映画 めぐり逢わせのお弁当
2014年 10月 31日
インド映画といえば、歌って踊ってキラキラまばゆい、が定番ぽいですけど、
ちょっと意外な、そこでの暮らしぶりが如実につたわってくる、しっとり作品。
インドのムンバイのお弁当事情は、日本ではちょっと想像つかないシステム、
奥さんがつくったお弁当を、プロの配達屋さんが、旦那さんの職場に届ける、
それが絶対にまちがわない、というのが評判らしいんですが、ごくごくまれに、
まちがうことも、それで、見知らぬひとの机の上に、苦心作のお弁当が。
旦那さんと気持ちをかよわせたい、その一心でお弁当に四苦八苦の若奥さん、
上の階のおばさんからは、窓の外に調味料が、主婦たちの素朴な日常から、
まるで通勤ラッシュの、ガタガタ揺すられ運ばれるたくさんのお弁当が
行き着く先は、整然と並んだ何列ものデスク、どこか寂しげに働くおじさん。
思いがけなく誰かの手料理をたべてしまったら、けっこうドキッとするのでは、
こしらえた側も、自分の愛の証を、まったくの他人に呑み込まれたかんじでは、
でも、ぺろっと残さず受け入れられたら、素直に救われた心持ちになるのかも、
誰かが、自分を認めてくれる、自分は誰かとつながっている、その実感。
仕方なくの説明、挨拶から、お弁当箱は手紙を運ぶ小包めいて、円筒型の金属の
積み木みたいな、お弁当、お昼じかんを待ちきれない、挙動不審なおじさんの、
少年のような戸惑い、ときめき、閉ざされていた心の扉が、いつのまにか、
ひらかれて、ほどけてゆく表情の目に映るのは、ほのかに差し込んできた光。
まちがっているとわかっていても、食べているのが夫ではないと知っていても、
気に入ってもらおうと、満足してもらおうと、お弁当を作りつづける奥さんは、
人知れず抱えている悲しみ、せつなさを、吐露する相手がきっと欲しくて、
やっと見つけた命綱だったのかもしれなくて、だからまちがいを修正できない。
でも、何がまちがっていて、何が正しいのか、きっと誰もわからない、
というかたぶん、まちがいとか正しいとか、ほんとうは、そんなものはなく、
幸福を求めることを諦めないことが、どんな状況でもたいせつなのかも、
夫が冷淡だったり、家族を亡くしたり、病だったり、天涯孤独だったりでも。
ところでインド、経済発展の影で、なにか損なわれてしまうものもありそうな、
デスクワークはちょっと不思議に旧式で、スマホの時代に奇妙な新旧混在、
それにしても、驚くべき正確さを誇るお弁当配達システムの発祥は19世紀末、
コンピュータも舌を巻く完璧さらしいんですが、ブレない精神のなせる技?
そして物語はどこまでもたぶん続いてく、映画が終わっても人生は終わらない。
シネプラザサントムーンにて10月
めぐり逢わせのお弁当 公式サイト
ちょっと意外な、そこでの暮らしぶりが如実につたわってくる、しっとり作品。
インドのムンバイのお弁当事情は、日本ではちょっと想像つかないシステム、
奥さんがつくったお弁当を、プロの配達屋さんが、旦那さんの職場に届ける、
それが絶対にまちがわない、というのが評判らしいんですが、ごくごくまれに、
まちがうことも、それで、見知らぬひとの机の上に、苦心作のお弁当が。
旦那さんと気持ちをかよわせたい、その一心でお弁当に四苦八苦の若奥さん、
上の階のおばさんからは、窓の外に調味料が、主婦たちの素朴な日常から、
まるで通勤ラッシュの、ガタガタ揺すられ運ばれるたくさんのお弁当が
行き着く先は、整然と並んだ何列ものデスク、どこか寂しげに働くおじさん。
思いがけなく誰かの手料理をたべてしまったら、けっこうドキッとするのでは、
こしらえた側も、自分の愛の証を、まったくの他人に呑み込まれたかんじでは、
でも、ぺろっと残さず受け入れられたら、素直に救われた心持ちになるのかも、
誰かが、自分を認めてくれる、自分は誰かとつながっている、その実感。
仕方なくの説明、挨拶から、お弁当箱は手紙を運ぶ小包めいて、円筒型の金属の
積み木みたいな、お弁当、お昼じかんを待ちきれない、挙動不審なおじさんの、
少年のような戸惑い、ときめき、閉ざされていた心の扉が、いつのまにか、
ひらかれて、ほどけてゆく表情の目に映るのは、ほのかに差し込んできた光。
まちがっているとわかっていても、食べているのが夫ではないと知っていても、
気に入ってもらおうと、満足してもらおうと、お弁当を作りつづける奥さんは、
人知れず抱えている悲しみ、せつなさを、吐露する相手がきっと欲しくて、
やっと見つけた命綱だったのかもしれなくて、だからまちがいを修正できない。
でも、何がまちがっていて、何が正しいのか、きっと誰もわからない、
というかたぶん、まちがいとか正しいとか、ほんとうは、そんなものはなく、
幸福を求めることを諦めないことが、どんな状況でもたいせつなのかも、
夫が冷淡だったり、家族を亡くしたり、病だったり、天涯孤独だったりでも。
ところでインド、経済発展の影で、なにか損なわれてしまうものもありそうな、
デスクワークはちょっと不思議に旧式で、スマホの時代に奇妙な新旧混在、
それにしても、驚くべき正確さを誇るお弁当配達システムの発祥は19世紀末、
コンピュータも舌を巻く完璧さらしいんですが、ブレない精神のなせる技?
そして物語はどこまでもたぶん続いてく、映画が終わっても人生は終わらない。
シネプラザサントムーンにて10月
めぐり逢わせのお弁当 公式サイト
by habits-beignets | 2014-10-31 13:58 | シネマのこと | Comments(0)