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映画 ショート・ターム

助けを求められたときに、助けてあげるのは案外かんたんかもしれません。
でも本当に必要なのは、助けをもとめるすべさえ失ったものへの、愛情かも。

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親がわが子をいつくしみ育てる、当然のこととして期待してよさそうなそれを、
裏切られ、ないがしろにされ、打ち捨てられた子供たちが、訴える声さえ発する
まもなく、社会からはじかれそうになったとき、18歳まで受け入れる施設
ショート・ターム12、紋切り型ではない、そこでの対応が、胸をえぐって。

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暴れたり嫌がらせしたり、手に負えない子供たちの、突き刺すような視線は、
彼らと対峙する大人たちを、値踏みしているのかも、弄んでいるのかも。
うわべだけのやさしさ、というか、マニュアルどおりの接し方では、だから、
彼らが切実に求めている、日々を生き抜いてゆくための力を、手渡せない。

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だって想像もできないですよ、この世に生まれ落ちたものの、誰にも守られず、
大切にされず、ただ利用され、虐げられるばかりな人生を、背負わされたら、
もはや、愛情というものの存在すら知ることもかなわないで、飢えた気持ちを
抱えていても、はたして自分が何に飢えているのかさえわからない、その絶望。

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誰かに傷つけられるかなしさから逃れたくて、あえて痛みに逃れようとする、
その傷跡の、言葉ではあらわせない、助けてほしい気持ちを、発露するのも
ためらってしまう、深い苦悩は、おなじ傷をもつ、おなじ気持ちを共有できる
誰かに、真剣に、体を張って、力づくで守ってもらえないと、癒せないのかも。

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たとえ肉親でなくても、愛情深く育てられることが、どれほど幸運で
すばらしいことか。愛をそそがれれば、自然に今度はその愛を、誰かに
無償のままにそそぐことができる、その、迷いが生じない、頼もしさは、
なかなか心をひらいてくれない恋人を、辛抱強く支える姿に、あらわれて。


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そこはもう、「めぐまれない子供を受け入れる施設」などではなく、
子供も大人も真剣勝負、自分のよわさと、他人の無理解と、反発とあきらめと、
誰もが、静かだったり激しかったり、命がけでたたかう場所、でもそれは、
本当は、すべてのひとがたどる人生、完結はありえない、明日を信じる場所。

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「いそがなくていい」、傷ついた相手をゆっくり見守ろうとするその言葉は、
きっと、自分をはげます言葉。幸福にはなれない、なれっこない、と
心根の奥深くに穿たれた絶望を、すこしずつすこしずつ、掘り起こして
捨てるための、おまじない。すぐでなくても、理解しあいたいと願う言葉。


シネプラザサントムーンにて2月

ショート・ターム 公式サイト

by habits-beignets | 2015-02-14 17:46 | シネマのこと | Comments(0)

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