映画 日日是好日
2018年 12月 31日
もう、年の瀬、あっという間に一年がすぎてしまうことに、呆然と、少し焦って、
何もしなかった、何もできなかった、いつも悲しくなるけれど、日々はきっと。
茶道って、側から眺めてるだけでは、ちょっと面倒くさそうな、礼儀作法の様式美、
そんな印象でもありそうだけれど、一歩その道に足を踏み入れると、世界の奥深さ、
思慮深さに、びっくり、理屈は何も語られなくとも、根拠は何も示されなくとも、
ただ、習ったとおりの所作を、何度も何度も、くり返すうちに、体得できる何かが。
そこから派生しての知恵とか、悟りとか、気づきとか、同じものを見たり聞いたり、
しているだけなのに、目の前に存在しているものたちが、突如ちがって映ってくる、
ここちよい驚きは、平凡な毎日をくり返すだけの、これからにも、希望の気配が。
道に迷っていた20歳の大学生の女の子が、たまたま茶道と出合い、困惑しつつも、
お菓子の美味しさ、お点前の面白さに興味を覚えるうち、いささか中毒気味に、
まるで、茶室という空間に癒しを求めるよう通いつづけるさまは、健気で、
愛らしく、いくらか生真面目で不器用だった彼女の、心持ちも徐々にしなやかに。
就職が難しかったり、恋でつまずいたり、現実社会で敷かれたレールを意識しては、
自分の存在の頼りなさにしじゅう鬱鬱、誰かと比べては不甲斐なさを思わず嘆いて、
それでも、しがみつく思いでお稽古を続ければ、移りゆく季節を、過ぎゆく年月を、
愛おしむ気持ちが、知らず知らずのうちに、心の奥底から溢れ、湧きあがって。
いまの社会で暮らしていると、なかなか、時のながれに、想いを寄せる機会って、
ないかもしれない、やるべきこと、やらなければいけないことのおびただしさに、
心を奪われて、目のまえに広がっている空間を、じっと見つめることなど、
思いつかず省いて、美しく大切なものの在り処を、見つけられなくなってしまう。
美味しいお茶でもてなすこと、こころよさをその場にいる皆で共有すること、
かすかな、湯の音、水の音、を聞き分けて、生まれてきたこの世界を体感すること、
そんな日々を、重ねてゆくことの、うれしさを知って、茶事をいつくしむ彼女の、
おだやかな生きざまが、すがすがしく、たしかにお茶って、そんな魅力。
厳しいことや難しいことをいっさい言わないで、若い女の子たちを導く先生の、
鷹揚な奥ゆかしさが、茶道の世界観を体現しているかのようで、樹木希林さんが。
シネプラザサントムーンにて12月
by habits-beignets | 2018-12-31 16:50 | シネマのこと | Comments(0)