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カテゴリ:シネマのこと( 105 )

『マッピー』用ボーダー

映画 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

ちょっとこの頃、孤独との向き合いかた、身につまされる課題であったような。

19世紀のフランスの片田舎、貧しい郵便配達人がたった一人で!33年かけて!築き上げた宮殿、いまでは国の重要建造物に指定された、建造物の実話とのこと。



ひたすら歩きつづけて、郵便を届けるんですね、この時代、山超え、谷超え、いかにも真面目そうなシュヴァル、ときおり、景色を楽しむ気配はあるけれど、寡黙で、局長から渡される、行き先不明の絵葉書を、やけに愛おしそうに眺めて、つましい暮らし、つらく悲しい出来事があっても、どこか淡々として見えて。

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他人と接するのが苦手らしく、言葉は少なく、それでも、気にかけてくれる人には、素直に心を寄り添わせて、静かに語らううち、ともに人生を歩む女性と巡り会い、会話を楽しむそぶりもないシュヴァル、心のうちに惹かれる彼女の、繊細な優しさ、やがて娘が誕生するのですが、どうしよう、シュヴァルは、あたふた狼狽えて。

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ふとしたきっかけから、娘かわいさに、あふれほとばしる愛情の、ゆくえが!

配達の道すがら、たまたまつまずいた、石の形は、たしかに奇妙だったけれど、それを掘り起こす執念からして、やはり只者ではなく、そして、なぜに宮殿を?

たった一つの石を見て、娘のために宮殿をと、どうして思いついたのでしょう。

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思いついたって、実現させないでしょう普通、と激しくツッコミたくなるけれど、シュヴァルは黙々、誰に理解されずとも、過酷であろうとも、迷わず怯まず頑なに、郵便配達だって相当な労働量だと思うのですけれど、そのあと、建築、大工仕事、図面もないみたいなんですよ、なのに、拾った石を積んだり、セメント細工したり。

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石も選んでいるらしく、探しながらの郵便配達、本や絵葉書の写真を参考に、いつも歩く道すがらの夢想を、現実にしようとばかりに、休まず、生き生きと、宮殿とともに成長してきた娘、アリスは、もはや小さな女王様、シュヴァルの側で、建築中の宮殿を遊び場に、ここが大好き、パパが大好き、親子3人の幸福が。

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他人と交わるのが、あれほど苦手であったのに、宮殿づくりは、シュヴァルの言葉、誰か、愛すべき人たちとの、交歓の手段であったのかもしれませんね、知り合いも、知らない人も、彼に惹かれて、いつの間にか、訪ねてくるようになってきて、遠い昔に、気持ちを伝えることができなかった息子とも、穏やかな時間が訪れて。

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大切な気持ちがあるのに、それを伝えるのって、たしかにとても、難しい、自分のすべてをそのまま、わかってもらえるのも、無理そうだったり怖かったり、でも、ただ何かを信じて一心に、美しいものを築き上げる姿勢には、吸引力が、暖かな視線がそこかしこから、集まってきて、それは誰をも絶望の淵から救う力に。

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かつては、たぶんしまいこんでいた、悲しみや苦しみ、感謝や喜び、自分の感情を、まっすぐ曝露できるように、表情ゆたかに、つたえられるようになったのは、まわりの優しさと、それに支えられた自分に、自信みたいなものを感じたから、なにかをやり遂げ、その仕事を愛してくれる人たちを知ることができたからでは。

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そりゃあ人生観、変わりますよね、ものすごい細工の宮殿だもの、愛なしでは無理、素朴派建築物、と称されるようですけれど、かの宮殿が、どんな愛溢れる人たちの、微笑ましいやりとり、悲しみとの戦いを、見届けたのか、命が吹き込まれたように。

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家族との暖かなひととき、職場で称えられたときの、シュヴァルの表情が愛らしく、奥さんも、娘も、息子も、それぞれの接し方での愛情表現が、胸を打って、冒頭の、息子さんとの、切ない場面が、最後まで、尾を引いて、印象に残って。

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5月下旬の映画館は、一席ごと空けてのチケット、いえ、そもそも少人数でしたが、映画館で大画面で鑑賞するのって、やっぱり気持ちがよいですね。


