映画 おみおくりの作法
2015年 04月 14日
人生のいくつかの過程で、さまざまな出会いや事件にいろどられても、
そのおわりの瞬間は、たったひとり、誰かに見守れるとはかぎらない。
誰にも知られることなく、ひっそり亡くなっていたひとを弔うことに、
淡々と、粘り強く時間をかける、民生委員の姿は、口数すくないながらも、
丁寧な仕事ぶりには、なみなみならぬ情熱が感じられて、「調査終了」の
瞬間に、そっとはがす故人の写真の向こう側に、ドラマを見ているよう。
きっと見知らぬ誰かのためになっていると、たぶん信じてきたのでしょうに、
誰にも評価されないまま、知らされた場所は、自分の住まいのすぐ向かい、
そこにどんな住人がいたかなんて、思いもおよばなかったのに、
足を踏み入れた部屋には、生前の暮らしぶりが、ありありと残されて。
憑かれたように、もはや職務ともいえない熱心さで、故人の人生をさかのぼり、
彼の過去に関係したひとびとを探し、訪ねるのは、自らの人生をいつのまにか
重ねているのかも、まったくタイプのちがう人だったのに、そのやるせなさ、
せつなさの思いが押し寄せて、それを掬いとってあげたくなったのかも。
そういえば、「調査終了」のファイルからはずした写真の故人たちは、
民生委員個人の記録に移されるのだけれど、そうしてできたアルバムは、
彼自身の過去を照らす、まるで親しい知り合いのよう、生前は知ることも
なかったひとたちを、彼は友として、いたわって慈しんで、敬愛する。
それはまさしく、「作法」なのかも、たとえひとりの簡単な食事でも、
テーブルをきちんと整え、姿勢をただして、ナイフフォークをゆっくり使う、
ささやかな時間でも、粗末にあつかわない、人生の一瞬一瞬を、愛おしみ、
あきらめず、まじめに、静かに立ち向かう、行き先のわからない一人旅。
見返りをもとめることなく、つましく暮らしていた身が、故人の人生に
寄り添うことで、あたらしい世界がひらかれて、ちいさな大冒険、愉しみ、
希望のきれはしに、瞳は輝いて、たとえ他人にはつまらない人生にしか
見えなくても、じつは真摯に戦った彼の魂は、たくさんのひとにつながって。
電車での大冒険、車窓の進行方向が、シャレのよう。
終始、自らの過去を語らないままの主人公が、いい感じです。
シネプラザサントムーンにて4月
おみおくりの作法 公式サイト
そのおわりの瞬間は、たったひとり、誰かに見守れるとはかぎらない。
誰にも知られることなく、ひっそり亡くなっていたひとを弔うことに、
淡々と、粘り強く時間をかける、民生委員の姿は、口数すくないながらも、
丁寧な仕事ぶりには、なみなみならぬ情熱が感じられて、「調査終了」の
瞬間に、そっとはがす故人の写真の向こう側に、ドラマを見ているよう。
きっと見知らぬ誰かのためになっていると、たぶん信じてきたのでしょうに、
誰にも評価されないまま、知らされた場所は、自分の住まいのすぐ向かい、
そこにどんな住人がいたかなんて、思いもおよばなかったのに、
足を踏み入れた部屋には、生前の暮らしぶりが、ありありと残されて。
憑かれたように、もはや職務ともいえない熱心さで、故人の人生をさかのぼり、
彼の過去に関係したひとびとを探し、訪ねるのは、自らの人生をいつのまにか
重ねているのかも、まったくタイプのちがう人だったのに、そのやるせなさ、
せつなさの思いが押し寄せて、それを掬いとってあげたくなったのかも。
そういえば、「調査終了」のファイルからはずした写真の故人たちは、
民生委員個人の記録に移されるのだけれど、そうしてできたアルバムは、
彼自身の過去を照らす、まるで親しい知り合いのよう、生前は知ることも
なかったひとたちを、彼は友として、いたわって慈しんで、敬愛する。
それはまさしく、「作法」なのかも、たとえひとりの簡単な食事でも、
テーブルをきちんと整え、姿勢をただして、ナイフフォークをゆっくり使う、
ささやかな時間でも、粗末にあつかわない、人生の一瞬一瞬を、愛おしみ、
あきらめず、まじめに、静かに立ち向かう、行き先のわからない一人旅。
見返りをもとめることなく、つましく暮らしていた身が、故人の人生に
寄り添うことで、あたらしい世界がひらかれて、ちいさな大冒険、愉しみ、
希望のきれはしに、瞳は輝いて、たとえ他人にはつまらない人生にしか
見えなくても、じつは真摯に戦った彼の魂は、たくさんのひとにつながって。
電車での大冒険、車窓の進行方向が、シャレのよう。
終始、自らの過去を語らないままの主人公が、いい感じです。
シネプラザサントムーンにて4月
おみおくりの作法 公式サイト
by habits-beignets | 2015-04-14 18:08 | シネマのこと | Comments(0)