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映画 拝啓、愛しています

もうずっと、涙でちゃって。歳のせいかたしかに涙腺よわいですが。
老いても、恋って、愛って、ピュアで一途でほんとうにうつくしい。

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韓国のノリっていうんでしょうか、耳に心地よい恋の歌がさいしょから
ながれるんですけど、登場人物はおじいさんとおばあさん、最初はちょっと
どうなのってかんじがなきにしもあらずなんですけど、彼らの表情を見ている
うちに、なんの違和感もなく、だってときめきや恥じらいが可愛いのなんの。

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待ち合わせ場所でのそわそわ、携帯とかないのねそうなのね、かっこよく
見せたくて、ごまかしたり、怒ったり、やってることが少年少女、小石で窓を
たたいたり、ちょっとしたことで焼きもちやいたりそして、思いがけない言葉や
行為で、いちいち感動して泣いたりして、そういうきもちが初々しくて。

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けれどそんな何気ないことが、つい涙をさそうのは、彼らの背景がけっして
あかるいものばかりではないから。いろいろの、つらかったり苦しかったり
悲しかったりの、悔いや絶望や諦めが、のこされた人生をつい悲観してしまい
がちに、そこにやっと差し込んだ光が、どんなに輝いて見えたことか。

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家にとじこめるしかなくなってしまった妻だけれど、いないと自分は生きて
いけないという夫の、つねに微笑をたたえているような辛抱強い愛情と、
彼ら夫婦をいたわるように崇めるようにみつめる、いま巡り会ってこころが
通いはじめたよろこびで、寄り添い始めたカップルの、戸惑いながらの交流。

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バイクで二人乗り、海へのドライブ、やさしさをわけあう時間のいとおしさ、
薄やみの夜明けを、けたたましい音をたてて坂を走る牛乳配達のバイクと、
その音を部屋できいているひとたちの、言葉にしなくても気持ちがつながる
ほほえましい街の風景、人知れず、相手のことをいつも気づかう、いじらしさ。

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ともかく、牛乳配達のおじいさんの表情がもうキュートで、怒ってばかりの
登場だったけれど、ひとたび気持ちがやわらぐと、馬鹿みたいに親切で
恋をしている少年そのものの、くるくる変わる目の動きに、おかしさがこみ
あげて、だからラストの、門柱のシーンがこころにずーんと。

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けれど現実は死にすこしずつでも近づいていて、誰かを失いたくないと願う
切実さが、かなしみとともにつたわって。でも結ばれたこころはきっと、
いつまでもそのまま、そんなささやかな希望の気配がかんじられて。

ジョイランドシネマ沼津にて、5月

拝啓、愛しています 公式サイト

by habits-beignets | 2013-05-15 01:27 | シネマのこと | Comments(0)

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