映画 グッバイ ・ゴダール!

ジャン=リュック・ゴダール、ヌーベルバーグの旗手、ということであまりに有名、

そう、作品はいかにも洗練されて芸術的、というか、いささか妙ちきりんぽかったり、

では、恋人としての彼は、いったいどんな? それが、圧倒されてちょっと切なく。


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ゴダールの二度目の妻、アンヌ・ヴィアゼムスキーの、自伝的小説が原作とのこと、

すでにあまりに有名、ブレイクしてた映画監督ですもの、まだ19才の彼女が、

心酔しきってしまうのも無理なさそう、いちいち詩的っぽい受け答えもオシャレ、

偉大な作家モーリアックを祖父にもつ、哲学科の学生だった彼女には、きっと刺激的。

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でも、まあ、恋愛の悲しさ、始まりの頃は、すべてが美しく輝いて、祝福の気配でも、

慣れ親しんでゆくにしたがって、魅力が難点に、刺激が煩わしさに、教えが侮辱に、

少女から大人への急成長には、彼との関わりが、強く作用していたかもしれないのに、

皮肉だけれど、だからこそ、あれほど尊敬していた恋人が、次第に幼稚なへんくつに。

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知り合った頃からとは、お互いの立場が、くるくる入れ替わるってよくありそう、

無名だった少女が、あっという間にその魅力と知性を開花させ、自分の力で輝いて、

もはや彼なしでも、どこへでも立って歩いていけるように、なってしまえば、

ことあるごとに疑問や不満、嫉妬とか焦燥あるいは絶望とか、たとえ愛のせいでも。

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それにしても、いつもゴダールの隣に寄り添うアンヌの、愛らしさといったら!

彼に守られていることの気分のよさプンプン、で、彼女を持ち歩けるゴダールも、

いかにも誇らしそう、バービー人形さながらの恋人ですもの、ブラウスやセーター、

パリ流行ファッションの、キュートさ、ミニのプリーツからほっそり伸びた脚。

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部屋の調度品なども、どれもオシャレでカッコよく、形も色も美しいんですよね、

ポイントの赤が、ことあるごとに効いていて、ていうか、実はこれ、ゴダール映画に

捧げるための映画、というつくり、監督のミシェル・アザナヴィシウスが、いかに、

映画を愛しているか、監督ゴダールに敬意を抱いているか、が伝わってくる演出が。

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いかにもゴダールのミューズでありそうなセリフ、その視線、笑っちゃうシーンも、

気がきいて、ことあるごとの仲間での議論やら揉め事も、どこか滑稽で微笑ましく、

血気盛んに、革命運動に身を投じる姿も、単にインテリの、自己顕示にも見えて、

そして終盤、もはややけっぱちなのか、孤独に革命に突っ走る巨匠の、陳腐な姿が。

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どんなに地位や名誉のある、おじさまでも、正体は、甘ったれ駄々っ子と同じなのかも、

でも、そこがまた、とんがった知性や魅力に、反映されてしまったりなのかも。

つきあい続けるには、かなり忍耐が必要、それでも、輝けた時間は、尊いだろうけど。

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シネプラザサントムーンにて10月


グッバイ ・ゴダール 公式サイト



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# by habits-beignets | 2018-11-05 16:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 万引き家族

なんともいえないタイトルですよね、いかにもダーティーな世界っぽく。

けれど、そこには、やさしさが、よろこびが、微笑ましさが、確実にあって。


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いかにも無邪気な少年が、でも、その眼光は、異様に鋭く、口はぎゅっと固く結び、

たいせつな任務を、着実に遂行、おまじないめいたルーチンも、まるで神聖な祈り、

家族の命運を、一手に引き受けてでもいるかのような振る舞いは、もはやけなげで、

咎めることすらためらわれて、それ、犯罪だよ、と諭すのは、野暮なようにも。

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だって、怠けて遊んで、誰かを傷つけようとしているわけではないんですもの、

少年の家族は、互いにいたわり、寄り添い、大人はきちんと働いてだっている、

なのに、暮らしてゆくには足りないのだ、生きてゆくのに食べたり、装ったり、

ときには寛いで、健やかな身体と心を保つのに、わずかな賃金ではまかなえない。


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悪いことだっていうのは承知だけれど、でも、それなりに真剣に生きているのに、

たかが杓子定規の善悪論に、どれほどの価値があるっていうの?

