映画 ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
2020年 07月 14日
世界的に、とても有名な四姉妹の、とても有名な物語。
色あざやかに、牧歌的な風景が、目の前に繰り広げられて。
おさらいですが、南北戦争真っ只中のアメリカ。
お父さんは従軍牧師で、長いこと留守。
心やさしいお母さんと、お年頃の四姉妹の、つましくも楽しい日常が。
怖そうで敬遠していたお隣さんに、同じ年頃の青年が登場して。
姉妹でも、それぞれ異なった性格の四人の娘に、ときめきや戸惑いが。
物語の中心は快活な次女のジョー、作家になって自立するのが夢。
ややロマンチストの長女のメグは、愛する人との家庭を夢見て。
三女のベスは物静か、自分よりもまわりの幸福に心をくだき、ピアノを弾くのが何よりも好き。
四女のエイミーはちょっとやんちゃ、負けず嫌いでジョーとはしばしば対立、けれど、家族のしあわせを切実に願っていて。
少女時代の彼女たちは無邪気、子供っぽくじゃれあって朗らかで賑やか。
自分たちで、脚本、衣装も作って、演劇なんて、クリエイティブでポジティブ!
けれど、まもなく大人の仲間入り、それぞれの目の前には苛立たしい障がいが立ちはだかって。
情熱や希望だけでは、あかるい未来を見ることが難しい現実。
なかなか傑作を書けないジョー、家計のやりくりに悩むメグ、慈悲深さが祟って病にかかるベス、豊かな暮らしのために結婚を考えるエイミー。
彼女たちが、それぞれ抱える葛藤や希望が、季節の移ろいとともに生き生きと描かれて。
ことさら貧しいわけではなくても、思いのままにはならない暮らしぶり。
愛情が、家族の存在こそが、最も大切だとわかっているのに。
おしゃれに着飾ってみたいし、美味しいものも食べたいし。
他人の評価が気になったり。
でもそんな、すべてが手に入らない境遇だからこそ、自分の未来のために何を選択すべきかが重大問題としていつも行く手を阻んでいるのかも。
ジョーったら、頑張ってるのに、真剣なのに、希望が打ち砕かれそうになったとき、つい、やさしい誰かに寄りかかってみたくなって、でも、それってただの甘え?
ジタバタもがく自分との闘いに勝ってこそ、誰かとともに人生を歩むことができるということのような。
エイミーの、わがままな拝金主義者のようで、でも実は、うちに秘めた純粋な心が、彼女を導く運命はやさしそうで。
美青年ローリーが、姉妹たちに翻弄されるさまはちょっとヘタレな感じですが。
一貫して描かれているのは、女性が、男性に頼らず経済的にも自立して、なりたい自分になるということが、いかに難しい時代だったか。
ジョーはラストに皮肉たっぷり、誰に対して? 私たちに対して?
それは多分、監督のグレタ・ガーウィグの問いかけでもあって。
姉妹たちはみな揃って、美しくたおやか、それでも足りない? いまの時代にも突き刺さってくる問題にちがいなく。
ともあれ、田舎町、都会、社交界での、美しくクラシカルな装いは魅力的。
それぞれのキャラクターやシチュエーションに似合う衣装の数々は、昔のファッション誌を眺めているかのような心地よさ。
ことに雪景色の中での、姉妹たちの行進は、愛らしく、まるで上等な絵本の一場面。
と、思ったら、アカデミー賞で衣装デザイン賞とってるんですね。
シネプラザサントムーンにて6月
by habits-beignets | 2020-07-14 14:38 | シネマのこと | Comments(0)