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映画 アレクセイと泉

チェルノブイリから北東に180キロ、ベラルーシのちいさな村、
2000〜2001年、日本の監督が撮ったドキュメンタリー。

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アレクセイ青年の静かな語りで、映画は始まるのですけれど、内容は深刻、
放射能、汚染、恐ろしくもあって、それなのに、目の前にひろがる光景は、
すこぶるのどか、昔むかしからの、丁寧でおだやかな暮らしを、微笑みながら
くり返す、ただ、若者の姿は殆どないけれど、アレクセイ青年が頼りだけれど。

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古くから大切に使われてきた、泉の水、暮らしの中心、いのちの源のそれの、
汚染量はゼロ、まるでおとぎ話のようで、信じがたいのだけれど、村の誰もが、
病とはいかにも無縁そうに、たくましく惑わず、まっすぐひたすら自分たちの
流儀を、しなやかに守り続ける、雪のなか、新緑のなか、隣人と手をたずさえ。

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久しぶりにやってくる司祭に、見てもらえるよう、泉の木枠を修繕するのは、
老いた男たちの腕と足、その仕事ぶりには誇らしさが、神聖な沸き水を守り、
関わり、恵みをうけることがそのまま、生きてゆくことと信じているようにも、
泉の畔に立つ、三角屋根の十字に、彼らの純粋な信仰が、可憐なたたずまいで。

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原子力とか放射能とか、そもそも無縁の空気がいっぱい広がってるんです、
じゃがいもを掘り、カゴを編んで、糸をつむいで、暖炉でパンを焼き、
ときおり移動販売の車で、よそのものを買い、祭りではみなで歌い踊って、
老いていても、まるで少年と少女、女たちの花柄の衣装はお人形さんのよう。

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政府の移住勧告で600人だった住人も55人の年寄りと1人の青年に、
町に住む子供や孫には、週に2本のバスでしか、もはや実際には世界から
忘れられられようとしている村なのだけれど、ここで暮らし続ける人たちには、
これ以上は望めない楽園のようで、とどまることの圧倒的な説得力が。

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けなげでいじらしくて、多くを求めない、まっすぐなひとたちをどうか、
清らかな泉が、けがれからお守りくださいますように、
花模様で満ちた、あたたかそうな部屋そのままの、世界でありますように。

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福島の事故が起こる以前の、すこし古い映画なのですけれど、
長泉町のクレマチスの丘で、上映されました。

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6月にも、上映されます。写真家である監督の他の映像作品も。
写真展が、IZU PHOTO MUESUMで開催されているのですけれど、
そちらの入館料で、映画、トークイベントなども観覧できます。

クレマチスの丘ホールにて4月

クレマチスの丘

IZU PHOTO MUSEUM

本橋成一監督作品 上映&トークイベント

アレクセイと泉 公式サイト

by habits-beignets | 2016-04-05 01:25 | シネマのこと | Comments(0)

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