シネプラザサントムーンにて5月


シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 公式サイト



by habits-beignets | 2020-05-28 16:49 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ジョジョ・ラビット

舞台は戦時中のドイツ、いかにも純真そうな愛らしい少年が、なんだかワクワク、

お祭り前のように、はしゃぐ気持ちを共有する心の友は、なんと、あの、独裁者。


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ヒトラーが心の友なんて、ちょっとギョッとしてしまうけれど、少年にはとても大切、

いつもそばにいて、怖いとき、悲しいとき、励ましたり、慰めたり、頼もしい親友、

あるいは、ペットのよう? 彼のために頑張らなくては、期待に応えなければ、

その愛を失わないよう、必死になれる存在って、確かに、ありがたいものなのかも。

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お父さんは遠征中、大好きなお母さんと二人暮らし、いかした美しいお母さんは、

いつだって少年ジョジョの圧倒的な味方、息子のためには軍人だって物ともせず、

容赦なく立回るさまは、やや滑稽なほど爽快で、いやこの女性、只者ではなさそう、

いつも快活ではあるけれど、どこかシニカル、肝のすわった様子が感じられて。

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ナチスに忠誠を誓い、戦時下だけれれど、それなりに平穏に暮らすジョジョに、

ある日、大事件が、家の二階、ひっそり眠ったままのような部屋に、不穏な気配、

恐怖にふるえながら立ち向かった先で、さらにさらに恐怖は雪だるま式に増殖、

なんと相手はバケモノ、言うなりにならなければ、自分は殺されてしまうかも。

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ユダヤ人、まだ出会ったことがなく、教えられるまま、自分たちを害する怪物だと、

盲目的に信じてしまうのは、人生経験の少なさゆえであるかもだけれど、それって、

少年だけの問題なんでしょうか、けれど、ジョジョは、戦い勝つためにとはいえ、

自分の敵、二階のユダヤ人少女と対話を試み、彼女からユダヤ人を学ぼうとして。

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たとえ、不毛な内容でも、真実ばかりが語られなくても、対話を重ねるうち、

化学反応が起きて、生身の姿を目にしてしまえば、引き込まれてゆく扉が開いて、

しばしば、嘘が散りばめられても、信頼と愛情は、損なわれることはなくて、

心の友ヒトラーに咎められてしまっても、それは、ジョジョとお母さんの間でも。

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自分が抱えているイメージと、現実社会で出会う異物と、その板挟みにあったとき、

どちらへ一歩、踏み出すことができるか、自分が変わることを恐れず行動できるか、

それって、いつの時代でも、どこの世界でも、大切なことだっていうことが、

ジョジョの心の変化から、感じられ、偏見や先入観と戦うのって、とても大切。

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スカーレット・ヨハンソン演じるお母さんが、ものすごく頼もしくてかっこいい!

とりわけ装い、出で立ちが! 街全体も敗戦間近とは思えない、おしゃれさですが、

お母さんのツートンカラーの紐靴と色鮮やかなコートがもう、目に焼きついて、

まさにアイコン、遠くからでもすぐ見つけられる、堂々たる彼女の生き様を放って。

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そういえば、紐靴って、たしかに、妙に気になってしまう存在感があるような、

きちんと結べるようになることが、一人前の大人になる試練のようでもあって、

ジョジョが結べるようになるのは、大人の世界の厳しさを知るときかも、

ユダヤ少女と心が通うとき、お母さんの秘密を知るとき、戦争の真の姿を知るとき。

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ストーリー自体は、やや深刻で悲劇があったりもするのだけれど、どこかコミカル、

ジョジョのロボット姿、現実の親友ヨーキーの愛らしさ、ジョジョの研究メモ、

お母さんとユダヤ少女の、終戦したらやりたいこと、ジョジョと関わる大尉の、

バカ軍人装った正体も、明るく華やかで、寓話かもですね、ヒトラーネタの。

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それからともかく、みんな、お洋服など装いがとっても素敵、絵本のよう。


シネプラザサントムーンにて1月


ジョジョ・ラビット 公式サイト


by habits-beignets | 2020-01-31 21:37 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 風をつかまえた少年

災害が起きると、日々、エネルギーに依存している現実を、思い知らされますよね、

電気のない暮らしが、いかに過酷か、そしてそれを手に入れることがどれほど大切か。

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アフリカのマラウイでは、2001年でも、電力は遠い国の魔法のような存在、

農業で生計を立て、一家の食料も食いぶちも、天候しだいの不安な暮らしぶり、

できる限りの工夫をこらし、果ては窮状を政府に訴えても、抜本的な解決はならず、

自然は容赦ないですね、大干ばつで、飢え死にが、すぐそこの、ありふれた光景に。

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好奇心や知識欲が旺盛で、優秀なのに、学費が払えず授業が受けられない少年が、
ひょんなことから、電気を起こす仕組みに引きつけられて、情熱のまま図書館に、

そこで目に入った表紙のインパクト! 風で電気が! 自然の力でエネルギーが!

希望の光がみえた瞬間の喜び、これで家族が、集落のみんなが、生きられる。

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けれど、彼にはっきり見えている構想でも、まわりのみんなと共有するのは難しく、

言葉で説明されても、他人の考えを理解するのって、なかなか難しいですよね、

面倒で不確かなことには、関わりたくなかったり、それでも、ともかくやってみる、

小さな風ぐるまのささやかな威力が、若者たちの気力も呼び起こし、久々の歓声が。

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もはや、彼ら若者たちにとっては夢ではない風力発電に見えたけれど、じっさいに、

作るとなるとやっぱり大変、そもそも、材料を見つけるのが一苦労なんですね、

廃品置場をあさったり、不用品を再利用しようと必死になっても、それにも限界が、

肝心の、絶対に必要な部品が手に入らない、唯一の方法には大人の協力が必要で。

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新しいものをゼロから作ろうとするとき、社会から疎んじられる現実のもどかしさ、

知らないものを信じようとしない大人と、あらゆる可能性を信じる若者の対決が、

まさに命をかけた切迫した状況で繰り広げられて、でも、よくよく考えてみれば、

このまま何もしないのでは失うだけでは? 考えることから逃れるのは、敗北では?

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実話ということなのですが、少年の知力と行動力、純粋な情熱もさることながら、

若い教師や図書館の司書など、まわりの大人たちの、静かな協力も、微笑ましく、

また、目先の利益のために、自分の首を絞めることになってしまう経済システム、

批判を許さない、民主主義とは名ばかりの、腐敗した政治の恐ろしさは苦々しく。

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未来を勝ち取るためには、どんな困難な状況でも、諦めないで考え続けること、

今まで見たことがないものでも、恐れないで、作ってみることの、大切さが。

荒れ果てた土地で生きるのは無理だと、逃げるのも、一つの選択肢ではあるけれど、

その場に留まる方法を、必死で探して実践すれば、生きられる場所が増えるから。

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エンディングに、実際の風車が映るのですが、本当に、タイヤが、美しい。

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時間がなくても、お金がなくても、少しずつでも考え続ければきっと未来が。

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シネプラザサントムーンにて12月


風をつかまえた少年 公式サイト


by habits-beignets | 2019-12-16 01:21 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 誰もがそれを知っている

ふりそそぐ陽光を浴びて、楽しげに疾走する車からの眺めは自然豊か、

遠く離れた家族とも、スマホでつながりながら、彼らの笑顔はかがやいて。

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物語はじまってすぐ、出会っては、テンポよく弾けるように、交わされる会話、

どうやら、遠く南米からひさびさに、妹の結婚式のために、子連れで帰郷した姉、

家族や友人たちとの再会に、ほころぶ笑顔は幸福を呼びよせる力さえ、ありそうで、

生まれ育った場所で、慣れ親しんだ人々と過ごす、その喜びが微笑ましかったのに。

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誰もがみな、祝福ではしゃいで、結婚式てそうですよね、新郎新婦を囃しながら、

つどった人たちみな、飲めや歌えや、楽しい気分を共有して増幅させて、

誰がどこで、何をしているのやら、わけわからなくなっても構わない高揚感、

そんな中で、ほんの一瞬の隙に、いきなり、氷水でも浴びせられたような悲劇が。

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いかにも清らかで美しい娘さんだったんですよ、なのに突然、姿を消して、

アルゼンチンから、母親に連れられて、初めて訪れたスペインで誘拐なんて、

まさに気が狂ったかのような母親、そして、事情を知った、家族、友人、

警察に届ければ命はない、と脅されて、困惑、憔悴、絶望、翻弄される彼ら。

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愛する者が、いなくなってしまったショックに、どうして?誰が?の猜疑心、