盗みは悪いっていうけれど、たとえばその、店に並んでるものって、誰のもの?

自分の子供を、大切にできない親がいる世の中の、何を信じればいいっていうの?

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欲しいもの、というよりも、本当に必要なものだけを、きちんと見極めて、

ときには、人生をかける覚悟で、奪おうとする、彼らの生き方は、むしろ純粋で、

うわべだけを取りつくろった社会の、窪地のような一軒家は、雑然としていても、

とても豊か、すぐ隣にいつも誰かがくっついて、鬱陶しいけど、みな愛しくて。

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それでも、いつまでも家の中だけで生きてゆけるわけもなくて、少年も、少女も、

外の世界の誰かと、関わる機会はやっぱりどうしても、だってまだ、何も知らない、

いろんな人の、いろんな気持ちや、いろんな人生、想像したり、わかってみたくて、

ひろい世界には、もっと自分の味方がいるかも、正しい道が、ほかにあるのかも。

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大人になるまえの、避けて通れない、疑問ばかりの日々、痛くても、悲しくても、

本当のことに、立ち向かってゆきたい抑えられない欲求があって、我慢できなくて、

それまで信じていた世界を、いっそ壊してしまいたくなって、どこか、別の場所で、

自分ひとりの力で、やっていけるか、飛び出してしまいたくなるのかも。


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家族ってたぶん、そんな状況でも、離れても、どこかで強くつながっているものでは、

つながり方は、それぞれだろうけれど、ふと懐かしく、ときにそばに寄り添って、

たとえ世間では、許されなくても、互いの気持ちを思いやる習慣は、何よりも大事で、

法律とか、常識とか、固定観念では、とらえられない、生き物めいた集団なのでは。



貧しくても、余裕がなくても、女の子が可愛くみえるように、みなであれこれ、

微笑ましく、おしゃれ心って、やさしさと通じる、大切なもののような気配。


シネプラザサントムーンにて8月


万引き家族 公式サイト


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# by habits-beignets | 2018-08-12 19:35 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ファントム・スレッド


始まってすぐ、胸ときめいてしまう、オートクチュールハウスの朝の光景、

ここで、これから、美しいドレスが、生まれようとしている、淡く白い部屋、

高名なデザイナーの、身支度すら、華麗で高貴な音楽にのって、芸術じみて。

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けれど、かけがえのない一着のドレスのために、つねに腕を振るう仕立て屋は、

暮らしすべてを仕事にささげ、だから、他人をよせつけない気難しい面が、

美しい女性のやさしい言葉より、静寂を欲する頑さは、たしかに、一流職人には、

必要な気質かもしれないけれど、彼に魅せられて近づきたい者には、激しい苦痛が。

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もしや、彼の望みはただ、理想の服を作り上げること、女性を見いだし選ぶのも、

それこそが唯一の基準で、理由で、目的なのでは、偶然出会ったウェイトレスを、

見初めたのも、はにかんだ視線の交差や、愛らしいやりとりゆえとかではなく、

制服姿の彼女のシルエット、立ち姿に、新しい服のデザインを着想したからでは。

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おそらく最初の出会いのときから、デザイナーに心を奪われたウェイトレスが、

期待していた二人の時間とは、すこしずれてしまった最初のデートの出来事が、

今後の二人の関係のむずかしさを、如実にあらわしているようで、純粋な愛って

何なの? 彼女が求めるものと、彼が求めるものの、行き違いを、どうすれば?

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誰かを熱烈に愛したとき、やっぱり自分も愛されたくて、必要とされたくて、

でも、その必要とされたいものって、あくまで自分が望んで与えられるもので、

捧げることに喜びを感じられるものでしかなかったりして、不幸にも、それを

拒絶されてしまえば、耐えがたい悲しみとか苦しみ、無力感しかなかったり。

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自分の愛が迷惑がられている、相手が不快に感じている、と悟ったときの絶望感、

それでも、自分の存在は必要とされていることの矛盾に、やりきれなさは増して、

彼を、自分の愛の世界に引き入れたい、厳格で孤独な彼の世界から抜け出させて、

うわべを飾るドレスの世界から、生身の体の世界に、引きずりこみたくなったり。

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始終ドレスのことに心を傾けて、そんな彼女のひとりよがりの愛情など、鬱陶しいだけ、

心を乱されるのは願い下げだと本心から思っても、いざ、失いそうな危機を接すると、

力ずくでもたぐり寄せたくなってしまう、気持ちや考えどおりに、動けないせつなさ、

自分のスタイルを、静かに守りたい欲求と、雑音をたてられても、すがりたい欲求。

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互いに、激しい反発を抱えながらも、狂おしく、やはり求め合ってしまう二人が、

やがて、見いだそうとする決着点は、悲しかったり恐ろしかったり愚かしかったり、

演じるダニエル・デイ=ルイスの、視線、表情、の、ものすごさ、と相まって、

ジョニー・グリーンウッドの音楽に彩られ、究極の、愛のかたちの、迫力が。

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物語の背景の、クチュールハウスの描写がすてきで、見惚れてしまいます。

レース生地を手仕事で丁寧に縫ってゆく、たくさんのお針子さん。

ファントム・スレッドとは、「東ロンドンのお針子たちが、王族や貴族に長時間衣装を縫い続け、仕事場の外でも見えない糸を縫い続けたという逸話からきている。(映画チラシより)」とのことです。


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ファントム・スレッド 公式サイト


シネプラザサントムーンにて7月


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# by habits-beignets | 2018-07-24 16:02 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 モリのいる場所


身近に、 すぐ足もとに存在しているものたちに、いちいち気づいて、じっと見て、

語りかけ、寄りそい、何度も、何時間も、何十年もくり返すことの、神々しさ。



ぱっと見、稚拙な作風だけれど、すでに著名な画家となった94歳のじいさんが、

のんびり朝食を終えてから、なんだか妙ちきりんな騒ぎを経ての、静かな夜まで、

とある一日をとおしての、いかに変わり者で、いかにまわりに愛されていたかが、

描かれるのですが、これが、高名な芸術家らしさのない、風体のおかしみが。

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その、目に映るもの気にかかるものの、限りなさったら、とかげ、かまきり、蝶、

蟻、鳥、魚、樹々、葉っぱ、石ころ、水面、それらを、なにひとつ漏らすまい、

どれも等しく、謎にみちて、このうえなく大切で、親密なものたちで、だから、

すべてと細やかにかかわろうとしているうちに、はるか遠くまで道に迷って。

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なんて、それほど広くはない自宅の庭が、もはや、世界の果てまでの冒険のよう、

あたかも、樹々や草がのびのび生い茂ったジャングルめいて、なんと地底まで。

長いあいだ、一歩も外にでていないという伝説も、無理なく信じられるけれど、

高いところから見下ろせば、たとえ小さな庭だとしても、広大な宇宙につながって。

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「好きなものしか書きませんから」の夫人の言葉の、徹底ぶりは、笑いを誘って、

まともに暮らしている者たちは、実際は、戸惑ったり、困ったり、呆気にとられて、

けれど、有名人相手に、あるいは老人相手に、文句もいえず、従ってみるうち、

その心持ちの、純粋さ、素朴さに、引き込まれて、芸術ってきっとそんな潤いが。

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単純な輪郭線と色彩の、虫や、鳥や、獣は、子供でも描けそうに見えるけれど、

あきれるほどの時間を、ただ見つめることだけに費やしたからこその、

迷いのない、大らかでのびのびした、筆致であるのだなあ、と想像できて、

上手とか、下手とか、超越した、清々しさみたいなものが、魅力であるのかも。

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冴えなくて、だらしなくて、頼りない、風貌だけれど、何ものにもこだわらない、

