映画 グッバイ ・ゴダール!
2018年 11月 05日
ジャン=リュック・ゴダール、ヌーベルバーグの旗手、ということであまりに有名、
そう、作品はいかにも洗練されて芸術的、というか、いささか妙ちきりんぽかったり、
では、恋人としての彼は、いったいどんな? それが、圧倒されてちょっと切なく。
ゴダールの二度目の妻、アンヌ・ヴィアゼムスキーの、自伝的小説が原作とのこと、
すでにあまりに有名、ブレイクしてた映画監督ですもの、まだ19才の彼女が、
心酔しきってしまうのも無理なさそう、いちいち詩的っぽい受け答えもオシャレ、
偉大な作家モーリアックを祖父にもつ、哲学科の学生だった彼女には、きっと刺激的。
でも、まあ、恋愛の悲しさ、始まりの頃は、すべてが美しく輝いて、祝福の気配でも、
慣れ親しんでゆくにしたがって、魅力が難点に、刺激が煩わしさに、教えが侮辱に、
少女から大人への急成長には、彼との関わりが、強く作用していたかもしれないのに、
皮肉だけれど、だからこそ、あれほど尊敬していた恋人が、次第に幼稚なへんくつに。
知り合った頃からとは、お互いの立場が、くるくる入れ替わるってよくありそう、
無名だった少女が、あっという間にその魅力と知性を開花させ、自分の力で輝いて、
もはや彼なしでも、どこへでも立って歩いていけるように、なってしまえば、
ことあるごとに疑問や不満、嫉妬とか焦燥あるいは絶望とか、たとえ愛のせいでも。
それにしても、いつもゴダールの隣に寄り添うアンヌの、愛らしさといったら!
彼に守られていることの気分のよさプンプン、で、彼女を持ち歩けるゴダールも、
いかにも誇らしそう、バービー人形さながらの恋人ですもの、ブラウスやセーター、
パリ流行ファッションの、キュートさ、ミニのプリーツからほっそり伸びた脚。
部屋の調度品なども、どれもオシャレでカッコよく、形も色も美しいんですよね、
ポイントの赤が、ことあるごとに効いていて、ていうか、実はこれ、ゴダール映画に
捧げるための映画、というつくり、監督のミシェル・アザナヴィシウスが、いかに、
映画を愛しているか、監督ゴダールに敬意を抱いているか、が伝わってくる演出が。
いかにもゴダールのミューズでありそうなセリフ、その視線、笑っちゃうシーンも、
気がきいて、ことあるごとの仲間での議論やら揉め事も、どこか滑稽で微笑ましく、
血気盛んに、革命運動に身を投じる姿も、単にインテリの、自己顕示にも見えて、
そして終盤、もはややけっぱちなのか、孤独に革命に突っ走る巨匠の、陳腐な姿が。
どんなに地位や名誉のある、おじさまでも、正体は、甘ったれ駄々っ子と同じなのかも、
でも、そこがまた、とんがった知性や魅力に、反映されてしまったりなのかも。
つきあい続けるには、かなり忍耐が必要、それでも、輝けた時間は、尊いだろうけど。
シネプラザサントムーンにて10月
by habits-beignets | 2018-11-05 16:58 | シネマのこと | Comments(0)