映画 ブルックリン
2016年 08月 22日
生まれ育った地元での、穏やかだけれど、窮屈な暮らしから解き放たれようと、
憧れの新天地に、期待と不安ではちきれそうになりながら、海を渡った彼女の、
澄んだ瞳にうつる、さびしさやよろこび、輝きや曇りが、胸にせまってきます。
年老いた母と姉妹での三人暮らしは、アイルランドの気候もあいまってか、
質素でまじめなつましさに、いくらか絶望の気配が漂い、なんとかして風穴を、
そんな、若い娘たちのすがる気持ちがうかがえて、たぶん、妹むすめが、異国へ
発つのは、単に仕事をもとめるだけではなく、なにか希望を見いだしたくて。
けれど、日々なじんできた、身近な愛するひとたちと、遠く離れるのは、
なんとも体をひきちぎられそうな苦痛、出航のときの、見送る顔と旅立つ顔の、
思いの交感、いつまでもつながっていたい、たくさんの色とりどりのテープ、
きっと、もしや二度と会えないかも、無事の祈りをわかちあう、せつなさが。
同郷の仲間がいるとはいえ、新しい暮らしは、なにもかも勝手がちがい、
微笑もなくしてしまう、耐えがたい望郷の念、けれど、若さはおそるべし!
にぎやかな催しや、異郷の人との出会いにときめいて、いつしか、誰かれの
やさしさに、包まれている幸福に、気持ちも体もほぐれてゆき、輝く時間。
大人になるって、自分の居場所をみつけること、自分の価値を見いだすこと、
自分を必要としている世界、自分が必要としている世界を、見つけて選ぶ、
その課題に、真剣に真正面からむきあう、ということなのかも、
たとえ誰かが用意してくれた道から外れても、自らの手で力ずくで切り開く。
あれほど心細かったのに、ようやくのびのび、自分の幸福を勝ち取って、
自信にみちあふれていたところへ、思わぬできごとで再び海を渡るのですが、
目に映るものは、覚えていた印象とはどこか奇妙にずれて、なにげない光景が、
このうえなく愛おしく、愛おしいはずのものが、戸惑うほどひどく鬱陶しく。
人生の岐路って、たしかにとても大切で、ものすごく悩む、できれば、
すべてのひとに幸福になってほしいし、でもすべてを選ぶことはできなくて、
たとえば肉親への愛はたしかなのに、ともに暮らすことが、自分の未来を
輝かせてくれるのか、たとえば誰かを裏切っても、選ぶべき幸せがあるのか。
親元で暮らしているときには、想像もつかなかった自分のありようと、
自分をとりまく世界の見え方、大切なものを諦めなければならない寂しさと、
それに耐えられることを信じる強さ、初めての航海の揺れにはわけもわからず
転げ回っていた頼りなさが、遠い昔となったとき、自分の足ですっくと立って。
故郷との決別って痛いけれど、糧になる予感で、こらえられるものなのかも。
シアーシャ・ローナンの澄んだ瞳はあいかわらず、吸い込まれそう。
シネプラザサントムーンにて8月
ブルックリン 公式サイト
憧れの新天地に、期待と不安ではちきれそうになりながら、海を渡った彼女の、
澄んだ瞳にうつる、さびしさやよろこび、輝きや曇りが、胸にせまってきます。
年老いた母と姉妹での三人暮らしは、アイルランドの気候もあいまってか、
質素でまじめなつましさに、いくらか絶望の気配が漂い、なんとかして風穴を、
そんな、若い娘たちのすがる気持ちがうかがえて、たぶん、妹むすめが、異国へ
発つのは、単に仕事をもとめるだけではなく、なにか希望を見いだしたくて。
けれど、日々なじんできた、身近な愛するひとたちと、遠く離れるのは、
なんとも体をひきちぎられそうな苦痛、出航のときの、見送る顔と旅立つ顔の、
思いの交感、いつまでもつながっていたい、たくさんの色とりどりのテープ、
きっと、もしや二度と会えないかも、無事の祈りをわかちあう、せつなさが。
同郷の仲間がいるとはいえ、新しい暮らしは、なにもかも勝手がちがい、
微笑もなくしてしまう、耐えがたい望郷の念、けれど、若さはおそるべし!
にぎやかな催しや、異郷の人との出会いにときめいて、いつしか、誰かれの
やさしさに、包まれている幸福に、気持ちも体もほぐれてゆき、輝く時間。
大人になるって、自分の居場所をみつけること、自分の価値を見いだすこと、
自分を必要としている世界、自分が必要としている世界を、見つけて選ぶ、
その課題に、真剣に真正面からむきあう、ということなのかも、
たとえ誰かが用意してくれた道から外れても、自らの手で力ずくで切り開く。
あれほど心細かったのに、ようやくのびのび、自分の幸福を勝ち取って、
自信にみちあふれていたところへ、思わぬできごとで再び海を渡るのですが、
目に映るものは、覚えていた印象とはどこか奇妙にずれて、なにげない光景が、
このうえなく愛おしく、愛おしいはずのものが、戸惑うほどひどく鬱陶しく。
人生の岐路って、たしかにとても大切で、ものすごく悩む、できれば、
すべてのひとに幸福になってほしいし、でもすべてを選ぶことはできなくて、
たとえば肉親への愛はたしかなのに、ともに暮らすことが、自分の未来を
輝かせてくれるのか、たとえば誰かを裏切っても、選ぶべき幸せがあるのか。
親元で暮らしているときには、想像もつかなかった自分のありようと、
自分をとりまく世界の見え方、大切なものを諦めなければならない寂しさと、
それに耐えられることを信じる強さ、初めての航海の揺れにはわけもわからず
転げ回っていた頼りなさが、遠い昔となったとき、自分の足ですっくと立って。
故郷との決別って痛いけれど、糧になる予感で、こらえられるものなのかも。
シアーシャ・ローナンの澄んだ瞳はあいかわらず、吸い込まれそう。
シネプラザサントムーンにて8月
ブルックリン 公式サイト
by habits-beignets | 2016-08-22 22:17 | シネマのこと | Comments(0)