映画 リリーのすべて
2016年 06月 24日
互いに尊敬しあい、魅力を認めあい、とても幸福そうな若夫婦なんですが、
ほんのはずみから、思いもよらなかった、複雑で終わりのみえない、苦境に。
ハンサムな夫は、新進気鋭の風景画家、まわりからの評価も高く、順風満帆、
彼を誇りに思う妻も、美人で魅力的な肖像画家、絵の評判は今ひとつだけれど、
それぞれの個性を尊重しあって、切磋琢磨しつつ、たえず睦み合う関係が、
いかにも心地よく、不足するものなど何もない、理想のカップルそのものに。
なのに、軽い気持ちで、妻の絵のモデルの代役を夫がひきうけたことから、
それまで露ほども考えていなかった、夫の変化がみるみる、そんなつもりでは、
と激しく後悔しても、すでに遅し、あんなに紳士然としていた夫だったのに、
誰もがうらやむ、まっとうに幸せな夫婦だったのに、暮らしは混乱に陥って。
理解したい、安楽を分かち合いたい、と望んでも、かつて愛し求めた夫の姿を、
見ることができなくなってゆく、恐怖と寂しさ、それでも、夫に本来の姿を
取り戻させてあげたいと願う、切実な愛情、つねに揺らぎながら、責めたり、
落ちこんだり、励ましたり、案じたり、誰かに助けを求めたり、出口を探して。
皮肉なことに、夫をモデルに描いた絵が、とつじょ売れて、妻は一躍、
売れっ子画家に、対して、描くことがなくなった夫はつまり、叶えられない
欲求こそが、表現の源流だったのかもしれず、いつも描いていた同じ風景、
故郷への憧憬の、色彩の深さ、静かな暗さが、悲しみをたたえているようで。
リリーと名乗るときの、夫のはにかみ悲しそうな笑顔、彼の不在の不穏さに、
彼を描くことで、自分を支えようとする妻、夫婦というかたちを超えて、
互いを結びつける絆を、かろうじて信じようと、現実的な解決策に、
恐れをこらえて、挑もうとする姿が、痛々しくも、たくましく、勇敢で。
役者の誰もが魅力的、舞台となるコペンハーゲンの街並も、いかにもの美しさ、
当時のヨーロッパのファッションも、目に楽しく、物語冒頭とラストの
つながりも、しなやか、風景そのものがきっと、彼だったのではと思われて。
シネプラザサントムーンにて6月
リリーのすべて 公式サイト
ほんのはずみから、思いもよらなかった、複雑で終わりのみえない、苦境に。
ハンサムな夫は、新進気鋭の風景画家、まわりからの評価も高く、順風満帆、
彼を誇りに思う妻も、美人で魅力的な肖像画家、絵の評判は今ひとつだけれど、
それぞれの個性を尊重しあって、切磋琢磨しつつ、たえず睦み合う関係が、
いかにも心地よく、不足するものなど何もない、理想のカップルそのものに。
なのに、軽い気持ちで、妻の絵のモデルの代役を夫がひきうけたことから、
それまで露ほども考えていなかった、夫の変化がみるみる、そんなつもりでは、
と激しく後悔しても、すでに遅し、あんなに紳士然としていた夫だったのに、
誰もがうらやむ、まっとうに幸せな夫婦だったのに、暮らしは混乱に陥って。
理解したい、安楽を分かち合いたい、と望んでも、かつて愛し求めた夫の姿を、
見ることができなくなってゆく、恐怖と寂しさ、それでも、夫に本来の姿を
取り戻させてあげたいと願う、切実な愛情、つねに揺らぎながら、責めたり、
落ちこんだり、励ましたり、案じたり、誰かに助けを求めたり、出口を探して。
皮肉なことに、夫をモデルに描いた絵が、とつじょ売れて、妻は一躍、
売れっ子画家に、対して、描くことがなくなった夫はつまり、叶えられない
欲求こそが、表現の源流だったのかもしれず、いつも描いていた同じ風景、
故郷への憧憬の、色彩の深さ、静かな暗さが、悲しみをたたえているようで。
リリーと名乗るときの、夫のはにかみ悲しそうな笑顔、彼の不在の不穏さに、
彼を描くことで、自分を支えようとする妻、夫婦というかたちを超えて、
互いを結びつける絆を、かろうじて信じようと、現実的な解決策に、
恐れをこらえて、挑もうとする姿が、痛々しくも、たくましく、勇敢で。
役者の誰もが魅力的、舞台となるコペンハーゲンの街並も、いかにもの美しさ、
当時のヨーロッパのファッションも、目に楽しく、物語冒頭とラストの
つながりも、しなやか、風景そのものがきっと、彼だったのではと思われて。
シネプラザサントムーンにて6月
リリーのすべて 公式サイト
by habits-beignets | 2016-06-24 00:58 | シネマのこと | Comments(0)