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映画 アリスのままで

病気って、病気そのものも嫌ですけれど、それを恐れる気持ちの暗がりが、
なんともいえないですよね、不安で、かなしくて、追いつめられるかんじで。

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家族の愛情につつまれて、実績ある仕事にもめぐまれて、けれど突然、
それらの世界と自分とをつなぐ、記憶というくさびが、抜けゆくという宣告、
確実に、進行する、アルツハイマー病を抱えてしまったという現実を
突きつけられたら、いまが充実しているひとほど、絶望してしまうのでは。

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自分を大切に思うからこその、日々のランニングの最中、50歳のアリスは、
職場であるキャンパスで、恐怖感におそわれるのだけれど、すがるものさえ
見つけられなくなりそうな、自分の状況を、瞬時に理解してしまったようで、
才気あふれる女性だからこそ、きっと冷静に事実を受け止めようと、でも混乱。

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恐怖から逃れたくて、自ら診察に出向き、苦しみながら家族にも打ち明けて、
それでも無慈悲にくだされた診断を、正面から受け入れる姿勢は、凛々しく、
けれど瞬間瞬間で、はげしく揺らぐ。平静を保とうと笑顔でやりすごそうと
自分を客観視しようと絶えず張りつめている糸が、切れそうになって崩れて。

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知性から、自分をコントロールしようとするんですね、侵されてゆく運命を
認めて、社会とのつながりを失ってゆく自分を厳しく律しようと、問いを発し、
答えを探り、もしもその術をなくしてしまったときの処遇まで、決めておく。
でも、かなしいことに、病がその想定の枠をはみ出すことまで、考えられない。

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混沌の世界におちてゆくアリスの、ぶれる気持ちも、痛々しいけれど、
それをただ見つめて支えるしかない、家族たちの、迷いや戸惑い、あきらめが、
せつなくて、妻として母としておよそ完璧だったのが、みるみる頼りなく、
不穏な世界に迷い込んでしまうのを、追いかけることのできない苛立ち。

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けれど、たとえ物事や出来事のなにもかもを忘れてしまっても、感情、感覚は、
いつまでも残っているらしく、それが希望のような救いのような。ここちよさ、
あたたかさ、愛おしさこそが、じつは誰かとの強い絆で、記憶の明瞭な輪郭が、
ぼんやり滲んでゆくだけなのだとすれば、それも幸福のひとつの形なのかも。

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アリスのスピーチの迫力、説得力に、娘とのやりとりのあとの逡巡の気配、
ジュリアン・ムーアはいつもながらの素晴らしさ、オスカーはいまさらの感。

アリスのままで 公式サイト

シネプラザサントムーンにて9月

by habits-beignets | 2015-09-11 21:37 | シネマのこと | Comments(0)

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