そもそも、なぜ彼女が狙われたのか、という疑問から、それぞれが抱える事情が、

徐々に、まるで、幸せを守っていた結び目が、ゆるんで、ほどけてゆくように、

穏やかな、自分たちの暮らしが、あっけなく、ばらばらに、崩れてゆく気配が。

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窮地に陥ったときって、私たちは試されますよね、何がいちばん、大切なのか、

日々、たぶん、自分にとっての優先順位は、更新されて、その確認を迫られて、

でも、それってとても、むずかしくて、切なかったりもして、苦しい作業、

けれど、逃げないで立ち向かわないと、無力な自分を、きっと後悔することに。

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愛すべき少女を、取り戻すために、何を犠牲にすることができるのか、

誰に犠牲を求めるのか、少女との関係性を、それぞれが、見つめながら、

一刻の猶予も許されず、極限状態に追いつめられた彼らが、導かれた答えに、

希望や、救いが、見出されたのかは、立場によって、考え方によって、きっと。

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一面にひろがるぶどう畑と、労働する人々、輝きを放つワインの、神々しさに、

それらを慈しみ、育てあげた農園主の男の、情念の深さが、伝わってきて、

ひょんなことから、板挟みにおちいった、彼の苦悩に思いを寄せれば、胸は痛み、

すっかり忘れてしまったほどの、過去の傷に、深追いされた境遇の悲しさが。

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それでも、困難に打ち勝ち、何かを取り戻した心持ちは、清々しく幸福なのかも。

悔いのない決断を、恐れずに下した自分には、励まされる人生であるのかも。

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イランの名匠、アスガー・ファルハディ監督が、長年、構想を練り続け、

ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム夫妻に当て書きした脚本とのこと、

過去に引き戻された、嘆きや祈りが、鮮やかに、大時計の歯車の動きとともに。

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シネプラザサントムーンにて9月


誰もがそれを知っている 公式サイト


by habits-beignets | 2019-09-16 20:47 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ビリーブ 未来への大逆転

日本はまだまだ、女性の社会的地位は低い、なんて、問題になったりしますけど、

そういった声を、堂々と、発信できることだけでも、大進歩だったということが。


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アメリカの、1950年代とか60年代とか、さらっと眺めているかんじでは、

それほどひどく、女性が差別されているようには、見受けられないんですけど、

でも、確かに、細かく注意してみると、ハーバードでは、女学生は数えるほど、

表面上は、ちやほや、丁寧に対応されても、なんとなく見下されている空気感が。

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尊重されているように装われても、根深い女性軽視の現実に、ふつふつモヤモヤ、

おなじ法学生の夫と、幼い娘を持つ女学生、ルース・ギンズバーグは、、学生、妻、

母親の三足のわらじ、日々いそがしさに追われつつ、理解ある夫に愚痴りながらも、

自らの信念のまま、勉学にいそしんでいたけれど、とつじょ、夫が大病に襲われて。


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夫婦力あわせての懸命の闘病の甲斐あって、無事回復、子供も二人に、元気に育ち、

夫は晴れて弁護士に、それなり順風満帆なのだけれど、ルースの就職ばかりは座礁、

ハーバードもコロンビアも、どちらも優秀な成績であったのに、女性というだけで、

念願の弁護士への道は閉ざされ、大学で職は得たものの、差別への疑問はますます。


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差別はいけない、と一応の共通認識は、あるようなんです、1970年代の社会、

黒人への差別も禁じられ、それでも、性別からの扱いの差は、合理性があるとでも、

言いたげで、女性は根っから主婦であったり母であったりするもの、との固定観念、

対して男は、社会で働くべきで、家事をこなすなど、まるで想定されていない世界。

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多様性、個人的事情などが、考慮されにくい、思考停止状態の、窮屈な世の中では、

圧倒的多数から、こぼれ落ちた存在は、無邪気なまでに無視されて、拾われず、

今こそ大声を、長時間かけてでも、世の中にひろく、届くように、あげなければ、

たぶんその、使命感に突き動かされての、人生賭けてのたいせつな勝負に、挑んで。

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現役の最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグの、若かりし日の挑戦は、

いまは当然とされている、法の下の平等を、現実に勝ち取るためには、いかに、

大多数の圧力にも屈しない、確かな信念と粘り強さが必要だったかということが、

よく伝わって、過去の事例ばかり持ち出さず、未来を見据えることの大切さが。

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ほぼ、負け戦にみえた、裁判所での口頭弁論の後半、情熱に従っての大演説は、

身をもって差別に苦しんだ者だからこその、説得力で、遅々としてであっても、

諦めず、未来を担う者たちへの、愛情こそが、世の中を豊かにすると、訴えて。



ラスト、実在のルース本人の姿が、登場してくれるのですが、かっこよいですね。

具体的に、現実的に、差別をなくすことって、細心の注意と忍耐執念が必要そう。

ジェンダー、て言葉、なるほど、ソフトで受け入れやすいから、必要だったんですね。

どんなに劣勢でも、理不尽だと感じたら、戦う覚悟があれば、道は拓けるって励まされ。


シネプラザサントムーンにて5月


ビリーブ 未来への大逆転 公式サイト



by habits-beignets | 2019-05-15 19:37 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 女王陛下のお気に入り

うわべは、美しく気高く知性的、けれど、ひと皮めくれば、無尽蔵の欲望、陰謀、

きらびやかな世界ゆえなのか、なかなかのグロテスクぶりが、妙な魅力を放って。



舞台は、18世紀のイングランド、アン女王が君臨する宮殿であるのだけれど、

豪華絢爛の貴族社会が描かれる一方で、どこか生臭く漂う、生き物の気配、

体裁をとりつくろう、政治や社交だけではなく、生活の場でもある王宮の、闇、

暗がりで、使用人も貴族も政治家も入り乱れての容赦ない死闘が、繰り返されて。

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そもそも、アン女王とレディ・サラとの、ふたりだけにしか通じない呼び名とか、

幼なじみならではの、昔話の含み笑いとか、嫌らしく、いかがわしく、怪しげで、

それが、国民の生命にもかかわる政治とも、結びついてしまうのが、恐ろしく、

だから、とつじょ現れた、サラの従妹、若いアビゲイルが、爽やかな風のように。


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ところが、この世界で生きてゆく住人は、誰しも野心と策略なしにはいられずに、

やられたら、やり返す、の徹底した反骨精神が、日常どこでもぶつかり合い、

感謝や尊敬や同情の言葉や態度も、裏があって当然、アビゲイルも言うに及ばず、

身の破滅の危険すら、顧みず、大胆で過激な身のこなしは、あまりにも鮮やかで。

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最初は、女王を意のままにあやつっているかのように振る舞う、レディ・サラの、

高慢さが、鼻について、なんとか懲らしめてやりたい気持ちに、なったけれど、

みるみる、その地位が脅かされ、不安や焦りの色が生じてくると、いささか不憫、

ほんのちょっとの純粋さや、いじらしさが、やや哀れに感じられて、せつなくも。

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女性たちの恋情、みたいにも描かれているけれど、何かを激しく欲するって、

わけわからないまま狂ってしまうことに、躊躇しないで、突き進むことかも、

むしろ、我にかえって、虚しさを覚えることが、恐ろしく、痴情さえ命づな、

平穏さや静けさは、不安や恐怖を呼び起こし、ありふれた幸福は、退屈に。

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宮殿でうごめく、それぞれが、勝ちとるべく躍起になっているのは、女王の寵愛、

彼女に愛されるかどうかが、自らの立場や生命までをも、決定づけることに、

それを知るからこそ、あっちにこっちに揺れる素ぶり、わがまま放題の女王さま、

けれど、引きこもりの、すさんだ姿には、言い知れない孤独の哀しみの、暗い影。

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17匹のうさぎを部屋に飼う異様さが、アン女王の心の傷の深さを象徴して、

本当のあたたかな愛情を、得られない境遇の、やりきれなさが、疲弊の色濃く、

呆けた、その表情を、素朴なひとりの未亡人にみせて、権力はあっても、虚しく、

だから、当たり散らすのもやむなし、当たり散らされる相手も、やむなし、と。

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ひどい振るまいも、それは当人の寂しさゆえ、と思い至ると、現実の自分を反省。

かなりエグいストーリーの映画なのだけれど、意外にも史実に即しているらしく、

びっくりの恐ろしさ、演出はしてるだろうけれど、登場人物の顛末は当たってて。

演者、とくに女性陣、素晴らしかったですね、女王様はオスカー受賞、よかった。

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シネプラザサントムーンにて2月


女王陛下のお気に入り 公式サイト


by habits-beignets | 2019-03-09 04:09 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛

いま、自分の幸福の度合いが、じゅうぶんで何をも必要としないほどなのか、

たしかに何かが足りなくて、それを欲して求めるべきなのかって、むずかしい。

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修道院で暮らしていた孤児のソフィア、裕福な商人の中年男、コルネリスに、

嫁ぐのですが、修道院長の言葉にも表れているように、要は、就職なんですね、

おそらく、若さ、美しさ、体丈夫さ、真面目で慎み深いところを、買われて、

貧しい少女から、お屋敷での若奥さまの暮らしになって、それはありがたく。

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就職ですから、彼女には課された仕事があるわけで、むろんそれは、あとつぎ、

お家を絶やさず、財産がきちんと受け継がれることが、夫には大切な問題、

ともに暮らす夫婦ですから、互いを思いやるあたたかな愛情は、あるけれど、

しばしば男女におとずれる、狂おしい熱情は、惜しいことに欠けらもなくて。

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じっと、射ぬくほどに見つめられれば、不意打ちに、官能への扉が開かれて、

もはや、抗うことは、やはり難しく、一瞬のためらいはあっても、なのよね、

夫のやさしさに感謝して、彼へのいたわりの気持ちを、変わらず持ち続けても、

若い画家に、走りたい心と体を、欺くことができないのは、純粋で未熟だから?



先のことはわからなくても、今この瞬間の喜びと勢いで、不確かな幸福のために、

大博打を打ってしまうのは、バブルそのもの、なのかも、落ち着いて考えれば、

安心して穏やかに暮らしてゆけることの、大切さを、省みることができるのに、

彼こそすべてと、夢中になっているときには、現実の幸福を見逃してしまう。



それにしても、チューリップの美しさが、人々を狂乱の世界へと招いたなんて、

美しく希少なもののために、一瞬のうちに莫大な金が、動いたりするんですね、

そんなもの、いつかそれほどの価値がなくなる、と冷静に見通せる賢人こそ、

たよるべき相手なのに、どこかつまらなく感じてしまったりは、たしかに。



神聖な場所の修道院でも、チューリップ栽培に関わっていたり、まるで商売人、

17世紀のオランダの風俗が、生き生きと描かれて、富める者も貧しい者も、

ごった返しの様相、ちょっとしたチャンスで、大金持ちになれる時代だったの?

というか、いまの時代と、あまり変わらないかもですね、投機に群がる人たち。


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フェルメールの絵の世界を描きたい、と創られた作品らしく、絵画的な色彩、

特に、やはりブルーの輝きがまぶしく、当時のファッションも堪能できて。

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いろいろの行き違いや、策略やら、失態やらの果てに、それぞれの立場の人たち、

悲しかったり悔しかったり憤ったりはあったけれど、みな、幸福のほのかな光を、

見つけられたような、物語の結びに、ほっと暖かく微笑ましい気持ちに。

失意のどん底から這い上がるにしても、博打で幸せはつかめないんですね。


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シネプラザサントムーンにて1月


チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 公式サイト


by habits-beignets | 2019-01-15 14:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 日日是好日

もう、年の瀬、あっという間に一年がすぎてしまうことに、呆然と、少し焦って、

何もしなかった、何もできなかった、いつも悲しくなるけれど、日々はきっと。

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茶道って、側から眺めてるだけでは、ちょっと面倒くさそうな、礼儀作法の様式美、

そんな印象でもありそうだけれど、一歩その道に足を踏み入れると、世界の奥深さ、

思慮深さに、びっくり、理屈は何も語られなくとも、根拠は何も示されなくとも、

ただ、習ったとおりの所作を、何度も何度も、くり返すうちに、体得できる何かが。

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かたちをなぞることから、身体に、思考に、じわじわ染み込んでくる、想念とか、

