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映画 ブラック・スワン

情熱と狂気のあわいをさまよう、映像世界に引き込まれるうち、
気持ちがおののいて、逃げ出したくなってしまうような。

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頂点にたつ、ということは、どの世界においても、ひとつの目標
なんでしょうけれど、有名なバレエのプリマの座を射止め、さらに、
それを見事に演じきる、ということのプレッシャーは、想像を絶する
凄まじさなのだということが、主人公ニナの表情から伝わってきます。

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黒鳥に備わってしかるべき、奔放さと妖婉さは、演技でまとうことが
できるものなどではなく、本来の自分が秘めている激しさを開放してこそ
表現できるものなのだと、監督から責められて苦悩するうち、黒鳥そのもの
のような、ライバルの登場もあいまって、精神的に追いつめられるのですが。

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窮鼠猫を噛む、というのはこのことなのか、これまでの抑制が強かったほど
抱えていた闇が深かったのでは、と思われるような、ほとばしる欲情に
身を委ね始めるニナの変貌ぶりは、いささか恐ろしく、それはたとえば、
鏡に映る自分が、無意識のうちに勝手にうごめくぐらいの、不気味さで。

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けれど、もしかしたら、これは特別な誰かの物語なのではなく、私たちにも
いつ起こるかもしれないことなのでは、という気が、夢の世界にいるような
不条理劇を見せられているうちに、じわじわ感じられてきました。
ふとした拍子に現われる、いつもと違う無意識下の自分に、ハッとする瞬間。

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官能の世界に身をおくことは、痛みをともなうことなのでしょうか。
まさに自分の殻を破るそのままに、血がにじんで流れる描写は、見ている
こちらも、神経がちぢみあがってしまうほどで、監督がほのめかした
「自分の道を阻む自分」との戦いの容赦ない攻撃に、少し震え上がりました。

シネプラザサントムーンにて、5月

ブラック・スワン 公式サイト

by habits-beignets | 2011-05-19 22:54 | シネマのこと | Comments(0)

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