映画 人生フルーツ
2017年 06月 29日
シニアの豊かなスローライフ、かと思っていたら、そんなぬるいものではなくて。
90歳と87歳の夫婦、庭はたくさんの果樹や野菜畑でいっぱいで、静かに、
ゆっくりとだけれど、一日中、大忙し、二人きりの暮らしでも、ときどき、
大声で呼ばないと、行方不明、互いの呼び名さえ、歳月こえて愛らしくて、
食卓の、夫の食事と、妻の食事を見比べれば、自然な思いやりの形がみえて。
けれど、このほのぼのと充実して流れる時間の影に、裏打ちされた彼らの覚悟、
夫は、戦後の焼け野原で、人々が幸福になれる住まい、夢の公団住宅の造成に、
情熱を傾けた建築家だったけれど、その思惑は、高度経済成長の波にのまれて、
どうやら挫折、でも強い反発は見せないで、諦めない気持ちでか、土地を買い。
えっ、て、すこし意外なお宅の場所でした、すっかりもっと、山奥のお話かと、
その土地を選んだ誠実さ、自分たちの土地だからこそ、自分たちの思いのまま、
自分たちの流儀を貫いて、人知れず静かに闘う、ってこういうことなのかも、
誰か何かを攻撃することに興味なし、信念があるなら、ひそかに自分たちだけで。
雑木林に囲まれ、野菜をそだて、それらを慈しむよう、あちこち小さな木札、
名前やコメント、まるで、みんな寄り添って、生きてるよう、家と庭すべてが、
夫婦とともに、陽をうけて、風にそよいで、季節のうつろいを、それぞれ、
肌で感じて、自らの役回りをまっとうして、偉大な建築家たちの名言そのまま。
奥さん英子さんの、家庭というものに対する姿勢と手仕事、旦那さん修一さんの
時間を惜しまずに、ひとの幸福を掘り起こす作業、イラストとか、工作とか、
ともかく可愛くて、あちこち飾られてる、趣味のヨットの小物やら、お出かけの
愛車の色デザインも、キュート、二人の来し方のエピソードも、美しく頑なで。
家族のイベントでは、旗があがる、これは、津端家みんなで、がんばる合図、
ちらちらと、ときおり見られる、修一さんのたどってきた道、厚木で見た
マッカーサー、ともに働いた台湾からの若者、穏やかでにこやかな目に涙も、
そして、ある日、色あざやか満艦飾の旗が青空に、きっと大切なイベントが。
本当に心からやりたい仕事、というのを、ずっと諦めてなかったんですね、
修一さん、英子さんとふたり、宝石箱のようなお家で、細かな仕事から
力仕事まで、時間をつないでいる間も、じつは何かをいつも準備していた、
はがきを書きながら、ミニチュアを作りながら、障子紙をはがしながら。
なにげない日常の背後に、情熱と信念がたえず存在している、そんな、
力強い夫婦の姿に、暮らしのふところの深さというものが感じられて、
すばらしいドキュメンタリー、もとはテレビで放映されたようですが、
パンフレット買い求めました、スタッフの熱意や裏話、興味深く。
映画そのものも、いちいちの説明コメントとか、修一さん方式?可愛い。
おびただしい数の、口が開いた段ボール箱は、英子さんのあふれる愛。
シネプラザサントムーンにて6月
by habits-beignets | 2017-06-29 00:27 | シネマのこと | Comments(0)