映画 涙するまで、生きる
2015年 10月 10日
原作は、アルベール・カミュ。
生きてゆく、その道程の光と影、ゆたかさ、意味深さが切切と。
フランスからの独立運動のさなか、荒涼と赤茶けた山間を背景にぽつんと学校、
そこに集い、まなぶ子供たちの目は、キラキラ、驚きや喜びでおどり、輝き、
中年の男性教師の彼らを見守るまなざしは、やわらかで、ささやかな希望の光を
見いだしているかのよう、民族のちがいはあっても、そこに壁はなさそうで。
けれどアルジェリア、激しさ増す戦争の気配、子供たちとの平穏な日々にも、
どことなく陰りが、それでも静かでつましい営みを守るつもりの教師のもとに、
不意にやってきた招かれざる客、いとこ殺しの罪人を、山向こうの裁判所へと
送るようにと命令が、そんなの無理ただの教師だ、と突っぱねてはみたものの。
どうせ死罪になる裁判にわざわざ連れてゆくなんて、と強く拒絶、けれど、
目の前の罪人のこれからを、案じる気持ちが、やはり徐々にふくらんで、
やむなく出発、その凛々しさ、たくましさといったら、えっこの人教師よね、
銃の扱い方、ただ者ではなさそうだけれど、その身の上がおもんばかられて。
1954年、フランス語とアラビア語が入り交じる北アフリカで、いちめん
土はだと砂利だけが続く道なき山を越える旅が、いつしか、教師と罪人を
同士のようにむすびつけてゆくのだけれど、それはたぶん、彼らふたりが、
どの軍の側でもなく、ただ生きのびることだけを、切実に欲しているから。
いったい、誰に追われて、誰に狙われて、誰に殺されるか、油断ならない、
わけのわからない混乱のなか、掟や命令や争いに、翻弄され続けるのだけれど、
ふたりは、どこにも身を委ねず、強く主張しないながらも、彼らなりの考えと、
気持ちだけをよりどころに、無事に目的を果たそうとする、一途に。
なぜ、そこまでして裁判を受けたいのか、思い詰めた理由を吐露した罪人。
フランス人でもアラブ人でもなく、両者からよそ者あつかいされた教師。
貧しさをしのぐためだけの人生を送ってきた罪人と、素晴らしい一瞬の
存在を語る教師とのあいだには、皮肉にも生きてゆくよろこびの気配が。
思想や道理、組織の力にしばられて、個々の生命、幸福を、徹底して排除する
終わりなき争いを目の当りにしたとき、では自分はどうするべきか、自分の力で
考えて決めることの尊さ、大切さが、彼らふたりの姿勢からつたわって、
小さくても凡庸でも、手の届く幸せを求めることが、平和への道なのかも。
北アフリカの大地の映像がことごとく美しく、こちらも旅をしているかのよう。
ヴィゴ・モーテンセンはプロデュースもしてるんですね、素晴らしかった。
シネプラザサントムーンにて10月
涙するまで、生きる 公式サイト
生きてゆく、その道程の光と影、ゆたかさ、意味深さが切切と。
フランスからの独立運動のさなか、荒涼と赤茶けた山間を背景にぽつんと学校、
そこに集い、まなぶ子供たちの目は、キラキラ、驚きや喜びでおどり、輝き、
中年の男性教師の彼らを見守るまなざしは、やわらかで、ささやかな希望の光を
見いだしているかのよう、民族のちがいはあっても、そこに壁はなさそうで。
けれどアルジェリア、激しさ増す戦争の気配、子供たちとの平穏な日々にも、
どことなく陰りが、それでも静かでつましい営みを守るつもりの教師のもとに、
不意にやってきた招かれざる客、いとこ殺しの罪人を、山向こうの裁判所へと
送るようにと命令が、そんなの無理ただの教師だ、と突っぱねてはみたものの。
どうせ死罪になる裁判にわざわざ連れてゆくなんて、と強く拒絶、けれど、
目の前の罪人のこれからを、案じる気持ちが、やはり徐々にふくらんで、
やむなく出発、その凛々しさ、たくましさといったら、えっこの人教師よね、
銃の扱い方、ただ者ではなさそうだけれど、その身の上がおもんばかられて。
1954年、フランス語とアラビア語が入り交じる北アフリカで、いちめん
土はだと砂利だけが続く道なき山を越える旅が、いつしか、教師と罪人を
同士のようにむすびつけてゆくのだけれど、それはたぶん、彼らふたりが、
どの軍の側でもなく、ただ生きのびることだけを、切実に欲しているから。
いったい、誰に追われて、誰に狙われて、誰に殺されるか、油断ならない、
わけのわからない混乱のなか、掟や命令や争いに、翻弄され続けるのだけれど、
ふたりは、どこにも身を委ねず、強く主張しないながらも、彼らなりの考えと、
気持ちだけをよりどころに、無事に目的を果たそうとする、一途に。
なぜ、そこまでして裁判を受けたいのか、思い詰めた理由を吐露した罪人。
フランス人でもアラブ人でもなく、両者からよそ者あつかいされた教師。
貧しさをしのぐためだけの人生を送ってきた罪人と、素晴らしい一瞬の
存在を語る教師とのあいだには、皮肉にも生きてゆくよろこびの気配が。
思想や道理、組織の力にしばられて、個々の生命、幸福を、徹底して排除する
終わりなき争いを目の当りにしたとき、では自分はどうするべきか、自分の力で
考えて決めることの尊さ、大切さが、彼らふたりの姿勢からつたわって、
小さくても凡庸でも、手の届く幸せを求めることが、平和への道なのかも。
北アフリカの大地の映像がことごとく美しく、こちらも旅をしているかのよう。
ヴィゴ・モーテンセンはプロデュースもしてるんですね、素晴らしかった。
シネプラザサントムーンにて10月
涙するまで、生きる 公式サイト
by habits-beignets | 2015-10-10 03:48 | シネマのこと | Comments(0)