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映画 女王陛下のお気に入り

うわべは、美しく気高く知性的、けれど、ひと皮めくれば、無尽蔵の欲望、陰謀、

きらびやかな世界ゆえなのか、なかなかのグロテスクぶりが、妙な魅力を放って。



舞台は、18世紀のイングランド、アン女王が君臨する宮殿であるのだけれど、

豪華絢爛の貴族社会が描かれる一方で、どこか生臭く漂う、生き物の気配、

体裁をとりつくろう、政治や社交だけではなく、生活の場でもある王宮の、闇、

暗がりで、使用人も貴族も政治家も入り乱れての容赦ない死闘が、繰り返されて。

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そもそも、アン女王とレディ・サラとの、ふたりだけにしか通じない呼び名とか、

幼なじみならではの、昔話の含み笑いとか、嫌らしく、いかがわしく、怪しげで、

それが、国民の生命にもかかわる政治とも、結びついてしまうのが、恐ろしく、

だから、とつじょ現れた、サラの従妹、若いアビゲイルが、爽やかな風のように。


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ところが、この世界で生きてゆく住人は、誰しも野心と策略なしにはいられずに、

やられたら、やり返す、の徹底した反骨精神が、日常どこでもぶつかり合い、

感謝や尊敬や同情の言葉や態度も、裏があって当然、アビゲイルも言うに及ばず、

身の破滅の危険すら、顧みず、大胆で過激な身のこなしは、あまりにも鮮やかで。

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最初は、女王を意のままにあやつっているかのように振る舞う、レディ・サラの、

高慢さが、鼻について、なんとか懲らしめてやりたい気持ちに、なったけれど、

みるみる、その地位が脅かされ、不安や焦りの色が生じてくると、いささか不憫、

ほんのちょっとの純粋さや、いじらしさが、やや哀れに感じられて、せつなくも。

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女性たちの恋情、みたいにも描かれているけれど、何かを激しく欲するって、

わけわからないまま狂ってしまうことに、躊躇しないで、突き進むことかも、

むしろ、我にかえって、虚しさを覚えることが、恐ろしく、痴情さえ命づな、

平穏さや静けさは、不安や恐怖を呼び起こし、ありふれた幸福は、退屈に。

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宮殿でうごめく、それぞれが、勝ちとるべく躍起になっているのは、女王の寵愛、

彼女に愛されるかどうかが、自らの立場や生命までをも、決定づけることに、

それを知るからこそ、あっちにこっちに揺れる素ぶり、わがまま放題の女王さま、

けれど、引きこもりの、すさんだ姿には、言い知れない孤独の哀しみの、暗い影。

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17匹のうさぎを部屋に飼う異様さが、アン女王の心の傷の深さを象徴して、

本当のあたたかな愛情を、得られない境遇の、やりきれなさが、疲弊の色濃く、

呆けた、その表情を、素朴なひとりの未亡人にみせて、権力はあっても、虚しく、

だから、当たり散らすのもやむなし、当たり散らされる相手も、やむなし、と。

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ひどい振るまいも、それは当人の寂しさゆえ、と思い至ると、現実の自分を反省。

かなりエグいストーリーの映画なのだけれど、意外にも史実に即しているらしく、

びっくりの恐ろしさ、演出はしてるだろうけれど、登場人物の顛末は当たってて。

演者、とくに女性陣、素晴らしかったですね、女王様はオスカー受賞、よかった。

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シネプラザサントムーンにて2月


女王陛下のお気に入り 公式サイト


# by habits-beignets | 2019-03-09 04:09 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛

いま、自分の幸福の度合いが、じゅうぶんで何をも必要としないほどなのか、

たしかに何かが足りなくて、それを欲して求めるべきなのかって、むずかしい。

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修道院で暮らしていた孤児のソフィア、裕福な商人の中年男、コルネリスに、