世間一般の価値観など、どこ吹く風の暮らしぶりは、みんな実は、羨ましかったり、

たいせつな庭で生きるものたちが、マンション建設で、どうなることやらと、

夫人はやきもきしているようだけれど、画家本人は、どこか達観の雰囲気が。

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じつは、個人的なことですが、熊谷守一はずっと以前からとても好きで、

まだ、開館まもない豊島区の美術館を訪れて、その愛らしさに感激したことが。

手元に、昭和53年発行の、「アサヒグラフ別冊 美術特集 熊谷守一」が、

あるのだけれど、開いてみたら、映画の場面がけっこう忠実で驚きました。

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若いときの作品は、ふつうにわかりやすく上手なかんじだったんですね。

純粋に、まっすぐ、描きつづけると、絵の構図は単純に、のびのびするのかも。


シネプラザサントムーンにて7月


モリのいる場所 公式サイト




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# by habits-beignets | 2018-07-04 21:13 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 シェイプ・オブ・ウォーター

陽の光から遠ざかった、静かな、水底のような世界で暮らす、ひとびと、

映像の世界でのみ、そとの社会をかいま見ることができる者たちが、触れあって。

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終始、薄暗く、人工的な灯がたよりな、夜の研究所の世界は、たえずどこか不穏で、

陰謀や猜疑が、いたるところで渦巻いていそうな、東西冷戦時代を象徴させて、

言葉を発せないまま、つましい暮らしの日々をくり返す、主人公の女性が、

ひそやかに、すこしずつ、自分の世界を築きあげてゆくのには、危ない雰囲気が。

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そんな場所で、突如、関わるようになった、異形のものを、心に受け入れたのは、

なにか自分と通じるものを感じたからかもしれないけれど、美しく、可憐な存在を、

見極めるたしかな目を、きっと持っていたからでは? 孤独でいたわしい存在を、

放っておくことが、できなかったからでは? 隣人や同僚を、大切に思うように。

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いかにも大事そうに、紙袋を抱いて家を出る彼女の姿は、まるで、少女のように、

愛らしく、なかにはささやかな、贈りもの? お弁当? 仕草や視線での言葉が、

通じあって、気持ちが通いあって、その喜びが、日ごとにふくれあがって、

冷酷な事情のもとに、水槽につながれている彼なしでは、生きていけなさそうに。

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分厚いガラスを挟んだ、水中と外との、奇妙なロマンスは、けれど、いつまでも、

許されるわけもなく、残酷な終わりの気配がただよって、ひとそれぞれ、

いろいろな思惑、与えられた立場で、強者は弱者を、容赦なくねじ伏せようと、

暴力もいとわない、嘲られ、貶められるのは、やはり多数からはずれた者たち。

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それでも、誰にも奪われたくない、奪わせてはいけない、と彼女が決めたとき、

立ち向かう相手が何者であろうと、恐れず、見境ないほど、まっすぐ突き進んで、

その迷いのなさに、まわりの心ある者たちも、その本性をあぶり出されるように、

自らの気持ちに率直に、行動をおこす、まるで秘密結社ででもあったかのように。

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どれほど、求める気持ちが強くても、愛したい、愛してほしいと願っても、

まったく同じ世界で、生きているわけではない、それぞれが、つながれるのは、

ほんの一瞬に過ぎないのは、いつだって誰だって、そうなのかもしれないけれど、

大切に思っていることを、伝えたい、そのために、自分のすべてを賭けてでも。


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そんな、ピュアな気持ちこそが、閉塞気味の社会を救うことができる、力かも、

異形であることを、むしろ畏れをもって迎えることの、麗しさ、尊さこそが。

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60年代のアメリカのファッションや、テレビ、映画、カメラ、が映す映像が、

暗がりで繰り広げられる、大人のファンタジー世界を、妖艶にうつくしく。


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シネプラザサントムーンにて3月

シェイプ・オブ・ウォーター 公式サイト


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# by habits-beignets | 2018-03-28 00:47 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー