映画 天使にショパンの歌声を
2017年 02月 26日
雪景色にたたずむ寄宿学校は、つましくうるわしく、制服姿の少女たちの、
規律正しい暮らしぶりは、清々しくも、ささやかな屈託の気配が、微笑ましく。
ここちよい響きの、フランス語で描かれる物語の舞台は、カナダのケベック州、
簡素な間仕切りだけの、それぞれの部屋で就寝する女学生たちと、
彼女たちを導くシスターたちは、授業も食事も余暇の時間も、ともに集い、
音楽によりそいながら、穏やかな日々、ところへ、ちいさな波とおおきな波が。
校長のオーギュスティーヌの姪が、いかにも問題児の風貌でさっそう登場、
なにやら事情があるふうに母親から押し付けられて、入校してくるのですが、
プチ不良の雰囲気まといながらも、つい聞き惚れてしまうピアノの腕前、
音楽って、奏でるのも聞き入るのも、きっとみな、心の惑いを慰めたいから。
一日中、学校の規律にしばられて、自由のない生活を、なぜ年頃の少女たちが、
と疑問に感じなくはないけれど、彼女たちのコーラスのうつくしさ、それぞれ、
一心に、おおきくまるく開いた口、かしげる首を、見ていると、かすかな憂い、
人知れぬ災いから、救われたい願いが、そこに垣間見えるようにも。
けれど、たとえ切実な願いがあったとしても、理解されない現実もせまって、
組織による運営には、採算の問題が、音楽って芸術ってつねにそこでは弱者、
どんな実績や理想も、利潤追求のまえでは無力、うつくしい調べで訴えても、
識者たちの応援をとりつけても、価値観のちがいを乗りこえるのは。
表面的に物語をなぞると、敬虔な音楽学校の教師と学生たちが、
時代の変化に立ちはだかれて、か弱いながらも、精いっぱい力を合わせて、
闘う美談のようだけれど、そうせずにはいられない、ひとりひとりの人生、
その背景、静かな暮らしに安寧を求めてきた心情が、控えめに漂って。
気配を感じさせながらも、具体的には語られない、彼女たちの来し方。
うつくしい楽曲を、丁寧に、祈るように大切に、歌い、奏でる暮らしに、
どうか、幸運が授かりますように、微笑みが、いつでも絶えませんように。
いくつもの名曲を堪能しているうちに、こちらもいつしか信心のような。
ところで、白銀のなかの少女たちの私服姿が、とってもキュート。
きれいな色の帽子やコートが、かわいくて、じっと見つめてしまう。
シネプラザサントムーンにて2月
by habits-beignets | 2017-02-26 22:55 | シネマのこと | Comments(0)