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映画 マリリン7日間の恋

世界中を魅了するスターでも、いえたぶん、だからこそ、自分の輪郭が
あやふやになって、いいようのない不安におそわれ、誰かに、すがりたくなる。
そんなとき、身近にいてくれる誰かのぬくもりが、どうしても欲しくなる。

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大スター、マリリン・モンローが、イギリスの名優ローレンス・オリヴィエに
招かれるかたちで、彼が監督もつとめる主演作で共演したときの、舞台裏が
ひとりの青年の視点から、描かれるのだけれど、非常にナーバスで、それゆえ
予定や約束を守ることができず、見方によっては、ただの傲慢でわがままな女。

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ところが、ひとたび、眠っていたかのような演技力が目覚めると、誰もが
あっけにとられ、目が釘づけ、その一瞬のために、けっきょく許されながら
撮影はすすめられてゆくのだけれど、彼女の不安定さはまわりを怖れさせ、
それで、ひょんなことから雑用係の若者が彼女に接近、そして親密に。

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彼女にしてみれば異国、若者にしてみればまだ見知らぬ世界、そこで出会い、
女優のイメージとはかけ離れた、孤独なかおに触れた若者が、戸惑いながら
精一杯のやさしさで、彼女をささえようとする姿が、いささか滑稽ながら、
せつなかったり、愚かしかったり、しょせん、かなわぬ気持ちなのに。

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ほんのひととき、と、きっと誰もがわかっているのに、それでも、永遠の
ものとしてとどめたい、それが、恋、というものなのかもしれません。
ずっとこのまま続くことはなくても、いまこの瞬間の触れ合いが嘘という
わけでは、けっしてなくて、信じる一瞬のなかに、永遠が光のように。

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原題は「MY WEEK WITH MARILYN」、たしかに、あるいは恋というより、
「マリリンと僕の7日間」というような、ほのかな触れ合いのかんじが
あるような。まわりから隔絶された、ふたりきりの時間は、でもきっと
まぶしかったでしょうね、実話ということなのだけれど、きらめく思い出。

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ミシェル・ウィリアムズは、似ていないのに、映画を見ていると、マリリンに
見えてくるから、不思議。冒頭の、きらきら歌って踊る場面から、楽しくて、
あー観てよかったと、すぐに満足、お話には、オリヴィエとのロマンスが有名な
ヴィヴィアン・リーもでてきたりして、映画好きには、なんだかうれしい。

シネプラザサントムーンにて、5月

マリリン7日間の恋 公式サイト

# by habits-beignets | 2012-05-25 20:59 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 おとなのけんか

子供のけんかに親がでて、というお話なんですけど、この顔ぶれ、
どう考えても、普通におさまりそうではない、ということで観ることに。

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となり近所や、親戚とか、おとなにはいろいろ、便宜的なおつきあいが
あって、そこではともかく、和を乱さないこと、自分の主張はさておき
お互いに歩み寄る姿勢が求められ、ていうか、理性的なおとなを演じるのが
暗黙の了解というかんじで、穏やかに、冷静に、おくゆかしく。

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ですけれど、こと最愛の息子の、やったやられた、が争点となると、
最初は相手に譲ろうと、がんばって抑えていた言い分も、どうしたって
沸々わいて、ちくちく逆らってゆくうちに、あっという間に臨界点、
超えてしまえば、反動もあってか、あらゆることが引き金に、大論争。

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そもそも何が問題で、どうしてこの場に集まったのか、ときおり振り返りも
するのだけれど、もはや止められない勢いのほうが、大切とばかりに、
四つ巴のマシンガントークが、続くのだけれど、これがけっこう気持ちよい
のは、こちらが野次馬だからでしょうか、でも、真剣で正直で潔いのでは?

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全力で相手にぶつかる、その高揚感は、不愉快さから出たものであっても、
無意識に今まで堪えていた、何かに向かって突っ走りたい衝動に身をまかせる
爽快感が、あったのではないでしょうか、だって、あんなに泣き叫んでも、
瞳はいきいきと輝いて、ときには弾けるように笑ったりもするのだし。

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冒頭の、笑顔をとりつくろいながらも、相手を揶揄するような視線に比べたら、
あけっぴろげの応酬のほうが、遥かに誠実で心からのおつきあいに見えました。
怒りって、相手を理解しようとする原動力になることもあるのかも知れません。
ところどころ、同意したり、反発したり、自分に正直に対峙して。

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大ヒット舞台劇の映画化。芸達者な四人で、舞台の面白さがきっとそのまま。
よくできた密室劇で、流れる時間と物語の時間が、まったく同じ、臨場感。
皆、いくら観ていても飽きないぐらいだったけれど、クリストフ・ヴァルツの、
『イングロリアス・バスターズ』を、思い出させる、表情の緩急が、すてき。

シネプラザサントムーンにて、5月

おとなのけんか 公式サイト

# by habits-beignets | 2012-05-11 22:18 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 アーティスト

ムダ削減、仕分けがトレンドの世の中ですわよ、奥サマ。
色とか、言葉とか、ほんとうに必要なのか、考えたことおありですか?
なくなったら、寂しいって、つまらないに決まってるって、思ってません?
大丈夫! つまらなくないから! 大切なことに気づくことができるから!
と、おもわず力説したくなる、快作登場、オスカーも、太鼓判ポン! です。

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お話は、映画がサイレントから、トーキーへ移る時代の、その変化に抵抗する
かつてのスターと、その変化の波にうまく乗って活躍する女優の、触れ合い。
恋であったり、葛藤であったり、お互いを思う気持ちは、つねにあるのに、
意思の疎通が、うまくできない、もどかしさ、それが、モノクロサイレントの
世界によって、いっそう切なく、いじらしく、ひろがりを持って、描かれます。

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情熱とか、恋い慕う気持ちとか、たぶん言葉では、ぜんぜん伝えられない。
ほんとうのことを知りたいとおもったら、じっと目を見たり仕草を観察したり、
それでもまだ、知ることができなくて、もどかしさに気が狂いそうになって、
誰にも知られずこっそり、スクリーンのなかの相手を見つめたり、ひそかに
助ける方法を探したり、あれやこれやの行動がすべて、愛。言葉はなくても。

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もしかしたら、言葉や色があふれてしまうことで、たいせつなこと、
ほんのちょっとの喜びや陰りを、見過ごしてしまっているのかもしれません。
言葉や色は、もちろん多くのことを伝えることができるだろうけれど、
同時に、嘘や、ごまかしのためにも、利用されやすいから。
わずかなヒントから、その奥に潜むものを見つける想像力の、素晴らしさ。

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台詞がないことで、集中して映像を観ることができて、あらたな発見に、
よろこびを感じることが、できるんではないかとおもいます。まったく音が
ないかというと、そういうわけではなく、すてきな音楽はひっきりなし
だし、ときおり、いたずらみたいに、音が鳴るし、色のない分、光がつくる
陰影があざやかで、そして言葉がない分、犬の訴えも、ひとの訴えと同じに。

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技術の進歩で、音や色の再生が可能になったことで、浮かれて、それらを
使いまくって、今度は立体的に、と、新しい技術に頼っての表現方法ばかり
に目が向けられているようだけれど、そうではなく、すでにある技術でも、
工夫次第、とらえ方次第で、いくらでもあらたな発見ができる作品を生む
ことができるのだと勇気づけられる、素敵な、映画なんです。ご覧あれ!


シネプラザサントムーンにて、4月

アーティスト 公式サイト

# by habits-beignets | 2012-04-15 03:11 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 僕達急行 A列車で行こう

はい、春になりましたよ! 寒い冬もようやく終わってくれますよ!
からだが軽くなって、どこかに行きたくなりますね。
というわけで、かわいい男の子たちと、電車でどこかに行ったつもりに。

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鉄道好きの男の子たちが、偶然の再会を果たして、という物語の始まり
なのだけれど、一言で鉄道好き、といっても、さまざまな楽しみ方があって、
お互いのそれを尊重して、という一歩ひいた感じのつきあいかたが、
微笑ましく、けれど少しせつなく、厳しいオトナの覚悟もちょっぴり。

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小さな鉄工場社長の息子のコダマくんが、電車のなかのあらゆる場所を、
いとおしそうに触れるところが、ちょっと漫画チックではあるのだけれど、
技術者のはしくれとしては、当然のところであるのかも、というリアリティ。
目の輝きが、こちらの気持ちにまで、幸福感を届けてくれます。

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サラリーマンのコマチくんは、九州転勤になっても、長旅にでも出るような
楽しげで軽やかなリアクションで、赴任先でも、電車が見られればなあ、
と、マイペースマイライフを、少しもくずさない。自分の価値観があるって、
どこに行っても、軸がぶれずに、強くいられるってことなのかもしれません。

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恋とか、仕事とか、それなりの事件や挫折、紆余曲折が、ガタンゴトン、
ゆらり揺られながらの、ゆる〜いスピードで描かれて、とりあえずは
ハッピーぽくはあるのだけれど、これでよかったという決着に行きつくまで
には至らないで、冴えないままの暮らしぶり。でも、この安定感はなに?

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何があっても、大丈夫、という、妙な自信というか開き直りというか、
それは、何かを信じる気持ちが揺るがないから、なんでしょうか。
汚れなく、無私の気持ちで、愛することのできる対象物がある以上は、
損得抜きのつきあいを、他人と育むことができるということの、自信?

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女子との恋愛は、ダメダメで、けれど、ショックを受けたところで、
それで自分を嫌悪するほどの、深刻さはまったくなく、自分の世界を
もってるからこその、強みなんでしょうけど、も少し懲りたら?

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海、川、山、畑、美しい色合いの、いろんな場所を、電車はまっすぐ、
レールを敷かれたとおりに、律儀に走る、生真面目な男の子みたいに。
唐突なギャグがもりこまれたりの、サービス精神もある映画なんですが、
御茶目な男の子の、置きみやげ、みたいな作品であるのかもです。

ところで、じつは私の部屋からも、東海道線がバッチリ! 新幹線も
富士山背景によく見えます。かわいい男の子たち、招んであげたい……


シネプラザサントムーンにて、3月

僕達急行 A列車で行こう 公式サイト

# by habits-beignets | 2012-04-02 00:31 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

たいせつなひとを失う、という経験は、誰にでもかならず訪れるもの
なのでしょうけれど、それがあまりに突然、あまりに理不尽なかたち
だった場合のやりきれなさって、どうなんでしょう。9・11のお話。

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わが目を疑うような大惨事の光景は、恐ろしく衝撃的なものだったけれど、
それによって、生命を絶たれた数多のひとたちのそれぞれの人生にまで
踏み込んで想像することは、ありませんでした。たぶん、恐かったから。
ひとつの社会的な事件として、遠くから眺めることで、済ませたかったような。

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けれど、否応もなく、普段の生活が破壊されたひとたちは、実際に大勢
いたわけで、それでたとえば、ありえないほど慕っていた父親をあの事件で
奪われた少年がいたら、こんなふうにもがくのでは、という物語。
遺体にさえ、別れをつげることもできずに残された、苦しみとの葛藤。

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少年期だからこその、繊細さというか残酷さというか、思考力、想像力は
かなり長けているのに、自分を律したり宥めたりすることは、できないで、
ただやみくもに、父親の未知の部分に触れようと、奔走するさまは、
それで何かが、解決するとも思えないのに、馬鹿馬鹿しいとはいえない。

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愛するということは、求めるということで、いつまでも諦めずに
探し続けることだということが、少年の無謀ともいえる冒険が、切々と
訴えかけてくるかのよう。父親の、ほんのひとかけらだけでもいいから、
見つけたい、という、からだの奥底から湧いてとめられない欲求。

そんな彼がめぐりあったひとたちが、みな彼に同情して、あたたかな
コミュニケーションがあって、という筋書きは、でもちょっと出来過ぎで
ハリウッド調でもあるのだろうけれど、明るくできるものならば
可能なかぎり明るく、ということでもあったのかもしれません。

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中盤から登場する「間借り人」の、謎めいた感じは、いくらか消化不良の感が
あるけれど、自らの想像力ではあきたらない方には、原作本がお勧めかも。
くり返される大惨事の、くり返される苦悩が、くわしく語られて、それでなお、
希望をあきらめないで、生きてゆく、生きることを覚悟する勇気もつたわって。


シネプラザサントムーンにて、2月

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 公式サイト

# by habits-beignets | 2012-03-12 00:12 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー