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映画 あん

満開の桜は、なぜか人生のはかなさと滋味を、とどけてくれる気がします。
悲しいような、嬉しいような、焦るような、励まされるような、落ち着かなさ。
樹木希林、お孫さんとの共演と話題になりましたね。
あんこ、たべたくなります。

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世界を埋めつくすほどのいきおいで、咲き誇る桜の花々から、現れた老婆が、
いきなり、こちらの扉を音をたてずにノックして、頼りなげなのに、めげない、
おとなしく引き下がりそうで、離れない、妙に心をつかまれるのは、長いこと、
あんこをひたすら作りつづけてきたからかも、あずきの声を聞きながら。

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なりゆきで仕方なく、どら焼きをこしらえる日々をおくる、くたびれた男が、
すべてをあきらめていたはずなのに、気持ちをこめてなにかに打ち込むことの、
面倒だけれど、疲れるけれど、苛立たしいけれど、よろこばしく救われる心地、
多くの見知らぬひとたちをうごかす力、誰かを感動させる奇跡を知って。

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静かでも、ささやかでも、華やかではなくても、日々のいとなみのときめき、
たくさんのいのちと、つながっている実感に、身も心もほぐれてゆくさまが、
小さなどら焼き屋の、厨房と店先に、やわらかな光をともして、孤独を抱えた
少女も笑顔に、なのに、奇跡のようにおいしいあんこには、隠された物語が。

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誰もがひとにはいえない事情を、胸に秘めて暮らしているところがあって、
他人に突かれれば傷つく、それでも、つかのまやさしさに身を寄せて、
この世もわるくないと信じられる瞬間を、もとめることをやめられなくて、
たとえば、素朴で甘くおいしいたべものを、噛みしめて、泣きたくて。

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誰の人生もが物語であるように、あずきの一粒にも、きっとそれぞれの物語、
ようやく巡り合えたありがたみに思いを馳せて、そのよろこびを、精いっぱい
わかちあおうと、丁寧に時間をかけて、つくるあんこは、冷たくなりかけた心を
あたたかくやわらげて、世間の目の残酷さにも、立ち向かえるちからのもとに。

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桜の季節に出会って、まためぐる桜の季節には、あたらしい旅立ち、
望んで選んだ人生ではなくても、できることが限られていても、どこかの誰かと
つながれることを信じて、小さな出会いをたいせつにすれば、桜や月の美しさ、
季節のうつろいのよろこびに、気持ちがみたされる至福の瞬間が、きっと。

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ただ、それぞれの背景を物語で描くには、いくらかステレオタイプの感が、
たしかにひどく悲しい話だと、ドキュメンタリー番組では、思いましたが。

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シネプラザサントムーンにて11月

あん 公式サイト

by habits-beignets | 2015-11-21 18:59 | シネマのこと | Comments(0)

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