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映画 デリシュ!

レストラン、癒しの場所ですよね、ゆっくり料理を目で舌で雰囲気で堪能できて、胃袋も心も満たされる貴重な時間、これは特異な文化であるのかも。

その文化の始まり、の物語。

フランスで、世界初のレストラン、が生まれたドラマ。


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時は1979年、フランス革命直前、貴族の地位が微妙に揺らいでいる背景が、そこはかとなく漂っていますが、あくまで料理を楽しむのは貴族の特権、というか社交の道具としても価値があったよう、だから、料理人の腕前は、雇い主にはとても大事で、かの主人に認められることが料理人にとっても、この上ない名誉であったり。


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宮廷料理人のマンスロンも、主人から高い評価を得られることを最大の励みに、誇り高く料理の腕前を奮っていたわけだけれど、つい、自分の創作意欲を抑えきれずに言いつけに背いてしまった結果、散々な目に。

とっても美味しそうだったんですけどね、調理の過程がスクリーンいっぱい丁寧に映し出されて、こちらが喜んで食べてあげる、と思ってしまったぐらいなんですけど。


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けれど主人の怒りを買ってしまったマンスロン、自分は悪くないと思いつつも主人に喜んでもらえなかった傷心のまま、息子とともに田舎の実家に戻り、旅人の休息場、旅籠屋を営むけれど、料理は二度とするまいと誓って。

そこへ、どこかで彼の評判を知って、弟子にしてくれと女性がひとりで尋ねてきて。

強く拒み続けるマンスロンだったのだけれど。


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この女性が何者なのか、マンスロンも気になって仔細に観察し続けて、彼女の出自を探り当てるのだけれど、どうも、見ているうち、マンスロンの何枚もうわてのような、ものすごい執着と忍耐、さりげなく感じられる知性、そしてちょっと謎めいた行動。

むしろマンスロンよりもこの女性の背景の方が、けっこう気になってくるのに従って、ようやく彼女は料理を教えてもらい、有能な給仕に。


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いっぽう、旅籠屋に立ち寄る人々から伝えられるパリの様子に、マンスロンの息子は心踊らせ、父親が未だに貴族の料理人としての地位に未練を残しているのを、事あるごとに批判するのだけれど。

そこへ突然、マンスロンが再び元の主人に雇い直されるチャンスが訪れそうだという希望がふいに持ち上がり、それぞれの希望や思惑や不安が交錯しての大騒動、そして、静寂が。


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その時は悲劇のようでも、それがきっかけで、知らずに繋がれていた鎖から解き放たれ、初めて、本来の希望が見出される、ってあるのかも知れませんね。

各自が抱えていた固執や絶望が白日のもとにさらされることで、新たな未来の姿に向かう道に気づくことになったり。

マンスロンも、息子も、謎の女性も、気づきさえすれば簡単に手に入れることができる、幸福な世界を見つけることができたり。

ふっと頭を切り替える、大切さ。


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やがて、庶民的身なりの人々が連れ立ってやってきて、丁寧に作られた料理をゆったり楽しんでいるのを眺めていると、こちらも涙が出てくるほどうれしく微笑ましく、美しく整った形で、心を込めてもてなされることの心地よさって、生きている喜びを堪能できる大切な時間ですよね。


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世界初のレストランがどうやってできたのか、に興味を覚えて鑑賞したところもあったのですが、ドラマを見届けてみると、それよりも、自分の意思を大切に、社会に挑むことの大切さが、様々な視点から描かれているような。

フランス革命での価値観の転換と、大衆に開かれたレストランの誕生は、たしかに、必然的にリンクしているものなのかもしれませんね。


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それにしても、映像の美しさが際立って。

料理も、調度品も、窓から差し込む室内の様子も、すべての場面に渡って一幅の名画のよう、まさに静物画のようなワンショットがあったり、陰影、色彩がもう。


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途中、元祖フライドポテトみたいなのがお遊びっぽく出てきますが、美味しいのにねそれもうフランス人てば。


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シネプラザサントムーンにて9月


デリシュ! 公式サイト


by habits-beignets | 2022-09-11 18:13 | シネマのこと | Comments(0)

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