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『マッピー』用ボーダー

映画 ファントム・スレッド


始まってすぐ、胸ときめいてしまう、オートクチュールハウスの朝の光景、

ここで、これから、美しいドレスが、生まれようとしている、淡く白い部屋、

高名なデザイナーの、身支度すら、華麗で高貴な音楽にのって、芸術じみて。

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けれど、かけがえのない一着のドレスのために、つねに腕を振るう仕立て屋は、

暮らしすべてを仕事にささげ、だから、他人をよせつけない気難しい面が、

美しい女性のやさしい言葉より、静寂を欲する頑さは、たしかに、一流職人には、

必要な気質かもしれないけれど、彼に魅せられて近づきたい者には、激しい苦痛が。

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もしや、彼の望みはただ、理想の服を作り上げること、女性を見いだし選ぶのも、

それこそが唯一の基準で、理由で、目的なのでは、偶然出会ったウェイトレスを、

見初めたのも、はにかんだ視線の交差や、愛らしいやりとりゆえとかではなく、

制服姿の彼女のシルエット、立ち姿に、新しい服のデザインを着想したからでは。

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おそらく最初の出会いのときから、デザイナーに心を奪われたウェイトレスが、

期待していた二人の時間とは、すこしずれてしまった最初のデートの出来事が、

今後の二人の関係のむずかしさを、如実にあらわしているようで、純粋な愛って

何なの? 彼女が求めるものと、彼が求めるものの、行き違いを、どうすれば?

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誰かを熱烈に愛したとき、やっぱり自分も愛されたくて、必要とされたくて、

でも、その必要とされたいものって、あくまで自分が望んで与えられるもので、

捧げることに喜びを感じられるものでしかなかったりして、不幸にも、それを

拒絶されてしまえば、耐えがたい悲しみとか苦しみ、無力感しかなかったり。

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自分の愛が迷惑がられている、相手が不快に感じている、と悟ったときの絶望感、

それでも、自分の存在は必要とされていることの矛盾に、やりきれなさは増して、

彼を、自分の愛の世界に引き入れたい、厳格で孤独な彼の世界から抜け出させて、

うわべを飾るドレスの世界から、生身の体の世界に、引きずりこみたくなったり。

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始終ドレスのことに心を傾けて、そんな彼女のひとりよがりの愛情など、鬱陶しいだけ、

心を乱されるのは願い下げだと本心から思っても、いざ、失いそうな危機を接すると、

力ずくでもたぐり寄せたくなってしまう、気持ちや考えどおりに、動けないせつなさ、

自分のスタイルを、静かに守りたい欲求と、雑音をたてられても、すがりたい欲求。

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互いに、激しい反発を抱えながらも、狂おしく、やはり求め合ってしまう二人が、

やがて、見いだそうとする決着点は、悲しかったり恐ろしかったり愚かしかったり、

演じるダニエル・デイ=ルイスの、視線、表情、の、ものすごさ、と相まって、

ジョニー・グリーンウッドの音楽に彩られ、究極の、愛のかたちの、迫力が。

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物語の背景の、クチュールハウスの描写がすてきで、見惚れてしまいます。

レース生地を手仕事で丁寧に縫ってゆく、たくさんのお針子さん。

ファントム・スレッドとは、「東ロンドンのお針子たちが、王族や貴族に長時間衣装を縫い続け、仕事場の外でも見えない糸を縫い続けたという逸話からきている。(映画チラシより)」とのことです。


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ファントム・スレッド 公式サイト


シネプラザサントムーンにて7月


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by habits-beignets | 2018-07-24 16:02 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 モリのいる場所


身近に、 すぐ足もとに存在しているものたちに、いちいち気づいて、じっと見て、

語りかけ、寄りそい、何度も、何時間も、何十年もくり返すことの、神々しさ。



ぱっと見、稚拙な作風だけれど、すでに著名な画家となった94歳のじいさんが、

のんびり朝食を終えてから、なんだか妙ちきりんな騒ぎを経ての、静かな夜まで、

とある一日をとおしての、いかに変わり者で、いかにまわりに愛されていたかが、

描かれるのですが、これが、高名な芸術家らしさのない、風体のおかしみが。

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その、目に映るもの気にかかるものの、限りなさったら、とかげ、かまきり、蝶、

蟻、鳥、魚、樹々、葉っぱ、石ころ、水面、それらを、なにひとつ漏らすまい、

どれも等しく、謎にみちて、このうえなく大切で、親密なものたちで、だから、

すべてと細やかにかかわろうとしているうちに、はるか遠くまで道に迷って。

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なんて、それほど広くはない自宅の庭が、もはや、世界の果てまでの冒険のよう、

あたかも、樹々や草がのびのび生い茂ったジャングルめいて、なんと地底まで。

長いあいだ、一歩も外にでていないという伝説も、無理なく信じられるけれど、

高いところから見下ろせば、たとえ小さな庭だとしても、広大な宇宙につながって。

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「好きなものしか書きませんから」の夫人の言葉の、徹底ぶりは、笑いを誘って、

まともに暮らしている者たちは、実際は、戸惑ったり、困ったり、呆気にとられて、

けれど、有名人相手に、あるいは老人相手に、文句もいえず、従ってみるうち、

その心持ちの、純粋さ、素朴さに、引き込まれて、芸術ってきっとそんな潤いが。

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単純な輪郭線と色彩の、虫や、鳥や、獣は、子供でも描けそうに見えるけれど、

あきれるほどの時間を、ただ見つめることだけに費やしたからこその、

迷いのない、大らかでのびのびした、筆致であるのだなあ、と想像できて、

上手とか、下手とか、超越した、清々しさみたいなものが、魅力であるのかも。

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冴えなくて、だらしなくて、頼りない、風貌だけれど、何ものにもこだわらない、

世間一般の価値観など、どこ吹く風の暮らしぶりは、みんな実は、羨ましかったり、

たいせつな庭で生きるものたちが、マンション建設で、どうなることやらと、

夫人はやきもきしているようだけれど、画家本人は、どこか達観の雰囲気が。

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じつは、個人的なことですが、熊谷守一はずっと以前からとても好きで、

まだ、開館まもない豊島区の美術館を訪れて、その愛らしさに感激したことが。

手元に、昭和53年発行の、「アサヒグラフ別冊 美術特集 熊谷守一」が、

あるのだけれど、開いてみたら、映画の場面がけっこう忠実で驚きました。

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若いときの作品は、ふつうにわかりやすく上手なかんじだったんですね。

純粋に、まっすぐ、描きつづけると、絵の構図は単純に、のびのびするのかも。


シネプラザサントムーンにて7月


モリのいる場所 公式サイト




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by habits-beignets | 2018-07-04 21:13 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー