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映画 桃(タオ)さんのしあわせ

いつも、あたりまえに、そばに居てくれたひとが、倒れたときの戸惑い。
それは、自分の存在価値さえ、あやうくおもわれるような頼りなさ。

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いつかはそうなるときがくる、と頭ではわかっているつもりでも、
いざその兆しが表れたときの、動揺、日々の生活に、さざ波がたって、
そのうねりの気配に、つねに怯えていることの、ちくちくとした痛み、
桃さんと、彼女に育てられた青年の、せつない心の交流が、静かに。

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物語はゆっくり、桃さんのあぶなっかしい足取りのように、たじろぎながら
それでも、確実にまえへと進み、素朴な日常の積み重ねではあるのだけれど、
避けられない「そのとき」にちかづいて、多忙な身にもかかわらず、躊躇なく
介護を引き受けた青年の、いたわりとやさしさに包まれながら、穏やかに。

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老人ホームでの、戸惑いながらもなじんでゆく、桃さんと青年、楽しみな、
ときどきのお出かけ、最初はその場所にそぐわないほど元気にみえていた、
おしゃれをすると若い頃の美人ぶりを彷彿とさせていた桃さんも、舞台が
場面転換を繰り返すうち、着実によわってゆく様子が、とてもリアルで。

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とくにそれほど悲観したり苦悩したりは、してみせなくても、それぞれの、
人生でのわかれに立ち向かう、一瞬一瞬をたいせつに、笑顔と思いやりを
かき集めて、悲しみとたたかうさまが、心を揺さぶってきて。ちょっと
ワルなおじいさんにも、寛大なのは、弾けるときの大切さがわかってるから?

さまざまな事情を抱えているひとたちの、さりげない心の交流が描かれながら、
ささやかな出来事を、いつくしむことの尊さに、思いは引き寄せられ。
絶やさない笑顔の、その合間の、悲しみが、冷静さのなかにも、じわり滲んで、
感情的な台詞はいっさい排されても、仕方ないのか、嘆きが聞こえるよう。

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時の流れに逆らえず、身内が弱ってゆくのを見守る機会を、もつようになると、
ほんとうに胸に突き刺さってくるような、お話でした。どうにかしたいのに、
諦めるしかないと、覚悟することの、からだが冷たくなるような、脱力感。
恥ずかしながら、途中から、胸の奥底で静かに嗚咽。

アンディ・ラウの素朴な好青年ぶりが、とってもすばらしい。

ジョイランドシネマ沼津にて、4月

桃(タオ)さんのしあわせ 公式サイト

by habits-beignets | 2013-04-02 19:34 | シネマのこと | Comments(0)

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