映画 ジャコメッティ 最後の肖像

“たった1日の約束が、来る日も来る日も完成しないポートレイト”とは恐ろしい、

それも、家から遠く離れた外国での足止め、遠のく帰国、でも突き放して帰れない。

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パリまで、高名な彫刻家の個展を訪れた作家が、その彫刻家ジャコメッティに、

肖像画のモデルになってほしいと、頼まれてからの、ささやかな紆余曲折の騒動が、

軽やかに、いくぶん滑稽に、描かれるのですけれど、芸術家の苦悩の底知れなさよ、

何がそんなに不満なのか。何がそんなに腹立たしいのか、戸惑いつつ笑ってしまう。

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頼んでモデルになってもらったのに、言いたい放題失礼千万だったりなのは、

芸術家として成功をおさめ、巨匠と認められた存在ゆえの、横暴さでもなさそうで、

どこか憎めない率直さ、純真さは、おそらく生来のもの、他人を罵倒もするけれど、

なにより自分自身をなさけなく感じてる気配は、どこか愛らしく、捨て置けなくて。

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素晴らしい作品が、もうすぐやっと、完成しそうなのに、容赦なくかき消す、

その繰り返しの合間に、妻や愛人やちんぴらたちとのいざこざ、そして情緒不安定、

すぐに描き終わるつもりで、引き受けたモデルだったのに、こんなはずでは、

でも、帰国するとは言い出せない人のよさは、巨匠への遠慮ばかりでもないような。

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この成りゆきの、終わり方を見届けたい、とか、その日常の魅力にひきずられて、

みたいな、好奇心に抗えないところもあったのでは、困っている自分をも楽しんで、

さいわい、その困惑を理解して、愚痴を聞いてくれるひとも、存在してくれたし、

悪意をぶつけられているわけではないですものね、求められているのは誇らしいし。

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傍若無人のようでも、気まぐれのようでも、芸術に対しては、安易に妥協しない、

自分の才能を過信しない、そんな真摯な姿勢には、寄り添ってあげたくもなるし、

世間一般の価値観とは、一線を画す、強力な個性には、新鮮な驚きがいつもあって、

だから、帰りたい気持ちを、なんとなく、先延ばしに、狼狽えながらもしてしまい。

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そうはいっても、いつまでもというわけにもいかず、というか、永遠に帰れない、

そんな不安がふくらむばかりで、ではどうすれば、の逡巡の末の、頭脳プレー、

強引に帰るということを、避けるために、それほどの注意力と戦略で応じるとは、

やさしいなあ、と嬉しくて、芸術を、芸術家を、愛してるかんじが、微笑ましくて。

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ジャコメッティの作品て、一見してわかるなんともいえない魅力が。

アトリエにはところ狭しと、あちこち雑然と、倉庫の備品のように置かれて。

芸術家の隠れ家を覗いているような、楽しさが。


シネプラザサントムーンにて2月


ジャコメッティ 最後の肖像


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by habits-beignets | 2018-02-25 19:36 | シネマのこと | Comments(0)

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