嫁ぐのですが、修道院長の言葉にも表れているように、要は、就職なんですね、

おそらく、若さ、美しさ、体丈夫さ、真面目で慎み深いところを、買われて、

貧しい少女から、お屋敷での若奥さまの暮らしになって、それはありがたく。

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就職ですから、彼女には課された仕事があるわけで、むろんそれは、あとつぎ、

お家を絶やさず、財産がきちんと受け継がれることが、夫には大切な問題、

ともに暮らす夫婦ですから、互いを思いやるあたたかな愛情は、あるけれど、

しばしば男女におとずれる、狂おしい熱情は、惜しいことに欠けらもなくて。

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じっと、射ぬくほどに見つめられれば、不意打ちに、官能への扉が開かれて、

もはや、抗うことは、やはり難しく、一瞬のためらいはあっても、なのよね、

夫のやさしさに感謝して、彼へのいたわりの気持ちを、変わらず持ち続けても、

若い画家に、走りたい心と体を、欺くことができないのは、純粋で未熟だから?



先のことはわからなくても、今この瞬間の喜びと勢いで、不確かな幸福のために、

大博打を打ってしまうのは、バブルそのもの、なのかも、落ち着いて考えれば、

安心して穏やかに暮らしてゆけることの、大切さを、省みることができるのに、

彼こそすべてと、夢中になっているときには、現実の幸福を見逃してしまう。



それにしても、チューリップの美しさが、人々を狂乱の世界へと招いたなんて、

美しく希少なもののために、一瞬のうちに莫大な金が、動いたりするんですね、

そんなもの、いつかそれほどの価値がなくなる、と冷静に見通せる賢人こそ、

たよるべき相手なのに、どこかつまらなく感じてしまったりは、たしかに。



神聖な場所の修道院でも、チューリップ栽培に関わっていたり、まるで商売人、

17世紀のオランダの風俗が、生き生きと描かれて、富める者も貧しい者も、

ごった返しの様相、ちょっとしたチャンスで、大金持ちになれる時代だったの?

というか、いまの時代と、あまり変わらないかもですね、投機に群がる人たち。


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フェルメールの絵の世界を描きたい、と創られた作品らしく、絵画的な色彩、

特に、やはりブルーの輝きがまぶしく、当時のファッションも堪能できて。

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いろいろの行き違いや、策略やら、失態やらの果てに、それぞれの立場の人たち、

悲しかったり悔しかったり憤ったりはあったけれど、みな、幸福のほのかな光を、

見つけられたような、物語の結びに、ほっと暖かく微笑ましい気持ちに。

失意のどん底から這い上がるにしても、博打で幸せはつかめないんですね。


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シネプラザサントムーンにて1月


チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 公式サイト


# by habits-beignets | 2019-01-15 14:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 日日是好日

もう、年の瀬、あっという間に一年がすぎてしまうことに、呆然と、少し焦って、

何もしなかった、何もできなかった、いつも悲しくなるけれど、日々はきっと。

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茶道って、側から眺めてるだけでは、ちょっと面倒くさそうな、礼儀作法の様式美、

そんな印象でもありそうだけれど、一歩その道に足を踏み入れると、世界の奥深さ、

思慮深さに、びっくり、理屈は何も語られなくとも、根拠は何も示されなくとも、

ただ、習ったとおりの所作を、何度も何度も、くり返すうちに、体得できる何かが。

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かたちをなぞることから、身体に、思考に、じわじわ染み込んでくる、想念とか、

そこから派生しての知恵とか、悟りとか、気づきとか、同じものを見たり聞いたり、

しているだけなのに、目の前に存在しているものたちが、突如ちがって映ってくる、

ここちよい驚きは、平凡な毎日をくり返すだけの、これからにも、希望の気配が。

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道に迷っていた20歳の大学生の女の子が、たまたま茶道と出合い、困惑しつつも、

お菓子の美味しさ、お点前の面白さに興味を覚えるうち、いささか中毒気味に、

まるで、茶室という空間に癒しを求めるよう通いつづけるさまは、健気で、

愛らしく、いくらか生真面目で不器用だった彼女の、心持ちも徐々にしなやかに。

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就職が難しかったり、恋でつまずいたり、現実社会で敷かれたレールを意識しては、

自分の存在の頼りなさにしじゅう鬱鬱、誰かと比べては不甲斐なさを思わず嘆いて、

それでも、しがみつく思いでお稽古を続ければ、移りゆく季節を、過ぎゆく年月を、

愛おしむ気持ちが、知らず知らずのうちに、心の奥底から溢れ、湧きあがって。

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いまの社会で暮らしていると、なかなか、時のながれに、想いを寄せる機会って、

ないかもしれない、やるべきこと、やらなければいけないことのおびただしさに、

心を奪われて、目のまえに広がっている空間を、じっと見つめることなど、

思いつかず省いて、美しく大切なものの在り処を、見つけられなくなってしまう。

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美味しいお茶でもてなすこと、こころよさをその場にいる皆で共有すること、

かすかな、湯の音、水の音、を聞き分けて、生まれてきたこの世界を体感すること、

そんな日々を、重ねてゆくことの、うれしさを知って、茶事をいつくしむ彼女の、

おだやかな生きざまが、すがすがしく、たしかにお茶って、そんな魅力。

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厳しいことや難しいことをいっさい言わないで、若い女の子たちを導く先生の、

鷹揚な奥ゆかしさが、茶道の世界観を体現しているかのようで、樹木希林さんが。

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シネプラザサントムーンにて12月


日日是好日 公式サイト


# by habits-beignets | 2018-12-31 16:50 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 グッバイ ・ゴダール!

ジャン=リュック・ゴダール、ヌーベルバーグの旗手、ということであまりに有名、

そう、作品はいかにも洗練されて芸術的、というか、いささか妙ちきりんぽかったり、

では、恋人としての彼は、いったいどんな? それが、圧倒されてちょっと切なく。


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ゴダールの二度目の妻、アンヌ・ヴィアゼムスキーの、自伝的小説が原作とのこと、

すでにあまりに有名、ブレイクしてた映画監督ですもの、まだ19才の彼女が、

心酔しきってしまうのも無理なさそう、いちいち詩的っぽい受け答えもオシャレ、

偉大な作家モーリアックを祖父にもつ、哲学科の学生だった彼女には、きっと刺激的。

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でも、まあ、恋愛の悲しさ、始まりの頃は、すべてが美しく輝いて、祝福の気配でも、

慣れ親しんでゆくにしたがって、魅力が難点に、刺激が煩わしさに、教えが侮辱に、

少女から大人への急成長には、彼との関わりが、強く作用していたかもしれないのに、

皮肉だけれど、だからこそ、あれほど尊敬していた恋人が、次第に幼稚なへんくつに。

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知り合った頃からとは、お互いの立場が、くるくる入れ替わるってよくありそう、

無名だった少女が、あっという間にその魅力と知性を開花させ、自分の力で輝いて、

もはや彼なしでも、どこへでも立って歩いていけるように、なってしまえば、

ことあるごとに疑問や不満、嫉妬とか焦燥あるいは絶望とか、たとえ愛のせいでも。

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それにしても、いつもゴダールの隣に寄り添うアンヌの、愛らしさといったら!

彼に守られていることの気分のよさプンプン、で、彼女を持ち歩けるゴダールも、

いかにも誇らしそう、バービー人形さながらの恋人ですもの、ブラウスやセーター、

パリ流行ファッションの、キュートさ、ミニのプリーツからほっそり伸びた脚。

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部屋の調度品なども、どれもオシャレでカッコよく、形も色も美しいんですよね、

ポイントの赤が、ことあるごとに効いていて、ていうか、実はこれ、ゴダール映画に

捧げるための映画、というつくり、監督のミシェル・アザナヴィシウスが、いかに、

映画を愛しているか、監督ゴダールに敬意を抱いているか、が伝わってくる演出が。

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いかにもゴダールのミューズでありそうなセリフ、その視線、笑っちゃうシーンも、

