2012年 01月 23日
今年もたくさん、映画とかいろんなこと、楽しみたい。
とか言いながら、じつは年末年始、セールにつられて、きれいな
いろんなものの、ウインドウショッピングに、夢中だったり、
近頃は、連日の厳しい寒さを忘れたくて、春物にうっとり、だったり。
そういえば、映画を観る楽しみのうちには、美しい街並や、
洒落たインテリア、登場人物の装いなどに思い切り見とれる、
ていうのも入ってます、はい、私の場合は少なくとも。
というわけで、この映画のこんなファッションがよかったなあ、
ていうのを、ちょっと振り返ってみたくなったりして。
で、思いついたのが、『めぐりあう時間たち』。
三つの異なる時代と場所でのストーリーが、同時並行のかたちで
描かれる、とても奥行きのある、たぶん、中年女性にもっとも
訴えかけてくる、せつなく、それでいて希望の光が見える作品。
個人的にイチオシの映画なんですけれど、これに出てくる女性たちの、
装いが、それぞれみんな、雰囲気があって、強く印象に残ってしまう。
冒頭から、水中で脱げてしまう、クラシカルで気品漂う靴。
まるでこれから始まる物語の、危うさと美しさを象徴するかのよう。
オスカーを受賞したニコール・キッドマンの演技はもちろん物凄いけれど、
彼女の足から脱げた靴だって、負けない演技をしていたかのような。
それで、作中ずっと、ニコールの足もとから目が離せなくなりました。
素敵なんですよ! 小花模様のゆったりしたワンピースに、きっちり
甲をくるんだ、適度にかかとの高い、トラッドテイストな靴が!
イギリスの片田舎の、のどかな風景のなかで、すっくと立つ足もとが!
素敵な靴ってほれぼれしてしまう……で、ジュリアン・ムーアの
エスパドリーユにもまた、目を引かれて。ロスアンジェルス郊外の
ごく普通の主婦の、カジュアルなお出かけにマッチしたエスパドリーユ
なんだけれど、彼女の揺らぎをあらわしているかのような、頼りなさ。
足首を縛っている紐が、まるで足かせのよう、というのは考え過ぎ
かもしれないけれど、高級そうなホテルを闊歩するには、いささか
心もとない感じで、まさにジュリアンの、くずおれそうな気持ちそのまま。
幸福そうなんですけれどね一見、ジュリアンは、家庭でもきちんと、
大きな花柄のカシュクールワンピースや、胸のあいたパーティードレス
に身を包んで、夫や子供に微笑みかけて、理想の主婦めいているのだけれど、
その美しい装いが、だんだん、彼女の精一杯の虚勢にも見えてきたりして。
現代のニューヨークでキャリアウーマンやってるメリル・ストリープも、
虚勢が痛々しく映ります。女性らしさをあえて避けるような、さっぱりした
出で立ちが、寒々しい都会の風景に似合っているのだけれど、それが一転、
台所で料理をするときの少女のようなエプロン姿、パーティーに出席しようと
ドレスアップしたときの、大人の女のエレガントさに、目を奪われて。
その場その場にふさわしい、それぞれのファッションが、物語の起伏を
うまく表現していて、飽きさせません。そのひとの背景というか心理状態とも
リンクしているようで、興味深い。身につけるものって、やっぱり、いまの
自分の温度というか、気分が反映されてしまいますものね。
で、もっか私は、緑に囲まれた片田舎で創作に没頭しようと苦悶する
ニコールに憧れる気分があったりして、彼女がまとっていたきれいな
プリントのワンピースに心ひかれてる状態です。物語を、夢を見たくて、
お洋服って、ついつい欲しくなってしまうものなのね……。
お洋服や靴だけでなく、作品自体すべて、素晴らしかったこの映画。
同じ監督の新作『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
が、とっても楽しみ! 原作は『僕の大事なコレクション』の作者だし!
興味をもたれた方はぜひDVDなどで。
めぐりあう時間たち 公式サイト
僕の大事なコレクション 公式サイト
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 公式サイト
# by habits-beignets | 2012-01-23 22:33 | シネマとファッションのこと | Comments(0)