映画 アリスのままで
2015年 09月 11日
病気って、病気そのものも嫌ですけれど、それを恐れる気持ちの暗がりが、
なんともいえないですよね、不安で、かなしくて、追いつめられるかんじで。
家族の愛情につつまれて、実績ある仕事にもめぐまれて、けれど突然、
それらの世界と自分とをつなぐ、記憶というくさびが、抜けゆくという宣告、
確実に、進行する、アルツハイマー病を抱えてしまったという現実を
突きつけられたら、いまが充実しているひとほど、絶望してしまうのでは。
自分を大切に思うからこその、日々のランニングの最中、50歳のアリスは、
職場であるキャンパスで、恐怖感におそわれるのだけれど、すがるものさえ
見つけられなくなりそうな、自分の状況を、瞬時に理解してしまったようで、
才気あふれる女性だからこそ、きっと冷静に事実を受け止めようと、でも混乱。
恐怖から逃れたくて、自ら診察に出向き、苦しみながら家族にも打ち明けて、
それでも無慈悲にくだされた診断を、正面から受け入れる姿勢は、凛々しく、
けれど瞬間瞬間で、はげしく揺らぐ。平静を保とうと笑顔でやりすごそうと
自分を客観視しようと絶えず張りつめている糸が、切れそうになって崩れて。
知性から、自分をコントロールしようとするんですね、侵されてゆく運命を
認めて、社会とのつながりを失ってゆく自分を厳しく律しようと、問いを発し、
答えを探り、もしもその術をなくしてしまったときの処遇まで、決めておく。
でも、かなしいことに、病がその想定の枠をはみ出すことまで、考えられない。
混沌の世界におちてゆくアリスの、ぶれる気持ちも、痛々しいけれど、
それをただ見つめて支えるしかない、家族たちの、迷いや戸惑い、あきらめが、
せつなくて、妻として母としておよそ完璧だったのが、みるみる頼りなく、
不穏な世界に迷い込んでしまうのを、追いかけることのできない苛立ち。
けれど、たとえ物事や出来事のなにもかもを忘れてしまっても、感情、感覚は、
いつまでも残っているらしく、それが希望のような救いのような。ここちよさ、
あたたかさ、愛おしさこそが、じつは誰かとの強い絆で、記憶の明瞭な輪郭が、
ぼんやり滲んでゆくだけなのだとすれば、それも幸福のひとつの形なのかも。
アリスのスピーチの迫力、説得力に、娘とのやりとりのあとの逡巡の気配、
ジュリアン・ムーアはいつもながらの素晴らしさ、オスカーはいまさらの感。
アリスのままで 公式サイト
シネプラザサントムーンにて9月
なんともいえないですよね、不安で、かなしくて、追いつめられるかんじで。
家族の愛情につつまれて、実績ある仕事にもめぐまれて、けれど突然、
それらの世界と自分とをつなぐ、記憶というくさびが、抜けゆくという宣告、
確実に、進行する、アルツハイマー病を抱えてしまったという現実を
突きつけられたら、いまが充実しているひとほど、絶望してしまうのでは。
自分を大切に思うからこその、日々のランニングの最中、50歳のアリスは、
職場であるキャンパスで、恐怖感におそわれるのだけれど、すがるものさえ
見つけられなくなりそうな、自分の状況を、瞬時に理解してしまったようで、
才気あふれる女性だからこそ、きっと冷静に事実を受け止めようと、でも混乱。
恐怖から逃れたくて、自ら診察に出向き、苦しみながら家族にも打ち明けて、
それでも無慈悲にくだされた診断を、正面から受け入れる姿勢は、凛々しく、
けれど瞬間瞬間で、はげしく揺らぐ。平静を保とうと笑顔でやりすごそうと
自分を客観視しようと絶えず張りつめている糸が、切れそうになって崩れて。
知性から、自分をコントロールしようとするんですね、侵されてゆく運命を
認めて、社会とのつながりを失ってゆく自分を厳しく律しようと、問いを発し、
答えを探り、もしもその術をなくしてしまったときの処遇まで、決めておく。
でも、かなしいことに、病がその想定の枠をはみ出すことまで、考えられない。
混沌の世界におちてゆくアリスの、ぶれる気持ちも、痛々しいけれど、
それをただ見つめて支えるしかない、家族たちの、迷いや戸惑い、あきらめが、
せつなくて、妻として母としておよそ完璧だったのが、みるみる頼りなく、
不穏な世界に迷い込んでしまうのを、追いかけることのできない苛立ち。
けれど、たとえ物事や出来事のなにもかもを忘れてしまっても、感情、感覚は、
いつまでも残っているらしく、それが希望のような救いのような。ここちよさ、
あたたかさ、愛おしさこそが、じつは誰かとの強い絆で、記憶の明瞭な輪郭が、
ぼんやり滲んでゆくだけなのだとすれば、それも幸福のひとつの形なのかも。
アリスのスピーチの迫力、説得力に、娘とのやりとりのあとの逡巡の気配、
ジュリアン・ムーアはいつもながらの素晴らしさ、オスカーはいまさらの感。
アリスのままで 公式サイト
シネプラザサントムーンにて9月
by habits-beignets | 2015-09-11 21:37 | シネマのこと | Comments(0)