気がきいて、ことあるごとの仲間での議論やら揉め事も、どこか滑稽で微笑ましく、

血気盛んに、革命運動に身を投じる姿も、単にインテリの、自己顕示にも見えて、

そして終盤、もはややけっぱちなのか、孤独に革命に突っ走る巨匠の、陳腐な姿が。

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どんなに地位や名誉のある、おじさまでも、正体は、甘ったれ駄々っ子と同じなのかも、

でも、そこがまた、とんがった知性や魅力に、反映されてしまったりなのかも。

つきあい続けるには、かなり忍耐が必要、それでも、輝けた時間は、尊いだろうけど。

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シネプラザサントムーンにて10月


グッバイ ・ゴダール 公式サイト



# by habits-beignets | 2018-11-05 16:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 万引き家族

なんともいえないタイトルですよね、いかにもダーティーな世界っぽく。

けれど、そこには、やさしさが、よろこびが、微笑ましさが、確実にあって。


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いかにも無邪気な少年が、でも、その眼光は、異様に鋭く、口はぎゅっと固く結び、

たいせつな任務を、着実に遂行、おまじないめいたルーチンも、まるで神聖な祈り、

家族の命運を、一手に引き受けてでもいるかのような振る舞いは、もはやけなげで、

咎めることすらためらわれて、それ、犯罪だよ、と諭すのは、野暮なようにも。

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だって、怠けて遊んで、誰かを傷つけようとしているわけではないんですもの、

少年の家族は、互いにいたわり、寄り添い、大人はきちんと働いてだっている、

なのに、暮らしてゆくには足りないのだ、生きてゆくのに食べたり、装ったり、

ときには寛いで、健やかな身体と心を保つのに、わずかな賃金ではまかなえない。


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悪いことだっていうのは承知だけれど、でも、それなりに真剣に生きているのに、

たかが杓子定規の善悪論に、どれほどの価値があるっていうの?

盗みは悪いっていうけれど、たとえばその、店に並んでるものって、誰のもの?

自分の子供を、大切にできない親がいる世の中の、何を信じればいいっていうの?

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欲しいもの、というよりも、本当に必要なものだけを、きちんと見極めて、

ときには、人生をかける覚悟で、奪おうとする、彼らの生き方は、むしろ純粋で、

うわべだけを取りつくろった社会の、窪地のような一軒家は、雑然としていても、

とても豊か、すぐ隣にいつも誰かがくっついて、鬱陶しいけど、みな愛しくて。

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それでも、いつまでも家の中だけで生きてゆけるわけもなくて、少年も、少女も、

外の世界の誰かと、関わる機会はやっぱりどうしても、だってまだ、何も知らない、

いろんな人の、いろんな気持ちや、いろんな人生、想像したり、わかってみたくて、

ひろい世界には、もっと自分の味方がいるかも、正しい道が、ほかにあるのかも。

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大人になるまえの、避けて通れない、疑問ばかりの日々、痛くても、悲しくても、

本当のことに、立ち向かってゆきたい抑えられない欲求があって、我慢できなくて、

それまで信じていた世界を、いっそ壊してしまいたくなって、どこか、別の場所で、

自分ひとりの力で、やっていけるか、飛び出してしまいたくなるのかも。


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家族ってたぶん、そんな状況でも、離れても、どこかで強くつながっているものでは、

つながり方は、それぞれだろうけれど、ふと懐かしく、ときにそばに寄り添って、

たとえ世間では、許されなくても、互いの気持ちを思いやる習慣は、何よりも大事で、

法律とか、常識とか、固定観念では、とらえられない、生き物めいた集団なのでは。



貧しくても、余裕がなくても、女の子が可愛くみえるように、みなであれこれ、

微笑ましく、おしゃれ心って、やさしさと通じる、大切なもののような気配。


シネプラザサントムーンにて8月


万引き家族 公式サイト


# by habits-beignets | 2018-08-12 19:35 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー