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映画 大鹿村騒動記

予告編で、あっ面白そう、て。邦画あんまり見ないんですけど。
カラッと、あっけらかんの空気の感じに、惹かれました。

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300年の歴史がある村歌舞伎ってことで、ずいぶん活気があって
盛り上がってるようなんですけど、やはり若者の姿はあまりなく、
過疎ってる雰囲気は否めない。でも、だから何だ、の溌剌ぶりです。
いや、それに、盛り上がってるのは歌舞伎ばかりじゃなくて。

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18年前に駆け落ちして出て行ってしまった親友と愛妻が、
とつぜん、戻ってくる、というところから物語は始まって。
しかもその愛妻、認知症とやらで、記憶がぼろぼろ。
夫を捨てたことなどすっかり忘れての、かいがいしさまで身にまとって。

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会話の内容から推して、おそらくみんな、60歳ぐらいのはずなのだけど、
言ってることや、やってることが、少年少女そのままで、笑えてしまう。
原田芳雄と岸部一徳の喧嘩なんか、きかんぼうの男の子のまま。
善ちゃん、治ちゃん、て呼び合ってるから、なおさらなんだろうけれど。

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リニア新幹線だの、台風だの、歌舞伎の練習だの、もめたり騒いだりの
繰り返しのなかでも、たがいを思いやる気持ちは、当然のように揺るがない。
一瞬、正気にもどって夫に顔向けできないという妻も、歌舞伎の空気に
なじんでゆくうち、素直な姿勢を取り戻したみたいで、一件落着と思いきや。

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山奥の自然に根づく、大らかさ、それが人々の明るさに作用してるのかも。
おじさんおばさんたちの右往左往は、どうやら落ち着く気配がないけれど、
それだってきっと、明るく生きている証そのものにちがいなく。
夢中で演じた村歌舞伎の、拍手喝采が起こったような、見事な舞台。

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ワンピース、スカート姿の、大楠道代さんの、少女っぽさも素敵だけれど、
原田芳雄さんの、ラストの画面が、なんとも。

シネプラザサントムーンにて、7月

大鹿村騒動記 公式サイト

# by habits-beignets | 2011-07-24 22:06 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ウッドストックがやってくる!

暑いですね! 暑いとなにか、事件がほしくなってしまいます。
ひと夏の思い出っていうんでしょうか。ぎらぎらの太陽にあぶられると、つい。
ニューヨーク州ホワイトレイクで、鬱々と田舎の生活を送っていたひとびとも、
きっとそうだったに違いない、というのは勝手な思い込みかもしれないけれど。

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1969年、実際に行われた、野外コンサートのお話なのですが。
つぶれそうなモーテルを、両親のためになんとかしようと、町おこしの企画に
苦心している青年エリオットが、超有名アーティストのコンサートを
誘致しようと奮闘することになるのだけれど、保守的な住民から罵られたり、
金もうけに走る仲間に悩まされたり、間に合いそうもない準備に奔走したり。

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さびれた町が活性化されるのは、たしかにありがたいことだけれど、
いきなりのカルチャーショック、まるでイナゴの群れに襲われるように、
ものすごい数の群衆がやってくることは、どちらかといえば恐ろしくもあって、
それまでの平穏な日々に、さまざまなひずみが生じてきて。

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それでも、どんなに騒がしい連中でも、見知らぬひとたちとの触れ合いは、
楽しく、刺激的で、温かで、生きる気力を呼び起こしてくれて。
エリオットのお父さんの目の輝きが、如実にそれをあらわしていました。
物語の初めの方では、何も話さない、人生あきらめきった老人だったのに。
よそ者の客人たちと、和気あいあいと話し、楽しそうに仕事をこなし。

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悩みの種のお母さんの問題点は、万事解決というわけにはいかなかったけれど、
でも、親子だって、考え方や感じ方はいろいろ、それを思いやりながら、
離れることになっても、きっとまた帰ってくるという、信頼感がうまれた気配。
自分は頼られてるんだから、両親のために尽くさないと、という気負いから、
解放されたようなのも、びっくりするような人びとの波にもまれたからかも。

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コンサート、が話の中心なのだけれど、コンサートの場面はあまりなく。
それに関わる人々の、個人的なお話の羅列だったり、準備の大変さ、
開催中の混乱だったり、目眩しそうな後片付けの様子だったり。
みんな、がんばれ。

ジョイランドシネマ沼津にて、7月

ウッドストックがやってくる! 公式サイト

# by habits-beignets | 2011-07-10 19:56 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ブラック・スワン

情熱と狂気のあわいをさまよう、映像世界に引き込まれるうち、
気持ちがおののいて、逃げ出したくなってしまうような。

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頂点にたつ、ということは、どの世界においても、ひとつの目標
なんでしょうけれど、有名なバレエのプリマの座を射止め、さらに、
それを見事に演じきる、ということのプレッシャーは、想像を絶する
凄まじさなのだということが、主人公ニナの表情から伝わってきます。

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黒鳥に備わってしかるべき、奔放さと妖婉さは、演技でまとうことが
できるものなどではなく、本来の自分が秘めている激しさを開放してこそ
表現できるものなのだと、監督から責められて苦悩するうち、黒鳥そのもの
のような、ライバルの登場もあいまって、精神的に追いつめられるのですが。

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窮鼠猫を噛む、というのはこのことなのか、これまでの抑制が強かったほど
抱えていた闇が深かったのでは、と思われるような、ほとばしる欲情に
身を委ね始めるニナの変貌ぶりは、いささか恐ろしく、それはたとえば、
鏡に映る自分が、無意識のうちに勝手にうごめくぐらいの、不気味さで。

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けれど、もしかしたら、これは特別な誰かの物語なのではなく、私たちにも
いつ起こるかもしれないことなのでは、という気が、夢の世界にいるような
不条理劇を見せられているうちに、じわじわ感じられてきました。
ふとした拍子に現われる、いつもと違う無意識下の自分に、ハッとする瞬間。

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官能の世界に身をおくことは、痛みをともなうことなのでしょうか。
まさに自分の殻を破るそのままに、血がにじんで流れる描写は、見ている
こちらも、神経がちぢみあがってしまうほどで、監督がほのめかした
「自分の道を阻む自分」との戦いの容赦ない攻撃に、少し震え上がりました。

シネプラザサントムーンにて、5月

ブラック・スワン 公式サイト

# by habits-beignets | 2011-05-19 22:54 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 シチリア!シチリア!

クライマックスで、思わず拍手をしてしまいました、音をたてないように。
素晴らしいんですよ! 現実とファンタジーの融合というか、世界観が。

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物語は50年におよぶ、三世代にわたっての、貧しかったり、悲しかったり、
ときめいたり、希望をもったり、楽しかったり、いらだったり、といった、
誰の人生にもおこる、さまざまな出来事といえるわけなんですけれど。

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冒頭、コマ遊びに興じている男の子が、煙草を買ってこいと命じられて、
遊びのじゃまをされるところから、物語は始まるのだけれど、砂ぼこり舞う
なかを駆けてくる男の子の躍動感、流れるエンニオ・モリコーネさまの音楽、
まだ何も出来事は起きていないのに、わくわくしてしまって。

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そして、次の場面、でてくるのは、さっきの男の子とはべつの男の子。
おなじように、ものすごい勢いで走っていて、どうやら、この男の子が、
物語の中心人物のような気配。ではさっきの、コマ遊びの男の子は、誰?
それが、監督の思うつぼ。映画を観ているうちに、時空を超えてしまう。

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ひとつひとつのエピソードをつなぐ説明は、あまり丁寧にされません。
けっこう強引な時間の流れ方があったりして、あっというまに何十年か
過ぎてしまうのだけれど、それが、納得できるしゃれた映像のつなぎ方で。

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ファシズムに支配された戦時、終戦後の政治的な対立、貧しい時代から
豊かな時代、あるいは抑圧された時代から自由な時代への変遷。
それが、ある視点から見れば、瞬時に起こってしまった変化なのだと、
映画は、圧倒的な説得力をもって、観ている者に伝えてきました。

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幼い者と老いた者、生きてゆく者と死にゆく者、あるいは、過去と未来、
その境界が、いかに混沌として、線引きが難しく、というか、むしろ
そこには、そもそも、違いなどなく、本来いっしょくたに存在しうべきもの
なのでは、ということが、じんわり感じられてきます。

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たとえば、近しい人が亡くなって、そのひとの思い出にひたるとき、
この映画の時間のとらえ方の感じが、わかるような気がします。
ラストの男の子の笑顔、彼を笑顔にさせたもの、まったく本当に、素敵!

ジョイランドシネマ沼津にて、4月

シチリア!シチリア! 公式サイト

# by habits-beignets | 2011-04-23 01:41 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー

映画 ハーブ&ドロシー

芸術作品なんてものは、生活に余裕のある一部のひとたちが、道楽として
集めたり論じたりするものというわけでは、決してない!ということを、
このご夫婦は、身をもって示してくださいました。

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小さなアパートに暮らす公務員ご夫婦が、なんでまた高名な芸術家の
作品群を、その部屋いっぱいにするほど集められたのか、というお話
なんですが、要は単純な話、もう、熱狂するほど好きだから、なんですね。
好きで好きで我慢できなくて、手に入れてしまう、なんとしてでも。

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気に入った作品を見つめる、だんなさまハーブの目つきといったら、もう!
まるで獲物をとらえるときのよう、と、誰もが口をそろえて言うのに、納得。
対照的な、おくさまドロシーの、よくよく吟味するような冷静な視線が、
だんなさまとは、また違った、静かな愛情と熱気を伝えてくれます。

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彼らふたりのちいさな体が、精力的に動き回るのにつれて、膨大な数の
アートがかき集められてゆくさまを見ていると、狂おしいほどの愛情と
いうものがもつ、エネルギーの物凄さが、説得力をもって、迫ってきます。
それは、作品を生み出すアーティストの情熱に、引けを取らないのでは?

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芸術って、特別なものではなくて、日々をたいせつに生きてゆく誰もの魂を
潤したり揺さぶったりする、ただそれだけのための不思議なものたちで、
それによって力づけられた者たちが、たがいに、いたわりながら交流して、
それがまた、大きな力を生み出してゆく、情熱の渦の核のようなものなのかも。

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好き、という気持ちに素直にしたがって、猪突猛進をつづけることの、
素晴らしさ、というか、それが何かを育て、豊かな世界を作り上げる力に
なるということを、現実の映像として観ることができて、励まされました。
何かが好き、何かに感動する、という気持ちを大事にして、耳を傾けること!

ジョイランドシネマ沼津にて、4月

ハーブ&ドロシー 公式サイト

# by habits-beignets | 2011-04-18 01:26 | シネマのこと | Comments(0)

『マッピー』用ボーダー