映画 シェイプ・オブ・ウォーター
2018年 03月 28日
陽の光から遠ざかった、静かな、水底のような世界で暮らす、ひとびと、
映像の世界でのみ、そとの社会をかいま見ることができる者たちが、触れあって。
終始、薄暗く、人工的な灯がたよりな、夜の研究所の世界は、たえずどこか不穏で、
陰謀や猜疑が、いたるところで渦巻いていそうな、東西冷戦時代を象徴させて、
言葉を発せないまま、つましい暮らしの日々をくり返す、主人公の女性が、
ひそやかに、すこしずつ、自分の世界を築きあげてゆくのには、危ない雰囲気が。
そんな場所で、突如、関わるようになった、異形のものを、心に受け入れたのは、
なにか自分と通じるものを感じたからかもしれないけれど、美しく、可憐な存在を、
見極めるたしかな目を、きっと持っていたからでは? 孤独でいたわしい存在を、
放っておくことが、できなかったからでは? 隣人や同僚を、大切に思うように。
いかにも大事そうに、紙袋を抱いて家を出る彼女の姿は、まるで、少女のように、
愛らしく、なかにはささやかな、贈りもの? お弁当? 仕草や視線での言葉が、
通じあって、気持ちが通いあって、その喜びが、日ごとにふくれあがって、
冷酷な事情のもとに、水槽につながれている彼なしでは、生きていけなさそうに。
分厚いガラスを挟んだ、水中と外との、奇妙なロマンスは、けれど、いつまでも、
許されるわけもなく、残酷な終わりの気配がただよって、ひとそれぞれ、
いろいろな思惑、与えられた立場で、強者は弱者を、容赦なくねじ伏せようと、
暴力もいとわない、嘲られ、貶められるのは、やはり多数からはずれた者たち。
それでも、誰にも奪われたくない、奪わせてはいけない、と彼女が決めたとき、
立ち向かう相手が何者であろうと、恐れず、見境ないほど、まっすぐ突き進んで、
その迷いのなさに、まわりの心ある者たちも、その本性をあぶり出されるように、
自らの気持ちに率直に、行動をおこす、まるで秘密結社ででもあったかのように。
どれほど、求める気持ちが強くても、愛したい、愛してほしいと願っても、
まったく同じ世界で、生きているわけではない、それぞれが、つながれるのは、
ほんの一瞬に過ぎないのは、いつだって誰だって、そうなのかもしれないけれど、
大切に思っていることを、伝えたい、そのために、自分のすべてを賭けてでも。
そんな、ピュアな気持ちこそが、閉塞気味の社会を救うことができる、力かも、
異形であることを、むしろ畏れをもって迎えることの、麗しさ、尊さこそが。
60年代のアメリカのファッションや、テレビ、映画、カメラ、が映す映像が、
暗がりで繰り広げられる、大人のファンタジー世界を、妖艶にうつくしく。
シネプラザサントムーンにて3月
by habits-beignets | 2018-03-28 00:47 | シネマのこと | Comments(0)