そこから派生しての知恵とか、悟りとか、気づきとか、同じものを見たり聞いたり、

しているだけなのに、目の前に存在しているものたちが、突如ちがって映ってくる、

ここちよい驚きは、平凡な毎日をくり返すだけの、これからにも、希望の気配が。

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道に迷っていた20歳の大学生の女の子が、たまたま茶道と出合い、困惑しつつも、

お菓子の美味しさ、お点前の面白さに興味を覚えるうち、いささか中毒気味に、

まるで、茶室という空間に癒しを求めるよう通いつづけるさまは、健気で、

愛らしく、いくらか生真面目で不器用だった彼女の、心持ちも徐々にしなやかに。

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就職が難しかったり、恋でつまずいたり、現実社会で敷かれたレールを意識しては、

自分の存在の頼りなさにしじゅう鬱鬱、誰かと比べては不甲斐なさを思わず嘆いて、

それでも、しがみつく思いでお稽古を続ければ、移りゆく季節を、過ぎゆく年月を、

愛おしむ気持ちが、知らず知らずのうちに、心の奥底から溢れ、湧きあがって。

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いまの社会で暮らしていると、なかなか、時のながれに、想いを寄せる機会って、

ないかもしれない、やるべきこと、やらなければいけないことのおびただしさに、

心を奪われて、目のまえに広がっている空間を、じっと見つめることなど、

思いつかず省いて、美しく大切なものの在り処を、見つけられなくなってしまう。

映画 日日是好日_b0190930_16350640.jpg


美味しいお茶でもてなすこと、こころよさをその場にいる皆で共有すること、

かすかな、湯の音、水の音、を聞き分けて、生まれてきたこの世界を体感すること、

そんな日々を、重ねてゆくことの、うれしさを知って、茶事をいつくしむ彼女の、

おだやかな生きざまが、すがすがしく、たしかにお茶って、そんな魅力。

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厳しいことや難しいことをいっさい言わないで、若い女の子たちを導く先生の、

鷹揚な奥ゆかしさが、茶道の世界観を体現しているかのようで、樹木希林さんが。

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シネプラザサントムーンにて12月


日日是好日 公式サイト


by habits-beignets | 2018-12-31 16:50 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 グッバイ ・ゴダール!

ジャン=リュック・ゴダール、ヌーベルバーグの旗手、ということであまりに有名、

そう、作品はいかにも洗練されて芸術的、というか、いささか妙ちきりんぽかったり、

では、恋人としての彼は、いったいどんな? それが、圧倒されてちょっと切なく。


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ゴダールの二度目の妻、アンヌ・ヴィアゼムスキーの、自伝的小説が原作とのこと、

すでにあまりに有名、ブレイクしてた映画監督ですもの、まだ19才の彼女が、

心酔しきってしまうのも無理なさそう、いちいち詩的っぽい受け答えもオシャレ、

偉大な作家モーリアックを祖父にもつ、哲学科の学生だった彼女には、きっと刺激的。

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でも、まあ、恋愛の悲しさ、始まりの頃は、すべてが美しく輝いて、祝福の気配でも、

慣れ親しんでゆくにしたがって、魅力が難点に、刺激が煩わしさに、教えが侮辱に、

少女から大人への急成長には、彼との関わりが、強く作用していたかもしれないのに、

皮肉だけれど、だからこそ、あれほど尊敬していた恋人が、次第に幼稚なへんくつに。

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知り合った頃からとは、お互いの立場が、くるくる入れ替わるってよくありそう、

無名だった少女が、あっという間にその魅力と知性を開花させ、自分の力で輝いて、

もはや彼なしでも、どこへでも立って歩いていけるように、なってしまえば、

ことあるごとに疑問や不満、嫉妬とか焦燥あるいは絶望とか、たとえ愛のせいでも。

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それにしても、いつもゴダールの隣に寄り添うアンヌの、愛らしさといったら!

彼に守られていることの気分のよさプンプン、で、彼女を持ち歩けるゴダールも、

いかにも誇らしそう、バービー人形さながらの恋人ですもの、ブラウスやセーター、

パリ流行ファッションの、キュートさ、ミニのプリーツからほっそり伸びた脚。

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部屋の調度品なども、どれもオシャレでカッコよく、形も色も美しいんですよね、

ポイントの赤が、ことあるごとに効いていて、ていうか、実はこれ、ゴダール映画に

捧げるための映画、というつくり、監督のミシェル・アザナヴィシウスが、いかに、

映画を愛しているか、監督ゴダールに敬意を抱いているか、が伝わってくる演出が。

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いかにもゴダールのミューズでありそうなセリフ、その視線、笑っちゃうシーンも、

気がきいて、ことあるごとの仲間での議論やら揉め事も、どこか滑稽で微笑ましく、

血気盛んに、革命運動に身を投じる姿も、単にインテリの、自己顕示にも見えて、

そして終盤、もはややけっぱちなのか、孤独に革命に突っ走る巨匠の、陳腐な姿が。

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どんなに地位や名誉のある、おじさまでも、正体は、甘ったれ駄々っ子と同じなのかも、

でも、そこがまた、とんがった知性や魅力に、反映されてしまったりなのかも。

つきあい続けるには、かなり忍耐が必要、それでも、輝けた時間は、尊いだろうけど。

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シネプラザサントムーンにて10月


グッバイ ・ゴダール 公式サイト



by habits-beignets | 2018-11-05 16:58 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 万引き家族

なんともいえないタイトルですよね、いかにもダーティーな世界っぽく。

けれど、そこには、やさしさが、よろこびが、微笑ましさが、確実にあって。


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いかにも無邪気な少年が、でも、その眼光は、異様に鋭く、口はぎゅっと固く結び、

たいせつな任務を、着実に遂行、おまじないめいたルーチンも、まるで神聖な祈り、

家族の命運を、一手に引き受けてでもいるかのような振る舞いは、もはやけなげで、

咎めることすらためらわれて、それ、犯罪だよ、と諭すのは、野暮なようにも。

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だって、怠けて遊んで、誰かを傷つけようとしているわけではないんですもの、

少年の家族は、互いにいたわり、寄り添い、大人はきちんと働いてだっている、

なのに、暮らしてゆくには足りないのだ、生きてゆくのに食べたり、装ったり、

ときには寛いで、健やかな身体と心を保つのに、わずかな賃金ではまかなえない。


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悪いことだっていうのは承知だけれど、でも、それなりに真剣に生きているのに、

たかが杓子定規の善悪論に、どれほどの価値があるっていうの?

盗みは悪いっていうけれど、たとえばその、店に並んでるものって、誰のもの?

自分の子供を、大切にできない親がいる世の中の、何を信じればいいっていうの?

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欲しいもの、というよりも、本当に必要なものだけを、きちんと見極めて、

ときには、人生をかける覚悟で、奪おうとする、彼らの生き方は、むしろ純粋で、

うわべだけを取りつくろった社会の、窪地のような一軒家は、雑然としていても、

とても豊か、すぐ隣にいつも誰かがくっついて、鬱陶しいけど、みな愛しくて。

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それでも、いつまでも家の中だけで生きてゆけるわけもなくて、少年も、少女も、

外の世界の誰かと、関わる機会はやっぱりどうしても、だってまだ、何も知らない、

いろんな人の、いろんな気持ちや、いろんな人生、想像したり、わかってみたくて、

ひろい世界には、もっと自分の味方がいるかも、正しい道が、ほかにあるのかも。

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大人になるまえの、避けて通れない、疑問ばかりの日々、痛くても、悲しくても、

本当のことに、立ち向かってゆきたい抑えられない欲求があって、我慢できなくて、

それまで信じていた世界を、いっそ壊してしまいたくなって、どこか、別の場所で、

自分ひとりの力で、やっていけるか、飛び出してしまいたくなるのかも。


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家族ってたぶん、そんな状況でも、離れても、どこかで強くつながっているものでは、

つながり方は、それぞれだろうけれど、ふと懐かしく、ときにそばに寄り添って、

たとえ世間では、許されなくても、互いの気持ちを思いやる習慣は、何よりも大事で、

法律とか、常識とか、固定観念では、とらえられない、生き物めいた集団なのでは。



貧しくても、余裕がなくても、女の子が可愛くみえるように、みなであれこれ、

微笑ましく、おしゃれ心って、やさしさと通じる、大切なもののような気配。


シネプラザサントムーンにて8月


万引き家族 公式サイト


by habits-beignets | 2018-08-12 19:35 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー