなく、社会からはじかれそうになったとき、18歳まで受け入れる施設
ショート・ターム12、紋切り型ではない、そこでの対応が、胸をえぐって。

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暴れたり嫌がらせしたり、手に負えない子供たちの、突き刺すような視線は、
彼らと対峙する大人たちを、値踏みしているのかも、弄んでいるのかも。
うわべだけのやさしさ、というか、マニュアルどおりの接し方では、だから、
彼らが切実に求めている、日々を生き抜いてゆくための力を、手渡せない。

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だって想像もできないですよ、この世に生まれ落ちたものの、誰にも守られず、
大切にされず、ただ利用され、虐げられるばかりな人生を、背負わされたら、
もはや、愛情というものの存在すら知ることもかなわないで、飢えた気持ちを
抱えていても、はたして自分が何に飢えているのかさえわからない、その絶望。

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誰かに傷つけられるかなしさから逃れたくて、あえて痛みに逃れようとする、
その傷跡の、言葉ではあらわせない、助けてほしい気持ちを、発露するのも
ためらってしまう、深い苦悩は、おなじ傷をもつ、おなじ気持ちを共有できる
誰かに、真剣に、体を張って、力づくで守ってもらえないと、癒せないのかも。

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たとえ肉親でなくても、愛情深く育てられることが、どれほど幸運で
すばらしいことか。愛をそそがれれば、自然に今度はその愛を、誰かに
無償のままにそそぐことができる、その、迷いが生じない、頼もしさは、
なかなか心をひらいてくれない恋人を、辛抱強く支える姿に、あらわれて。


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そこはもう、「めぐまれない子供を受け入れる施設」などではなく、
子供も大人も真剣勝負、自分のよわさと、他人の無理解と、反発とあきらめと、
誰もが、静かだったり激しかったり、命がけでたたかう場所、でもそれは、
本当は、すべてのひとがたどる人生、完結はありえない、明日を信じる場所。

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「いそがなくていい」、傷ついた相手をゆっくり見守ろうとするその言葉は、
きっと、自分をはげます言葉。幸福にはなれない、なれっこない、と
心根の奥深くに穿たれた絶望を、すこしずつすこしずつ、掘り起こして
捨てるための、おまじない。すぐでなくても、理解しあいたいと願う言葉。


シネプラザサントムーンにて2月

ショート・ターム 公式サイト
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# by habits-beignets | 2015-02-14 17:46 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 イヴ・サンローラン

Y、S、L、が絡みあった、シンボルマーク、ひと頃よく見かけました。
ファッション通でなくても、シャープでエレガンスな印象あった、ブランド。

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弱冠21歳でディオールの後継者に、けれどゴタゴタ、順調にはいかなくて、
というあたりから、当時のファッション界をぐいぐい引っ張ってゆく
立役者たち勢揃い、彼らがつるんではいちゃつく様子が、臨場感たっぷり、
つたわってきて、ベルナール・ビュフェが、カール・ラガーフェルドが。

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野望を抱きながらも、それぞれに鬱屈、誰もが一目おく才能をもちながら、
服のデザインはできても、プロデュース的な決断、交渉は苦手、というのは、
芸術家には、ありがちなことだけれど、そんなサンローランと彼を補佐する
者との関係性の重要さ、情熱的な恋愛感情などでは果たせない、繊細な作業。

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出発点は芸術、ひとりの人間の感性から、であっても、それが大衆に向かって
商業ベースにという過程には、多くの人間の思惑、手仕事が、当然かかわって、
むろん、お金も必要、ビジネスとしての成功を勝ち取る使命はあるのだけれど、
いっぽう、精神が開放される時間もなければ、センスもよどんでしまうのでは。

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遊ばせながらも、手綱を引き締める、天才的なデザイナーを、愛する気持ちと、
嫉妬する気持ち、思いのままにならない苛立ちと、それでも頼られる充実感、
一流ブランドの大番頭として、ともに立ち上げたメゾンを守り抜くことだけを
自らに課したかのような、ピエール・ベルジェの視線が、物語をほろ苦く。

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苦手なインタビューに、謙虚な姿勢を示すサンローランと、そんな彼を
咎めるベルジェとの、いざこざが、彼らの人間性を象徴しているらしく、
持てる才能を、自然な現象として受け止め、気前よくほとばしらせる天才に、
むしろ、もったいぶって価値を上げさせようとする、ビジネスマンの目。

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葛藤をくり返しながら、刹那で情熱的な恋愛感情が、憎しみもおり混ざって、
濃密で深淵な情念で結びつくほどに、きらびやかな世界のスポットライトの
外側の暗闇では、もがいて苦悩して嘆いて、はげしく反発しつつも、
離れることができない、互いを必要としている事実が、鬱陶しくもあって。

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伝統から革新へ、喝采もブーイングも、栄光も堕落も、華奢なからだで
受け止めたデザイナーが全身全霊をかたむけて表現したカタチだと思うと、
ファッションの、奥深さ、物語の気配が感じられて、装うってドラマチック。

シネプラザサントムーンにて11月

イヴ・サンローラン 公式サイト
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# by habits-beignets | 2014-11-24 23:43 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 めぐり逢わせのお弁当

インド映画といえば、歌って踊ってキラキラまばゆい、が定番ぽいですけど、
ちょっと意外な、そこでの暮らしぶりが如実につたわってくる、しっとり作品。

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インドのムンバイのお弁当事情は、日本ではちょっと想像つかないシステム、
奥さんがつくったお弁当を、プロの配達屋さんが、旦那さんの職場に届ける、
それが絶対にまちがわない、というのが評判らしいんですが、ごくごくまれに、
まちがうことも、それで、見知らぬひとの机の上に、苦心作のお弁当が。

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旦那さんと気持ちをかよわせたい、その一心でお弁当に四苦八苦の若奥さん、
上の階のおばさんからは、窓の外に調味料が、主婦たちの素朴な日常から、
まるで通勤ラッシュの、ガタガタ揺すられ運ばれるたくさんのお弁当が
行き着く先は、整然と並んだ何列ものデスク、どこか寂しげに働くおじさん。

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思いがけなく誰かの手料理をたべてしまったら、けっこうドキッとするのでは、
こしらえた側も、自分の愛の証を、まったくの他人に呑み込まれたかんじでは、
でも、ぺろっと残さず受け入れられたら、素直に救われた心持ちになるのかも、
誰かが、自分を認めてくれる、自分は誰かとつながっている、その実感。

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仕方なくの説明、挨拶から、お弁当箱は手紙を運ぶ小包めいて、円筒型の金属の
積み木みたいな、お弁当、お昼じかんを待ちきれない、挙動不審なおじさんの、
少年のような戸惑い、ときめき、閉ざされていた心の扉が、いつのまにか、
ひらかれて、ほどけてゆく表情の目に映るのは、ほのかに差し込んできた光。

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まちがっているとわかっていても、食べているのが夫ではないと知っていても、
気に入ってもらおうと、満足してもらおうと、お弁当を作りつづける奥さんは、
人知れず抱えている悲しみ、せつなさを、吐露する相手がきっと欲しくて、
やっと見つけた命綱だったのかもしれなくて、だからまちがいを修正できない。

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でも、何がまちがっていて、何が正しいのか、きっと誰もわからない、
というかたぶん、まちがいとか正しいとか、ほんとうは、そんなものはなく、
幸福を求めることを諦めないことが、どんな状況でもたいせつなのかも、
夫が冷淡だったり、家族を亡くしたり、病だったり、天涯孤独だったりでも。

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ところでインド、経済発展の影で、なにか損なわれてしまうものもありそうな、
デスクワークはちょっと不思議に旧式で、スマホの時代に奇妙な新旧混在、
それにしても、驚くべき正確さを誇るお弁当配達システムの発祥は19世紀末、
コンピュータも舌を巻く完璧さらしいんですが、ブレない精神のなせる技?

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そして物語はどこまでもたぶん続いてく、映画が終わっても人生は終わらない。

シネプラザサントムーンにて10月

めぐり逢わせのお弁当 公式サイト
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# by habits-beignets | 2014-10-31 13:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー