映画 それでも夜は明ける
2014年 06月 03日
実話がもとになっているということなのですけど、怖いですね、いきなり拉致。
自分の身は安泰だと、世の中を信頼していたのに、裏切られた絶望感。
奴隷制が南部では認められていた時代に、北部では裕福な黒人が存在していた
という事実が、ちょっと異様な気がしたのですが、暮らす土地によって文化とか
慣習とか、本当にちがうんですね、自分を守ってくれている社会から、一歩でも
外へ出てしまったら、誰も助けてくれない、怖い場所だということが如実に。
最初はそれが信じられない、すぐに自分の言い分が認められるだろう、と希望を
もっていたのが、じきに、所有され、虐げられる事実を受け入れざるをえず、
その場その場で、ありったけの知恵をしぼって、生き延びることのみ執心して、
じっと待ち続けながら、稀有なチャンスをつかみとろうとする、その痛ましさ。
自己の資質も経歴も隠して暮らす、孤独感と閉塞感、意思を表明することも
許されず、暴力も甘んじて受けなければならない境遇は怖いけれど、じつは
悪意だけではなく、正義感や憐憫の気遣いも存在するのに、強きもの、または、
富の力には逆らえず、それぞれの本心が反故にされる、救いのない怖さ。
誰か、ひとりでも、白人でも黒人でも、それがおかしいと叫ぶ人間がいれば、
事態はあっというまに打開されそうなのに、暴力に屈する世界、金銭でなんでも
手に入るという幻想が妄信されつつある社会、その気味悪さをかんじるとき、
これはこの時代、この地方だけの問題ではないのでは、という気もしてきて。
奴隷たちが強いられる労働も、綿をつむ作業などそれそのものは、生きてゆく
生業として健全なのに、問題はそのしんどさを誰かに理不尽におしつけること、
それは誰しも犯しがちな、あやまちなのでは。他者を利用したい、他者より
優位に立ちたい、その堕落した欲求が、歯止めを失ったとき、不条理な世界が。
他者を虐げることで、自分の存在価値をたしかめ、虐げられた者たちの復讐を
おそれることから、ますますその暴力の手をゆるめることができない、それは
過去の奴隷制だけではなく、いまでもあちこちで行われているホロコースト、
そこで、いつか自由になれると希望をもちつづけて、生き残ることの困難さ。
自分を守るのには、自分ひとりの力では難しい、ひとりでも誰か他人の
良心に味方してもらえなければ難しい、その良心の存在を恐れずに信じる
ことこそが、どんなに追いつめられても、最期には突破口になる物語が。
シネプラザサントムーンにて5月
それでも夜は明ける 公式サイト
自分の身は安泰だと、世の中を信頼していたのに、裏切られた絶望感。
奴隷制が南部では認められていた時代に、北部では裕福な黒人が存在していた
という事実が、ちょっと異様な気がしたのですが、暮らす土地によって文化とか
慣習とか、本当にちがうんですね、自分を守ってくれている社会から、一歩でも
外へ出てしまったら、誰も助けてくれない、怖い場所だということが如実に。
最初はそれが信じられない、すぐに自分の言い分が認められるだろう、と希望を
もっていたのが、じきに、所有され、虐げられる事実を受け入れざるをえず、
その場その場で、ありったけの知恵をしぼって、生き延びることのみ執心して、
じっと待ち続けながら、稀有なチャンスをつかみとろうとする、その痛ましさ。
自己の資質も経歴も隠して暮らす、孤独感と閉塞感、意思を表明することも
許されず、暴力も甘んじて受けなければならない境遇は怖いけれど、じつは
悪意だけではなく、正義感や憐憫の気遣いも存在するのに、強きもの、または、
富の力には逆らえず、それぞれの本心が反故にされる、救いのない怖さ。
誰か、ひとりでも、白人でも黒人でも、それがおかしいと叫ぶ人間がいれば、
事態はあっというまに打開されそうなのに、暴力に屈する世界、金銭でなんでも
手に入るという幻想が妄信されつつある社会、その気味悪さをかんじるとき、
これはこの時代、この地方だけの問題ではないのでは、という気もしてきて。
奴隷たちが強いられる労働も、綿をつむ作業などそれそのものは、生きてゆく
生業として健全なのに、問題はそのしんどさを誰かに理不尽におしつけること、
それは誰しも犯しがちな、あやまちなのでは。他者を利用したい、他者より
優位に立ちたい、その堕落した欲求が、歯止めを失ったとき、不条理な世界が。
他者を虐げることで、自分の存在価値をたしかめ、虐げられた者たちの復讐を
おそれることから、ますますその暴力の手をゆるめることができない、それは
過去の奴隷制だけではなく、いまでもあちこちで行われているホロコースト、
そこで、いつか自由になれると希望をもちつづけて、生き残ることの困難さ。
自分を守るのには、自分ひとりの力では難しい、ひとりでも誰か他人の
良心に味方してもらえなければ難しい、その良心の存在を恐れずに信じる
ことこそが、どんなに追いつめられても、最期には突破口になる物語が。
シネプラザサントムーンにて5月
それでも夜は明ける 公式サイト
by habits-beignets | 2014-06-03 22:25 | シネマのこと | Comments(0)